BtoBマーケティングリサーチの基礎を学ぶ!
─ BtoBマーケティングのリサーチはBtoCと何が違う?ハマりやすい2つの落とし穴
─ 「成果を出しても評価されない」のはなぜ?リサーチ調査から見る経営層とマーケ現場のギャップ
─ マーケの打ち手はどこで効く?決裁者849人に聞いた、 検討プロセスから導入決定までの本音(本記事)
─ BtoBマーケで調査結果が施策に繋がらない原因はデータの量・質にあらず!データ分析の基本作法を学ぶ
情報収集の段階で「候補外し」をする決裁者が8割超
BtoBの発注プロセスは、売り手の想定よりも遥かに早く、見えないところで決着がついているのが実態です。調査では、Webによる情報収集段階で「候補から外した経験がある」と答えた決裁者は85%に上りました。
「情報収集した(候補に挙げた)企業数」を聞くと、3社が39%で最多。次いで2社が25%、4〜5社が20%です。大多数の決裁者が、Webの情報収集段階で候補を「3社以内」に絞り込み、ほぼそのままの社数で商談へと進んでいます(商談社数でも3社38%、2社29%)(図1)。
これは、問い合わせや商談の前に、既に検討の土俵に乗れるかが決まっていることを意味します。では、この絞り込みはどういった条件で行われているのでしょうか。
候補落ちの理由としては、「要件とのミスマッチ(41%)」や「機能がわからず判断できない(23%)」といった機能要件と、「予算オーバー(30%)」や「価格感がわからない(18%)」といった価格の不一致や不透明性が突出しています(図2)。
つまり、サービスの具体的な仕様と料金がWebで理解できなければ、商談にすら呼ばれない可能性が高いのです。
商材別で見る「候補落ち」の理由
候補から落ちる理由を商材カテゴリ別に見てみると、特徴的な差が現れます(図3)。
候補から外した理由として「予算オーバー」が最も多いのは総務・福利厚生(40%)です。単価や相場感が比較的明確なためWebの掲載価格の段階で足切りされやすいのでしょう。一方、コンサルティング・研修(22%)は低く、価格よりも内容やアプローチを見て判断する傾向があると言えます。
「機能の詳細が書かれていない」が最も高いのは人材サービス(30%)です。人材サービスは要件(職種・雇用形態・エリアなど)の多様性が高く、情報の詳細がないと、自社に合うかどうかの判断ができないためと考えられます。
「導入事例がない・少ない」は、広告・マーケ・制作(8%)と総務・福利厚生(6%)で低い一方、コンサルティング(18%)、ITシステム開発(18%)、人材サービス(18%)では高めです。アウトカムのばらつきが大きい商材ほど、類似事例の有無が信頼の基準になります。
問い合わせの強力なトリガーは「事例」
候補から外されなかった理由=「なぜ問い合わせたか」という動機も重要です。実際に問い合わせ・商談を行った理由を複数回答で聞くと、全体の57%が「機能・要件の合致」を挙げていますが、注目すべきは2位以下に続く「事例」の存在です(図4)。
2位・3位を「導入事例・実績が豊富で安心(51%)」「同業他社の事例があった(35%)」が占めており、多くの決裁者が事例を動機として問い合わせを行っているのです。機能・要件の確認と並んで、「自社に近い環境で既に実績を出している」という安心感が、商談の入口を決める大きな動機になっています。
マーケターにとってこの結果から得られる示唆は明確です。導入事例コンテンツは「あると良い読み物」ではなく、商談機会そのものを生み出すコンテンツなのです。特に業種・規模が近い事例をどれだけ揃えられるかが、問い合わせ率に直結すると言えるでしょう。
商材別で見る「問い合わせ理由」
問い合わせ理由を商材カテゴリ別に見てみると、事例コンテンツへの感度は商材によって大きく異なることがわかります(図5)。
ITツール・SaaSは「導入事例・実績が豊富で安心(60%)」、「同業他社事例があった(41%)」と両項目で全商材のうち最高水準です。比較サイトや検索で候補を並べて検討するデジタル購買行動が定着しているこの領域は、事例の量と質が競合との最初の差別化要因になるのでしょう。導入事例ページの充実は、アクセス数よりも問い合わせ転換率に効く施策と言えます。
製造・物流・建設資材は「機能・要件の合致(63%)」がトップで、事例や実績の項目は40%と他商材より低めです。スペックや仕様の合致が判断の主軸であり、事例の充実よりもカタログ・仕様書の整備を優先的に進めた方がよいでしょう。
総務・福利厚生は「価格が明瞭・妥当(43%)」がトップです。Web選定の段階での候補落ち理由でも「予算オーバー」が最多だったことと一致しており、価格情報の透明性がWebコンテンツ戦略の核になります。
「提案・見積りが出揃った段階」で決断が、5割超
では、決裁者が「ここにしよう」と気持ちを固めるタイミングはいつなのでしょうか。データでは、「提案・見積もりが出揃った段階」が53%と過半数です(図6)。
社内稟議の直前はわずか7%で、正式な社内承認は後付けの手続きに過ぎず、勝負は相見積もりが揃った時点で終わっているとわかります。この段階で競合より頭一つ抜けた提案を出せているかどうかが成否の分かれ目になるのです。
また、問い合わせ前にWebと資料だけで「ここ一択」と決めるケースも8%存在し、ブランドやサービスの認知・評判が購買ファネルを短絡させていることの表れといえます。
