第36回「平成の高橋是清」、伏線は10年前の会食にあった 宮沢喜一日録

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池田伸壹 松田京平
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 故・宮沢喜一氏は戦後初めて首相を退いてから蔵相(財務相)に就き、当時「平成の高橋是清」と言われた。戦前に首相を務め、その後蔵相となって金融危機や恐慌に対処した姿が重なるからだ。1998年の参院選で大敗した自民党の総裁となった小渕恵三氏は、三顧の礼で宮沢氏を蔵相に迎える。その伏線は10年前の会食にあった。

 宮沢氏が記した政治行動記録(日録)に、88年12月16日、午前11時30分から1時間半にわたり、「小渕官房長官ご夫妻と昼食」との記述がある。

 当時は竹下登内閣。宮沢氏は1週間前、リクルート問題で蔵相を辞任した。前年の総裁選で竹下氏に敗れたことに続き、宮沢氏にとって大きな挫折だった。そこに官房長官の小渕氏が慰労のために誘ったとみられる。この会食が、のちに意味を持つことになる。

 それから10年後。98年7…

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この記事を書いた人
松田京平
政治部長
専門・関心分野
政党政治、選挙、地方自治
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    河野有理
    (法政大学法学部教授=日本政治思想史)
    2025年8月31日8時0分 投稿
    【視点】

    宮澤の蔵相起用は小渕内閣のファインプレーの一つだが、10年前の会食が機縁とは、「ブッチホン」で有名な超調整型リーダーとしての小渕恵三の面目躍如といったところだろう。 議員定数削減の問題で揉める自由党と公明党のあいだを取り持ちつつ、外では常に

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