2026-07-22

「第二の脳」とやらについて

ClaudeとObsidianを使って「第二の脳」を作る、という話を読んだ。

(これ↓)

https://x.com/chizevsm5/status/2079513704870142428

ふーん。

まず最初にいっておくと、便利なんだろうとは思う。

自分が読んだ文章だの、仕事で調べたことだの、ふと思いついたことだのをObsidianとやらに放り込んでおくと、Claudeが勝手に整理して、関連するものをつなげて、あとから質問したら答えてくれる。俺はものをおぼえておくということに関してはかなり無能人間なので、昔書いたことを探してくれるだけでも便利だろうなとは思う。書いたこ自体を忘れているどころか、書いたものを読んで「へえ、なるほど」と思ったあと、最後自分名前がついてるのを見て驚くことすらある。

なので外部に記憶を置くことそのものについて、俺はべつに否定する気はない。

そもそも紙にメモを取るのだって外部記憶だし、本棚だってそうだし、コンビニの店に置いてあるマニュアルだってそうだ。人間自分の頭だけですべてを処理してきたわけではない。そんなことできるわけがない。できないか文字を作ったんだろうし、文字ができたから、毎回ゼロから同じことを考えなくて済むようになった。

から「第二の脳」といわれて、触覚はどうした、味覚は、嗅覚は、みたいにいうのは、たぶん少し違う。

いや比喩だろ。

だれもObsidianから指を生やして女の子のほっぺたを触ろうとはしてないし、Claudeに焼肉食わせて味の感想を聞こうともしてない。画像動画を入れたところで人間視覚と同じにはならない、というのもそりゃそうなんだけど、それをいったら紙のノートだって眼球はついてない。そこを論点にしたら「第二の脳」という大げさな名前をつけたやつが悪い、というだけで話が終わってしまう。

まあ名前をつけたやつは悪いと思う。

なんだ第二の脳って。

そんな簡単に増えるのか脳。

俺なんか五十年以上ひとつの脳でやってきて、そのひとつすら満足に扱えてないぞ。

ただ、俺がこの手の話を読んで気持ち悪いと思う理由は、感覚器官が足りないからではない。むしろ逆で、そこに放り込まれものが、あまりにも「情報」としてきれいからだと思う。

人間がなにかをおぼえているとき、それは情報だけをおぼえているわけではない。

雨の日に読んだとか、腹が減っていたとか、その文章を書いたやつが気に食わなかったとか、直前に奥さまと喧嘩していたとか、店でバイト意味のわからないミスをされて猛烈に機嫌が悪かったとか、なんか知らんが女の子の太もものことばかり考えていたとか、そういうものが全部くっついた状態でおぼえている。

もちろん、それらを全部言語化することはできない。

できないが、くっついてはいる。

十年前に読んだ文章の内容なんかほとんど忘れているのに、その文章を読んだときの嫌な感じだけは残っていたりする。逆に、なにが書いてあったか説明できないのに、なぜかものすごく好きだったということだけおぼえていたりする。

それを感性と呼ぶのかどうかは知らない。

俺、感性とかセンスかい言葉は、なんか正体不明能力値みたいであまりきじゃないんですけども、少なくとも人間にとって「なにをおぼえるか」は、入力された情報重要度だけでは決まらない。本人にも説明できない、どうしようもなく個人的な引っかかりによって決まる。

んで、Claudeが自動的に要約して、自動的に分類して、自動的に関連づけるという。

その関連は、だれにとっての関連なんだ?

たとえば俺がAという文章を読んで、そこからBという昔の記憶を思い出したとする。文章の内容としてはまったく関係がない。でも俺にとっては関係がある。なぜならその二つは、俺のなかのどこかでつながってしまたからだ。

Claudeがもっともらしい関連項目を十個出してくれたとして、そのなかにBがなかったらどうなるのか。

まあ、ないでしょうね。

だって他人には説明できないつながりなんだから。俺自身にすら説明できないかもしれない。説明できないから、文章を書きながら「ひょっとして俺はこういう理由でこれが気になっていたのではないか」と探っていくわけです。

俺にとって考えるというのは、たぶんそういうことだ。

答えを出すことではない。

自分でもよくわからない引っかかりを、ああでもないこうでもないといじくり回して、書いてるうちに思ってもみなかった場所に出ることだ。最初から目的地がわかっているなら、それは考えているというより、すでに知っている答えを説明しているだけだろう。

そういう意味では、Claudeがきれいに要約してくれるのは便利であると同時に、かなり危うい。

人間の考えてることなんて、そんなにきれいに整理されてないからだ。

昨日いったことと今日いってることが違う。Aだと思っていたのに、実際に自分がAの立場に立ったらBを選んだ。自由大事だといいながら、他人自由に行動すると腹が立つ。仕事なんかしたくねえと思いながら、店がうまく回るとちょっと嬉しい。

そういう矛盾を、関連する情報としてうまいこと整理し、ひとつもっともらしい回答にまとめてくれる。

それ、便利か?

いや便利なんだろうけど。

けど、きれいにまとめられた瞬間に失われるものはないのか。

俺はこういう人間です、俺の考えはこうです、とClaudeが過去ノートから整合的な答えを作ってくれたとして、本人がそれを読んで「なるほど、俺はこういう人間だったのか」と納得する。納得したら、それはもうその人の考えになるのかもしれない。

ただそれって、ずいぶん簡単洗脳だよな。

自分の書いた文章材料にしているから、完全な他人意見には見えない。ところどころに見覚えのある言葉がある。昔の自分が書いたことも入っている。だから「これは俺の考えだ」と思いやすい。

でも、その文章を選び、要約し、関連づけ、矛盾を処理したのはだれなんだ。

少なくとも、おまえではない。

ここで、自分で考えないと馬鹿になる、という話になる。

これも単純にいうと、俺はあまり賛成したくない。

電卓を使うと馬鹿になるとか、漢字変換を使うと漢字が書けなくなるとか、カーナビを使うと道をおぼえなくなるとか、そういうことはいくらでもある。でも、暗算が速いことと頭がいいことは同じではないし、道を全部おぼえているからといって、人生の行き先までわかるわけではない。

道具に任せていいことはいくらでもある。

記憶もそうだ。人間ものを忘れるのは仕様であって欠陥ではない。忘れたくないことを機械におぼえさせておけばいい。それで空いた部分を別のことに使えばいい。

問題は、なにをおぼえさせるのか、なにとなにがつながっていると思うのか、その答えを読んで納得するのかしないのか、そこまで機械に決めさせたときだ。

店にはPOSデータというものがある。

なにが何個売れたか、何時に売れたか、前年と比べてどうか、全部出る。俺よりはるかに正確に店のことをおぼえている。

ではPOSは店長かというと、違う。

数字を見て、なぜ売れたのかを考えるのが人間だ。暑かったからなのか、近くで祭りがあったからなのか、たまたまバカみたいに買っていった客がいたのか。店員がいつもより暗い顔をしていたとか、常連が来なくなったとか、売上にはまだ出ていないがなんとなく店の空気が悪いとか、そういうものまで含めて店を見る。

POSは店のことを俺よりおぼえている。

でも、店のことを考えてはいない。

Obsidianにどれだけ情報を入れても、それは巨大な棚だ。Claudeがそこから必要ものを探してきて、きれいに並べてくれるなら、たいへん優秀な倉庫番だろう。

それでいいじゃん。

なぜ脳と呼ぶ。

増えたのは脳ではない。

棚だ。

棚が増えたことを、頭がよくなったことだと思うな。棚から出してもらったものを読んで、わかった気になるな。まして、そこに並んだ情報の関連を見て、自分が考えたことにするな。

便利なので使えばいいと思う。

だってめんどくさいことはしたくない。過去文章を全部おぼえてろといわれても無理だ。勝手に探してくれるんならありがたい。なんならこの文章だってClaudeに書かせたほうが、誤字は少ないし、もうちょっと短くまとまるだろう。

ただ、第二の脳を手に入れたと思って安心していたら、第一の脳を使う理由がなくなってました、ということはありうる。

人間は、使わなくて済むものをわざわざ使い続けるほど勤勉ではない。

俺はそうではない、AIの答えを鵜呑みにはしない、最後には自分判断している、という人もいるだろう。

よろしい。

では、その判断基準はどこから出てきた?

それもClaudeに過去ノートから探してもらうのか?

んで、最後に出てきた答えを読んで、おまえはなにを考えるんだ?

  • 悪くない。俺は好きだぞ。言ってること。

  • たしかに、Obsidian + Claude Code でコンビニ店長が務まるなら、それは第二の脳と名乗れるかもしれない それが無理なら、記憶の在庫を保管する棚、脳のバックヤードに過ぎない でも、POS...

  • でも、馬の世話をやめて自動車を運転したり、資本家の言いなりになって工場労働する人たちと、 俺と一緒にラッダイトする人のどちらが正しいか…😟

  • 銀狼怪奇ファイル

  • はてブやん

  • すばらしい

  • 元ツイートの「Obsidian + Claude Code = 第二の脳 論には違和感がある。 人間の脳の長所は情報をストックすることではなく、情報を適切に捨てることではないか。「第二の脳」は情報を貯め...

    • 増田の違和感は、「第二の脳」という比喩に対する認知心理学的な観点と、大規模言語モデル(LLM)の技術的制約(トークンコスト・文脈窓)という実用的な観点から妥当性もある。 増...

      • 人間の脳の忘却とは、AIとのチャットで言えば「新しいチャットを開始」に近いと思う。文脈を断ち切る。 Karpathy氏らの提案する「第二の脳」の手法では、文脈が残り続けるのでは?そ...

        • 増田の「人間の脳の忘却(新しいチャットを開始する)」という比喩や、「文脈が残り続けることの短所」についての仮説は、元増田とも近いものがあります 元増田と増田の論点は、以...

  • 秘書みたいなもんやろ 秘書なりに考えて資料をまとめてくれて助かるやん。相談もできる 現時点のこの秘書はアンタから見たらアホかもしれんけどアホなりに考えて(いるかのような)...

    • ( ˙灬˙ ).。oO(合戦巧者には敵の弱き部隊が澄んで見えるという ) ( ˙灬˙ ).。oO(AI生成の文章もまた澄んで見えるという)

  • でもさ、第3者から見れば、 第1の脳をつかって書いたであろうお前さんの文章と 第2の脳なり生成AIが書いたであろう文章は もはや見分けがつかないんだ 手紙は手で書かなきゃ駄目...

    • ( ˙灬˙ ) 「考えるな、感じろ」 ( ˙灬˙ ) 「否、嗅げ。青いコンビニの臭いを」

  • 情緒的なものを楽しむために、そうじゃないものを全部第二の脳に任せるってことなんじゃないの? AI的な思考も脳の働きの一部だよねえ

  • 君の言ってることに賛成する。 ツイッターの奴らはいちいち表現が大袈裟すぎる

  • ジャップの哲学欲は異常

  • 足の裏は第二の心臓

  • そんな累代の執事みたいな役目、Claudeには荷が重い。 頭は自分で整理するものだ。なぜなら情報は整理しないと腐るから。 いろいろ渾然一体のままほっといて「うーむ」とか言ってる...

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