フェイブルマンズ少年は芸術家気質の母と研究者気質の父というユダヤ人の元に生まれる。そしてある日、映画館で列車事故映画を見たことで衝撃を受け、映画撮影の道にのめり込んでいく。様々な工夫を凝らし、ボーイスカウトらを集めた西部劇映画などを撮りながら、主人公は映画を撮るとはどういうことなのかを知り、大人になっていく。
みたいな話。
まず冒頭、列車事故映画を見て大ショックを受けた主人公が母親にヒソヒソと誕生日にほしいものをねだるシーンがあり、てっきりカメラを求めるんだろうなと思って見てたらなぜか列車模型の1車両を頼んでいて、その後、キャンドルが増えていく憎い演出で毎年毎年車両のプレゼントをもらい、もしかして鉄ちゃん育成映画か?と思って見ていたら、5年くらいかけて全車両揃った時点でいきなりクラッシュムービー撮り始めて、こいつ、大監督に必要とされる構想〇年力を幼少期から身に着けていた……だと!?ってなった。
俺が映画見た時のフェイブルマンズ少年くらいの年は将来の夢はブロッコリーでクラッシュムービーを撮ったくらいのころにはぜいりしになるのが夢だったので、そんな長い間、間接的な方法で夢に近づいてたのすごすぎるだろ。
でさ、映画を撮るときにシーンが終わるときに「カット!」って言うじゃん。
つまり映画って何かを切り取るってことなんだよ。これは最後にデイヴィッド・リンチが登場して「芸術ってのは地平線をどこに置くかってことなんだ!」ってフェイブルマンズ青年に天啓を与えるシーンにも通じていて、つまり映画、芸術っていうのは現実をどう切り取るか、その切り口のことなんだなぁっていうそういう映画だった。
途中でフェイブルマンズ少年は祖母が亡くなって落ち込む母親を励ますためにキャンプ旅行に出かけ、そこでファミリー記録ムービーを撮ることになる。そこでいろんな愉快なことがあり、それをしっかりカメラに収めたフェイブルマンズ少年はその動画の編集中に映り込んだ母親と叔父さんの心の通じる瞬間を発見してしまう。
それは倒れる母を抱きとめる叔父という何でもないシーンだったにもかかわらず、コマとコマの間には確実に感情が映り込んでいてそれを発見してしまったフェイブルマンズ少年は懊悩する。なんならキスしてる場面も映ってたし。しかし、出来上がったムービーは家族の楽しいキャンプ旅行ドキュメンタリーになっていた。
しかしそのことで彼と母親の関係はぎくしゃくし始めそれが頂点に達した時、彼は母親に今度はそれ以外の部分を「カット」した映像を母親に見せる。そのことが最終的に家族を壊すかもしれないことも知りつつ。映像は冷徹に冷酷に"それ"を映し出すことができる残酷さをここで彼は知り、その恐ろしさに映画の道から離れようとする。
そうしていろいろあってカリフォルニアに移住し、そこでネオナチジョックス学生にユダヤ人とのことでいじめられるが、それをきっかけにちょいデブの女の子と知り合い恋に落ち、恋愛パワーで映画の道に復帰。おさぼりの日とかいう意味不明なレクリエーションの記録映画を撮ることになる。
そこで彼はネオナチジョックス学生のリーダーをまるでヒーローのように編集し、プロムで放映。学年のリーダー格だった彼のヒーロー然とした映像に会場は大盛り上がり。うっかり小デブに振られた主人公がしょんぼりと廊下でうずくまっていると憤懣としたリーダーがやってきて主人公を詰める。
あれは俺じゃない。あんなに俺はすごくない。俺の能力は俺の努力の結晶だ。なのにみんな俺がすごくて当然だと言う。俺はそれにずっと苦しんでいたのに、お前は俺に二度と越えられないような俺を映し出した。いじめへの仕返しか、と。
それに対してフェイブルマンズ少年は、カメラはありのままを映すだけだ。そして俺はお前を中心にした方がいい映像になると思ったからそうしただけだ。仕返しでも何でもないと返し、リーダーから気骨あるやんとなんとなく認められた感じになる。
ここでもやっぱり映像にはイケてるスポーツマンとしてのリーダーだけが映り、彼がそうなるための苦悩や努力はすべて「カット」され、しかし実際に彼が身に着けてきた能力、現在が残酷なまでに映し出されるという映画が持つ暴力性が表現されている。と、同時にその暴力性がフェイブルマンズ少年を映画の道に突き動かしたように、人々の心に響き、すこし相手を変えることができるという希望も表現されていてよかった。
そうして最後にデビッド・リンチから地平線を中心に置く作品はクソと言われ、事務所を追い出され希望に満ちた背中で街を歩き去るフェイブルマンズ青年の映像が映し出され、ガコッと地平線の位置が下に下がって映画が終わるのもオシャレでよい。ただ間違いなく一枚の絵としては地平線が中央にあった時のほうがよかったのも皮肉でよい。
こうして生まれたときから構想〇年力を持ち、現実を映像に"切り取る"才能に恵まれた少年フェイブルマンズはスティーブン・スピルバーガーとして世界最高の映画監督の一人に成長していくのであった。
まぁ、そんな感じかな。
フェイブルマンズ少年が幼少期からいろんな自主製作映画を撮っていくのにいろんな技法を頑張って駆使するのを見て、映画ってこんなふうに作られているんだろうなぁっていう知識欲も満たせるし、フェイブルマンズ一家も、そのゴタゴタも愉快で楽しいし、映画を撮るってどういうことかって言うテーマがしっかりしていてよかった。
まぁ自伝的な作品ということで過度な盛り上がりとかはないのでそういうのを期待している人にはちょっとかもしれないけど、(俺は世代じゃないけど)スピルバーグめっちゃ好きな人にはマストな一本なんだと思う。
なんかショート動画で有名な映画監督が子供のころに自主制作映画で血のりだかマズルフラッシュだかを表現したみたいなの みた記憶があるけどあれかなと思って調べたらあれだった
今40だけどスピルバーグにオナニーの数だけは負けない自信あるわ
バーグハンバーグスピルバーグみたいな感じか…😟なるほど