2026-07-13

チェーンの居酒屋日本酒を頼んだ。

同じメニュー、同じ値段。

最初店舗では、徳利とお猪口が出てきた。

何も問題はない。写真どおり、メニューどおり。

数日後、別の店舗でも同じものを頼んだ。

今度は受け皿付きのグラスが出てきて、店員さんがゆっくり酒を注ぎ始める。

「もう十分じゃない?」

と思っても止まらない。

表面張力でぷっくり盛り上がり、それでも止まらない。

ついには受け皿に、とくり、とくり、と酒がこぼれる。

「ああ、この店、分かってる。」

私は、その瞬間に常連候補になった。

もちろん、冷静になれば思う。

どうせ量は180mlなんだろう。

受け皿にこぼした分を含めて180mlなのかもしれないし、実はどちらの店舗ほとんど変わらないのかもしれない。

でも、人間数字では酒を飲まない。

気分で飲む。

「こんなに注いでくれた」という気分は、数mlよりずっと価値がある。

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チェーン店なのだから、本当は店舗によって体験が変わるのは良くない。

でも、もし現場に少しでも裁量があるなら、「お客さんが嬉しくなる演出」に使える人は強い。

私は日本酒を飲みに行ったはずなのに、持ち帰ったのは「歓迎された」という記憶だった。

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仕事でも同じなのだと思う。

人は100点の仕事を覚えているわけじゃない。

「そこまでしてくれるの?」

と思った仕事を覚えている。

ほんの一手間。

ほんの一言

受け皿にこぼれる、あの数滴みたいなものだ。

たぶん、人はその数滴のためにリピーターになる。

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