(ハヤカワepi文庫・864円) この未来社会も結構いいのでは? 古典的SFの新訳である。ジョージ・オーウェルの『一九八四年』と並べられるディストピアものの代表。 名作だから読んだ方がいいという一般論を超えて、読むべき理由が最近になっていよいよ増しているような、ある意味で恐ろしい本だ。 時代設定は二五四〇年。この時代の社会の記述だけでもうこの小説はほとんど出来上がっている。そこに攪乱(かくらん)の因子が迷い込んで一騒ぎがあるが、たぶんその影響は速やかに消えるのだろう。 この時代、人は母親からではなく瓶の中で培養されて生まれる。一九三二年に書かれたこの話の中でクローン技術は現実のものとなっている。人々はアルファから始まる五段階の階級に分けて生み出され、知力も体格もそれに合わせて調整されている。家族制度はなく、幼時には集団生活。そこでパブロフ的な方法によってこの社会への順応が刷り込まれる。

