2026-06-26

一人の氷河期世代オタク女として思うこと

上の世代オタクについて

 私より一回り、あるいはそれ以上の上の世代オタクを思い浮かべると、まず男性の像が比較的はっきりしている。中流以上の家庭に育ち、子ども部屋に親が買い与えたパソコンがあって、それをいじっているうちにハードソフトに詳しくなり、理系学部を経てメーカー通信IT系技術職に進んだ、というルートを辿った人がそれなりにいる。容姿への関心が薄いことは共通していて、磨けば光るとも限らないし、率で言えば非オタクのほうが見栄えのする人は多かったと思う。ただ、家庭の経済力一定以上ないとオタク趣味が成立しなかった時代なので、生活基盤としては安定していた人が多かった、というのはある。

 上の世代女性オタクは、評価が難しい。同じく中流以上の家庭で育ち、国公立や有名私大に進んでいる人もいる。ただ、文系ほとんどで、その語学力教養が何かの形で社会還元されているかというと、必ずしもそうではない。同人活動のために知識を使い、推しカプの正当性を論じるために海外議論引用する、といった方向に力が向かっている人も少なくなかった。私自身も二次創作をしていた時期には、その「内輪の空気」のために時間も気力もかなり投じていた。技術面で言えば、男性のような際立った専門性基本的に持っていなかったと思う。個人サイト運営していた層の中には、独学でHTMLCSS、そこからちょっとしたスクリプトを書けるようになって、そのままウェブ業界に進んだ人もいるにはいるけれど、多数派ではない。私自身のスキルも結局、中途半端なところで終わった。

 結婚については、上の世代オタク女性はかなり高い確率結婚している。私の周りでも、学生時代サークル同人活動を通じて知り合った相手とそのまま結婚した人が多い。夫側は「自分のような人間結婚できたのは運が良かった」のような感覚を持っていて、妻が家事をして、たまに同人誌を作っていることをわりと受け入れている。一方で妻側は、夫の身なりを整え、家庭を回し、子どもを育てている。私自身も、たぶんこのオタク夫婦類型に入る。

 上の世代オタクには、変化に適応できずに苛立っている人も目につくようになった。SNS政治的発言ばかりして揉めている人、二次創作の界隈で誰かを叩いてばかりいる人を見ると、自分が積み上げてきたつもりの文化が薄まっていくことへの不安がそこにあるのだろうな、と感じる。ここは自戒も込めて書いている。

下の世代オタクについて

 下の世代オタクは、上の世代とはかなり前提が違う。彼らがオタク的なコンテンツに触れる入り口は、ほぼスマートフォンソーシャルゲームそれから無料で読める漫画アプリ動画配信になっている。家庭にパソコンがあることが前提ではなくなったので、オタクであるために中流以上の家庭環境必要だった時代の前提が外れた。結果として、家庭環境が必ずしも安定していない層、学業面で苦戦している層、いわゆる旧来の「オタクではなかった層」が大量に流入している。

 容姿に気を遣う人は、はっきりと増えた。ぎょっとするような格好の人の割合は確実に減って、ふつうに小綺麗な人がいる。これは良いことだと思う。同時に、性的経験についても、上の世代男性オタク童貞であることがある種の文化的特徴だったのに対して、下の世代男性オタク風俗パチンコといった、上の世代オタクからは縁遠かった消費活動を当たり前にしている人もいる。技術リテラシーの面で言うと、上の世代男性オタクが持っていた「家族IT担当」のような能力は、明らかに引き継がれていない。大学生レポートスマホだけで書く時代になり、PCをまともに触ったことがない若者も珍しくない。

 女性側では、二次創作お金を使うのではなく、公式グッズや配信ライブに大量にお金を落とす形に消費スタイルが変わった。アクリルスタンドを並べて祭壇を作り、痛バを持ち、推しのために課金額を競う。これはアイドルホスト貢ぐ文化が、二次元の界隈にスライドして入ってきたのだと思う。公式お金流れること自体は、上の世代のように同人誌即売会で内輪のお金を回していたよりも健全とも言える。自分収入生活設計とのバランスを見失っている人もよく見かける。ただこれも、上の世代同人女交通費印刷代に湯水のように使っていたことを思えば、本質的にはあまり変わっていないのかもしれない。

 下の世代女性で印象的なのは、「喪女」自認のある人が減り、彼氏がいた経験のある人が多いことだ。一方で、結婚子育てに向くかというと、生活の組み立て方や金銭感覚を見るかぎり、必ずしもそうとは言えない人もいる。未婚化はむしろ加速している印象がある。

あいだに立って思うこと

 世代論として「昔はよかった」と言うつもりはない。上の世代オタク男性技術的な強さは確かに失われたけれど、上の世代女性オタクが持っていた長所が何だったかと問われると、自分のことを含めて言葉に詰まる。それは社会的にはほとんど意味を持たない。下の世代オタクは、入り口ハードルが下がった分だけ多様で、玉石混交だ。容姿は良くなり、同人誌同人グッズではなく公式お金流れるようになり、その一方で技術リテラシーや家庭環境の安定は失われた。

 オタクという言葉が指していた「何かに深く詳しい人」という意味は、ほぼ消えて、今は「コンテンツを消費する人」に置き換わっている。人口は増えた。オタク差別がなくなったかわりに、内部のルッキズム課金額のマウントが目立つようになった。これは、長く差別されていた集団市場の中で再編されるときに、しばしば起こることだと思う。

 結局のところ、上の世代も下の世代も、その時代経済技術の条件に合わせて形を変えただけで、本質的にやっていることはあまり変わらないのかもしれない。自分が好きなものに、自分が持てる時間お金を、ときに度を越して注ぎ込む。それを観察対象として眺めながら、扶養範囲事務仕事をして(個人サイト時代に得たHTML/CSSは、はっきり言って何の役にも立っていないが、パソコンが平均的中年女性よりも使えることは、経理事務仕事に役立っている)、夫と子どもの夕食を作っている自分も、その連なりの中にちゃんといる、と思う。

記事への反応(ブックマークコメント)

    ログイン ユーザー登録
    ようこそ ゲスト さん