図解
※記事などの内容は2019年2月9日掲載時のものです
昨年6月に成立した「働き方改革」関連法は、1947年の労働基準法制定以来、約70年ぶりの労働法制の転換点だ。4月の施行まで残り2カ月を切る中、規制強化の対象となる大企業が対応を迫られている。残業時間の抑制では規制を先取りした取り組みが加速。一方、関連法が求める新たな過労死防止策を導入する動きは鈍く、労働環境の改善はまだ手探り状態だ。
残業時間の上限は「月100時間未満」などと定めた関連法の規定よりも厳しい制限を設ける企業が相次ぐ。東京海上日動火災保険は「月40時間」を掲げる。残業を減らす工夫も広がっており、味の素は職場へ戻らずに出先付近で業務を済ませられるよう「サテライトオフィス」を設置した。
有給休暇については、年10日以上付与される従業員に5日以上取得させることが4月から義務化される。取得を促す取り組みは加速しており、野村証券や江崎グリコは1日単位から時間単位で取得できるよう仕組みを改めた。過労死問題に揺れた電通や野村不動産も休暇制度を充実させた。
正社員と非正規の待遇格差を禁じた「同一労働同一賃金」では、人手不足が深刻化している物流業界が先行。日本通運は4月から、フルタイムで働く非正規の運転手や営業職の賃金を正社員並みに引き上げ、日本郵政も正社員だけに支給していた手当てを非正規にも支給する。
ただ、同一労働同一賃金の導入は来春とあって、他の業界の動きはまばら。「業務内容が同じでも、正社員と非正規では目に見えない責任の重さや役割が違う」(トヨタ自動車)と、戸惑う声も漏れる。
終業から翌日の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」は、導入が義務ではなく「努力義務」にとどまったことが影響し、取り入れる企業は少数派。住友生命保険は4月に、インターバルを現在の9時間から11時間へ広げるが、厚生労働省の調査によると、2018年1月時点の導入企業はわずか1.8%。ある大手金融機関は「検討を始めたが4月には間に合わない」としている。
関連法の国会審議で与野党が激しく対立した「高度プロフェッショナル制度」は導入の機運が乏しい。年収1075万円以上で、本人が書面で同意したアナリストやコンサルタントなど5業務が対象だが、こうした専門職には既に裁量労働制など成果主義型の仕組みが採用されているケースが多く、「導入の予定はない」(大手銀行)とする企業が大勢を占める。
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