「えりぞの父親はアスペルガーだ」というのは、2006年に俺が発達障害の本を買って母親に渡してから、ずっと我が家の定説になっている。 でも未診断なのだ。 「だっておれ困ってねーもん」 「おれは普通だっての。発達障害とか騒ぐ方が変なんだよ」 クソが!周りは困ってるんだよ! 発達障害の本を渡した数日後、読み終えた母親は自室に俺を呼んだのだ。 「私はまるで、聖書を知らないキリスト教徒のようだった」 蒼い顔をした母親は本を手にして絞り出すような声で言った。俺はいくらなんでもキリスト教に失礼だろうと思ったが、気を取り直して「そうだろう。親父は発達障害ってやつなんだよ」と勇気づけるように言った。しかし母親はその言葉を聞いている風もなく、独り言のように「私はこれまで、発達障害者に包囲されていたんだ」と呟いたのだ。当時21歳の俺は仰天した。 オイ!馬鹿!極端だよ!「スペクトラムって書いてあったろ。要素はある

