琵琶湖の離島・沖島 「命綱」の通船どう守る 知事選候補の訴えは
自宅から港までの約400メートルを手押し車につかまりながら歩く。「この船がないと、島から出られないから」。琵琶湖に浮かぶ滋賀県近江八幡市の沖島で暮らす女性(84)にとって「おきしま通船」は命綱に等しい。
沖島は、国内の湖では唯一の有人離島。通船は沖島港と堀切港の3・3キロの航路を約10分で結び、自治会が運営する。通院に利用するというこの女性のように、島民の日常生活に根ざしている。
滋賀県知事選、5日に投開票 4人の争い
滋賀県知事選が5日に投開票される。新顔で元栗東市職員の大隅元侍氏(42)、新顔で共産が推薦する共産県委員会副委員長の坪田五久男氏(67)、4選をめざす現職の三日月大造氏(55)、新顔で会社員の坂本正明氏(57)の無所属4氏が立候補している。県政の課題の一つが公共交通のあり方。航路の維持が生命線といえる琵琶湖の離島で、現状を探った。
知事選の告示から2日後の6月20日、立候補した4人のうちの1人が通船に乗って沖島を訪れた。集まった約30人の島民を前に、島を守る大事なこととして医療、教育、交通の三つを挙げ、こう約束した。
「新しい船を導入するための支援を近江八幡市と滋賀県で連携してやっていきたい」
「今運航している船がアウトになったら、この島は終わり」と自治会長の茶谷昭一さん(76)は言う。代替船はあるものの、定員数が少なく、バリアフリーではないことから利用を控えている。
新しい船を自治会で用意するのは簡単ではない。業者に建造費の総額を尋ねたところ、資材価格や人件費の高騰で約1億8千万円と聞かされたという。「まんじゅうを作るようにはいかん」と茶谷さん。この窮状を候補者にも訴えた。
沖島の住民は5月29日現在の登録で204人。茶谷さんによると、この数には島外の介護施設に移った住民も含まれており、実際に住んでいるのは180人ほど。約70年前に比べると約4分の1。若者の島外への流出が要因だ。
なりわいとなる漁業も、異常気象で琵琶湖の高温化が進めば先行きは不透明だ。高齢化率は約7割に達し、新しい船のために自治体が巨額の借金を負うのは極めて難しい。
近江の国は歴史的に湖上交通が盛んだった。近代に入ると、幹線道路や鉄道・バス路線が整備され、人々の足は琵琶湖から遠のいた。自治会が運航する沖島の通船も今は観光利用が少なくない。直近10年間で釣り客や観光客が倍増し、年間約2万6千人が乗る。
「対岸の堀切港に200人ぐらいのお客さんの長い列ができ、大変でした」
地域おこし協力隊員として2025年4月に着任した杉浦健介さん(24)は、今春の桜の季節と大型連休の活況を振り返る。
船の定員は50人。繁忙期は臨時のピストン運航に追われる。杉浦さんは、同時にやってきた平尾友里さん(36)とともに免許を取得し、高齢化と担い手不足に陥っていた船長の業務を支えている。現在の船長は5人。1便に2人が乗り組み、1人は操船、もう1人は乗船券の回収や接岸の補助をする。
杉浦さんと平尾さんの隊員の任期は28年3月まで。昨年の自治会の総会では「3年経って出ていくなよ」といった声も飛んだ。2人は島での定住を強く希望しているが、任期後は給料などの公的な保障が断たれる。
通船の運航を維持するのに、2人の存在は欠かせなくなっている。杉浦さんは「船長を続けるにしても、自治会でこれ以上の雇用は資金的にも難しいと思う」と案じる。
通船を将来的にどう運営していくのか。隊員2人を含む島民たちの検討は始まったばかりだ。
投開票日の夜にライブ配信
朝日新聞は滋賀県知事選の投開票日の7月5日午後7時ごろから、インターネットで開票状況を伝えるライブ配信を行う予定です。当日の配信はQRコード、またはURL(https://www.youtube.com/live/mbptU9ntHn8?si=CfCT6YMVpC3Nm4Ju
)からご視聴ください。
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