時計の日付表示はすでに土曜日になっている。しかし僕はまだ金曜日の活動を終了していないので、主観的時間区分では金曜日である。
ルームメイトは「日付は午前0時に変わる」と主張したが、それは社会的な約束にすぎない。研究者の一日は、睡眠によって境界条件が課された時点で終了する。
そして僕は、まだ寝ていない。
朝は午前6時42分に起床した。昨夜の就寝時刻は午後10時38分だったので、睡眠時間は8時間4分。僕が許容する誤差範囲内である。
ベッドを出た後、室温、湿度、気圧、睡眠中の平均心拍数を記録した。ルームメイトは「起きたとき元気ならそれでいい」と言った。
それは観測機器を捨てて、橋が揺れていないように見えるから安全だと言う土木技師と同じである。
金曜日の朝食は、四角いトーストを対角線で切った直角二等辺三角形二枚、ゆで卵一個、紅茶250ミリリットルと決めている。今日はルームメイトがトーストを縦に切った。
長方形が二枚できた。味は変わらない。しかし、味だけが食事の状態変数ではない。形状、配置、咀嚼開始位置、パンくずの落下方向も含まれる。
僕は新しいパンを焼き直した。食料廃棄ではない。誤った幾何学への制裁である。
研究室では、昨日に続いて一ループp進弦理論を調べた。Bruhat–Tits木を種数1のSchottky群で割った世界面は、漸近境界にTate曲線を持つ。
木の上の自由場を積分消去すると境界に非局所作用が現れ、その二点核がTate曲線のNéron局所高さ関数と一致する。
僕が考えているのは、その種数2以上への拡張だ。
一般のp進Mumford曲線では、Schottky群の商から得られる有限還元グラフに複数の独立な閉路が存在する。
そのため、種数1のように単一の乗法的パラメータだけでは二点関数を記述できない。
そこで僕は、グラフ・ラプラシアンの擬逆行列、Schottky生成元の乗数、熱帯周期行列を組み合わせ、境界Dirichlet-to-Neumann作用素が正準局所高さペアリングを再構成する条件を調べている。
問題は零モードである。定数モードを単純に除去すると、グラフ上では整合しても、曲線上の主因子に対する双線形性が崩れる可能性がある。
逆にArakelov型の正規化を先に入れると、Schottky基本領域の選択に依存する項が残る。僕の予想では、その依存性はIharaゼータ関数の行列式表示と組み合わせることで相殺できる。
この予想を理解できる人間は、おそらく世界に5人いる。その5人が僕の予想に興味を持つ人数は、期待値で0.7人程度だろう。
昼食時、友人Aに説明したところ、「つまり木を輪っかにして、また木に戻すのか」と言われた。非常に不正確だが、彼がこれまでに行った説明の中では最も数学に接近していた。
友人Bは「高さ関数ということは、曲線の背の高さを測るのか」と尋ねた。僕は12分かけて算術幾何学における高さの概念を説明した。説明後、彼は「やっぱり背の高さではないんだね」と言った。12分前からそう言っている。
夕方、隣人が部屋に来て、今夜は映画を見ようと提案した。金曜日の午後8時から10時までは、僕が古い宇宙探査ドラマを製作年順に見る時間である。隣人は途中のシーズンから見ても理解できると言った。
できるかもしれない。しかし、理解できることと、正しい順序で理解することは別である。人類史を産業革命から学び始めても概要は理解できるが、その場合、なぜ全員が突然工場を建て始めたのか説明できない。
午後10時、本来なら就寝準備を始める時間だった。ところが、研究ノートを閉じる直前、種数2還元グラフの有効抵抗距離と局所高さの非対角項が一致する可能性に気づいた。確認には数分しかかからないと思った。
午前0時07分、符号を直した。
午前0時46分、今度は基点依存性が残った。
午前1時22分、基点を変えたときの差が調和1形式の周期として書けることに気づいた。
午前2時03分、ルームメイトが起きてきて、「まだやってるのか」と聞いた。僕は「あと10分で終わる」と答えた。これは嘘ではない。その時点の僕が持っていた情報に基づけば、条件付き確率の高い予測だった。予測モデルが現実に裏切られただけである。
午前2時41分、休憩として宇宙艦隊ものの戦略ゲームを一局だけ始めた。研究で複雑な木構造を見続けた脳を、複雑な星系ネットワークで休ませるためである。ルームメイトはそれを休憩とは呼ばないと言ったが、数学的対象の種類が変わっているので休憩である。
午前3時26分、勝利した。
現在、午前3時30分。
僕の金曜日の就寝予定時刻は午後10時38分だったので、4時間52分の遅延である。明日の起床時刻を同じだけ後ろへずらせば睡眠時間は保存される。しかし土曜日の午前8時には洗濯機を回す習慣がある。
習慣を変更することはできない。
これは不合理に見えるかもしれないが、宇宙にも保存則と対称性の自発的破れがある。僕の場合、保存されるのは習慣であり、自発的に破れるのは健康である。
おやすみなさい。