第2回「国軍の手のひら」で踊る若者 大音響のライブが覆い隠す不安と葛藤
大音量のクラブミュージックが夕闇に響く。屋外のステージでDJが曲調を速めると、密集する若者たちの興奮は最高潮となった。跳びはね、頭を振り、踊り始めた。
11月上旬、ミャンマー最大都市ヤンゴン。満月を祝う仏教の祭りに合わせ、国軍は大々的なライブイベントを開いた。
自撮りするカップルや笑顔の親子、ビールを片手に串焼きをほおばる男性。クーデター以降、市民を弾圧してきた国軍が開いた行事を、大勢の市民が楽しんでいる。7千人超が殺害されたこの国の状況を思うと、人々の陽気さには気味の悪さも漂う。
「鬱々(うつうつ)とした気持ちを晴らす機会は、そう多くないから」
ステージ付近にいたシュエミンさん(25)が言った。普段は飲料メーカーに勤める。休日は友人とバーやクラブに行くのが数少ない楽しみ。この日も友人と訪れていた。
父親は船乗りで、シンガポールやドバイで暮らした時期もあった。「不安なく過ごせる、平和な国がうらやましい」。ステージの方を眺めながら、そうつぶやいた。
2021年2月1日、事実上の国のトップだった民主化指導者アウンサンスーチー氏が国軍に拘束された。若者たちは解放を訴えたが、国軍はデモの群衆に発砲した。
民主派の若者らは武装蜂起したが、劣勢が続く。「期待したが、何も変わらなかった」。民主派を悪く言うことはタブー視されてきたが、最近は市民から諦めの声が聞かれるようになった。
国軍の徹底した弾圧で、ヤンゴンは一見、平穏だ。「抵抗」の空気を感じることはほぼない。
市民がイベントを楽しみ、平穏に見えるミャンマーの最大都市ヤンゴン。しかし国軍支配下で暮らす人々の心の内には、底知れぬ不安が潜んでいます。記事後段では、徴兵を目的に、国軍に突然拉致された男性の話を伝えます。
続かなかった不買運動
表立ったデモが弾圧されるな…






































