人生100年時代へ 腸活のカギとなる食物繊維の「新常識」を学ぶ

オンラインセミナー「ウェルビーイングのための腸活2024」から(上)

2025.04.02

 3月末まで配信していたオンラインセミナー「ウェルビーイングのための腸活2024~食物繊維の新常識~」(朝日新聞Reライフプロジェクト主催)では、腸内細菌研究が専門の京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授(生体免疫栄養学)が、腸活のキーワードとして改めて注目されている食物繊維の最新研究や知識をわかりやすく解説し、参加者の質問に答えました。内容の一部を3回に分けてお伝えします。

(文・橋本聡)

特集「腸から始める腸寿生活」

腸活ウェビナー扉画像

 今日は「食物繊維の新常識」と題して四つのテーマでお話しします。一つ目は日本の現状です。二つ目は腸が虚弱化した状態「ガットフレイル」について。三つ目は、食物繊維がどのような影響を人に及ぼすのか。四つ目は、食物繊維がどのようなメカニズムで私たちの体に良い働きをしているのかについてお話しします。

日本人は平均寿命と健康寿命の間に10年前後の差 

 日本の平均寿命は戦後、直線的に伸びてきました。厚生労働省によると、2023年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です。女性は世界1位で、男性は世界5位です。今では女性の2人に1人が90歳を迎えます。男性は残念ながら4人に1人しか90歳を迎えませんが、私たちは「人生90年」「人生100年」の時代に向かっています。

 そうしたなかで世界では、体の健康だけでなく、社会的にも幸せであるという状態を「ウェルビーイング」という言葉で表現するようになりました。2024年の「世界幸福度ランキング」で日本は世界51位です。平均寿命と健康寿命の間に、男性では9年弱、女性では約12年のギャップがあり、予防医療や対策がまだまだ遅れているのかもしれないと私は考えています。

 では、どういった病気で日本人は命を落としているのか。1位はがんです。2位は心疾患。3位は老衰です。がんの中で最も多いのは肺がんです。以下、大腸がん、胃がん、すい臓がん、肝臓がんと続き、消化器のがんが非常に多くなっています。私は消化器内科を中心に診療していますが、皆さんに自分のがんのリスクがどの程度あるのか、必要な検診は何なのかをよく勉強して考えていただきたいと思っています。

 胃がんの99%はピロリ菌という細菌によるものです。それ以外にもさまざまな促進因子があり、その一つが塩分です。がん予防に減塩は極めて重要です。世界保健機関(WHO)は1日あたりの食塩摂取量を5gに設定していますが、日本人は10gを摂取しています。その原因は、調味料の使い過ぎであることがわかってきました。

 また、砂糖も重要です。砂糖入り飲料は大腸がんリスクを増大させることもわかっています。「甘くないと食べられない・飲めない」という方には、「ラカント」という天然植物性甘味料を紹介します。これは100%植物由来で、カロリーゼロ。コーヒーなどが甘くないとダメという人には選択肢の一つになるかと思います。さらに、ソーセージなどの加工肉は、国際がん研究機関(IARC)が「人に対して、おそらく発がん性がある」と分類しています。

腸活ウェビナーA

内藤裕二さんの講演資料から=本人提供

 このように、塩分(Salt)、砂糖(Sugar)、ソーセージなど加工肉(Sausage)の頭文字をとって「三つのS」は、がん予防のために食生活で制限すべきものと私は考えています。

 さて、人生100年時代に向かう健康長寿のためには「フレイル」(心身が衰え、要介護になるリスクが高い状態)を早く見つけ、予防対策を立てることが重要です。そのためのチェック項目があります。「体重減少」「握力が弱い」「疲労感がある」「歩くのが遅い」「運動習慣がない」の5項目です。

 この5項目のうち、一つでも該当すると「プレフレイル」(高齢者がフレイルになる手前の段階)です。三つ以上になるとフレイルとされ、将来、要介護になる可能性が高くなります。

 フレイル予防には三つのポイントがあります。「栄養」「身体活動」「社会参加」の三つです。「人生90年」「人生100年」という時代を迎え、新しい健康栄養学によるウェルビーイング対策がきわめて重要であると私は考えています。

ウェルビーイング実現に重要なガットフレイル対策

腸活ウェビナーB

内藤裕二さんの講演資料から=本人提供

 かつて2000年以上前に、「医学の父」ヒポクラテスは「すべての病気は腸から始まる」という言葉を残しています。私は、腸を元気にしてあげれば、他の臓器も健康を維持できるのではないかと考えて研究を進めています。

 胃腸には「ガット(Gut)」という英語があてられます。食べたものを分解し、栄養素を吸収し、いらなくなった老廃物をウンチとして排出するという臓器です。最近の研究で、さまざまな役割があり、病気と関係することがわかってきました。例えば、炎症性腸疾患であるIBDの患者はパーキンソン病の発症率が高いことがわかってきました。また、便秘症のある人は10年後の生存率が10%くらい下がるという研究報告もあります。

腸活ウェビナーC

内藤裕二さんの講演資料から=本人提供

 そうしたなかで、私たちは、赤ちゃんから働き盛りに人も含めて、すべての世代の人たちのウェルビーイングを、胃腸つまり「ガット」への対策からめざそうという考え方で研究を始めています。そのために「ガットフレイル」という言葉を作りました。フレイルは虚弱という意味です。

 ここで一番重要なのは腸内細菌ではないかと私は思っています。腸内細菌研究は驚くべきペースで進歩しており、最近では年間約1万本もの論文が出ています。腸内細菌はわれわれの健康に非常に役立っており、100兆個といわれる「腸内フローラ(腸内細菌叢)」はヒトとの生命共同体ではないかということがわかってきたわけです。

 私たちが2000人近い日本人の腸内細菌を徹底的に調べた結果、「エンテロタイプ」と呼ばれる腸内細菌のタイプが、AからEまでの5タイプに分かれることがわかりました。こういったタイプを調べることにより、食生活やライフスタイルが少し見えてきます。例えば、たんぱく質と脂肪を多くとる人はAタイプ、バランスのとれた食事をしている人はBタイプが多い。ラーメンや焼き飯のような炭水化物が多い人はCタイプ、砂糖が好きな人はDタイプ。あまり肉を食べないヘルシーな食事をしている人はEタイプが多いというようなことがわかっています。

 また、酪酸産生菌が少ない人たちは、肺炎などの感染症で入院したり、亡くなったりする率が高いこともわかってきました。免疫の点で、この酪酸産生菌の果たす役割は非常に重要です。こうしたデータをもとに、どうすれば酪酸産生菌を腸内で増やすことができるかということもこれからは考える必要があるわけです。

4/9(水)公開予定 (中)へ続く

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  • 内藤裕二
  • 内藤 裕二(ないとう・ゆうじ)

    京都府立医科大学大学院教授(生体免疫栄養学)

    1983年京都府立医科大学卒業、2001年米国ルイジアナ州立大学医学部客員教授,09年京都府立医科大学(消化器内科学)准教授などを経て21年から現職。日本酸化ストレス学会副理事長、日本消化器免疫学会理事、日本抗加齢医学会理事、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会アドバイザー。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌叢。著書に「消化管(おなか)は泣いています」「人生を変える賢い腸のつくり方」など多数。

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