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来たる11月の米国連邦上院議員選挙では35議席が改選される。中間選挙では通常は野党有利と言われるが、今回の選挙では下院に比べ上院で民主党が多数を奪還する可能性は低いと見られるが、民主党候補者の善戦が伝えられている州もある。中でもテキサス州が注目されている。 テキサス州選出の二人の現職上院議員のうち、一人は過去に大統領選挙候補者にもなった共和党のテッド・クルーズ。そして、もう一人は、こちらも共和党の重鎮として影響力を持ってきたジョン・コーニンである。今回はコーニンの議席が改選の対象となったが、コーニンは共和党の予備選挙ですでに敗退した。 コーニンを破ったのは、ドナルド・トランプ大統領から支持を受けたケン・パクストン州司法長官である。パクストンは、過去に職権濫用を理由に共和党優勢の州議会下院に弾劾されたことをはじめ問題が多い人物であるが、トランプからの支持をバックに勝利を収めた1。トランプに楯
アメリカは分断しているといわれる。しかし、見落としがちな点は、分断の本質は、保守とリベラルの二極化ではなく、両陣営内の分裂にあることだ。しかも、分裂が従来のように中道(穏健派)と両極(リベラル派あるいは保守派)という単純構造ではなくなっており、何をもって左派、右派とするのかで細分化が著しい。民主党内でいえば、「経済」と「文化」を巡りそれぞれ、中道(穏健)と左派が実に細かく割れている。アメリカの政治論議がどの類型に属した「リベラル」という言葉をいかなる含意で使用しているのか、実に分かりにくい。アメリカ政治に関する書籍の翻訳書を読んだ人から「何やら民主党系知識人の本らしく、トランプを批判しているが、民主党のことも激しく批判していて意味がわからなくなった」という相談をよく受けるのも頷ける。 どの国や地域でも「当事者」は自分の目線と感情からしかものを語れない。「自分はリベラル」「マムダニは社会主義
民主党が中間選挙だけでなく2028年大統領選挙の勝利に確信を持つには、ニューヨーク市長選勝利の勢いとMAGA派の混乱(共和党編参照)だけでは材料が足りない。大統領側の政党が中間選挙で不利になるのは常で、それ自体は民主党の強さの証ではない。トランプの自爆に助けられて連邦議会で多数派に返り咲いても、将来に向けて3つの課題が残る。 MAGA運動が存続するのか(トランプのカリスマが継続するのか)。 民主党が超党派協力が可能な共和党の旧主流派が力を取り戻せるのか。 民主党が次世代の未来を託せる大統領候補を選べるのか。 いずれも相互に絡んでおり、トランプや共和党側の問題で民主党の努力ではどうにもならないことも多い。民主党側としてはトランプに奪われた票を短期的ではなく中長期的に取り戻せるのかが鍵になる。それは党の未来図や哲学と関係しているが、1992年のビル・クリントン、2008年のオバマに匹敵する民主
アメリカでは長らく、カトリックは「危険な宗教」と見なされてきた。1960年の大統領選で、ジョン・F・ケネディが立候補した際、「アメリカがバチカンに支配される」といった言説が広がったことは象徴的である。自由と個人主義を重視してきたプロテスタント国家アメリカにとって、国家の外部に権威の中心を持つカトリックは、主権と民主主義を脅かしかねない存在に映っていたのである。 しかし、21世紀のアメリカにおいて、こうした構図は大きく変化している。宗教離れが進む一方で、ヒスパニック系移民の増加に加え、改宗者も少なからずいるということを背景に、カトリックは全人口の約2割を占める主要宗教として定着している1。選挙になると、カトリック票はどのように動くのか、という報道がなされる。 果たしてアメリカ政治の中に「カトリック票」と呼べるような政治勢力が存在するのだろうか?カトリックは一つの政治勢力としてまとまった行動を
第2次トランプ政権立ち上がり後の民主党「無策の1年」、あるいは民主党「戦犯探しの1年」を彩るのは、3冊の暴露本である。NBC記者ジョナサン・アレンと議会専門紙「ヒル」の記者エイミー・パーネスによる2024年大統領選挙の記録Fight: Inside the Wildest Battle for the White House(2025年4月1、そしてCNNアンカーで政治記者のタッパーと「アクシオス」記者のトンプソンによるOriginal Sin: President Biden’s Decline, Its Cover-Up, and His Disastrous Choice to Run Again(2025年5月)2、さらにカマラ・ハリス自身による107 DAYS(2025年9月)3である。これらの3冊は、回顧録を鋭意作成中のバイデンのレガシーに水を差しただけでなく、民主党を嘆きと愚
アメリカ民主党が深刻な迷走の危機に陥っている。1995年に現地訪問で民主党と共和党の観察を始めて以来30年、観察者として、関係者として、さまざまな形でアメリカの政治と選挙の「現場」に触れてきた筆者としても、この危機は出口が見えないと感じている。他媒体の記事1、書籍(共著)2、学会報告3が先行してしまったことで、SPFアメリカ現状モニターでは上書き的発信を抑制していたが、ここではトランプ勝利・ハリス敗北から1年の節目で両党の現場を総括したい。 昨年11月に筆者は大統領選挙後に現地入りし、党幹部、陣営内外への聞き取りを皮切りに、サンダース/AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)支持の新世代左派から、旧リベラル、旧穏健派まで民主党内各派との対話を繰り返した。今夏から初秋にかけては、中西部(イリノイ州、アイオワ州)、東部(ワシントンDC、ヴァージニア州、ニューヨーク州およびニュージャージー
インドは私たちの友人だが、長年、彼らの関税が世界最高水準であり、非関税貿易障壁が最も厳しく、最も煩わしい国の一つであるため、私たちは彼らとの取引をほとんど行っていない。さらに、彼らは軍事装備のほとんどをロシアから購入しており、中国と共にロシアの最大のエネルギー輸入国だ。これは、世界がロシアにウクライナでの殺戮を停止するよう求めているこの時期に、極めて好ましくない状況である。したがって、インドには8月1日から、25%の関税と上記の理由によるペナルティを支払ってもらうことになる[1]。 米国による新関税発動予定日の2日前[2]、トランプ大統領は関税交渉に対するインドの姿勢に露骨に不満を示し、このように一方的に関税率を突き付けた。そもそも、第一期政権時からインドのモディ首相とは固い友情で結ばれていることをトランプはこれまでも公言し[3]、モディもトランプ再選を誰よりも歓迎していた。今年2月にはモ
防衛費をめぐっては、重要なのが「金額」ないし「数字」なのか、「中身」なのかが議論になることが多い。近年の防衛費増額を批判する論者の間では、それが「金額ありき」によってもたらされたと理解されることが多く、金額を軸にした考え方自体が否定される[1]。「積み上げ」にすれば抑制できるはずだという前提のようだが、これが正しい根拠はない。積み上げれば予算要求がさらに大きくなる可能性も考慮する必要がある。 他方、2022年以降の防衛費の大幅増額を推進してきた政府・与党も、この過程は「金額ありき」ではなく、必要な中身を積み上げた結果だと主張してきた[2]。2025年1月に発足した第2次トランプ政権が、日本に防衛費増額を求めてくるのではないかという文脈では、「金額ありきではなく中身」だと繰り返している[3]。これは、現状以上の増額を牽制する観点である。 「金額ありき」は、防衛費増額の賛成派にも反対派にも嫌わ
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI[通称アスピー])は、オーストラリアでも米豪同盟派として知られている研究所である。このASPIのピーター・ジェニングス所長が、昨年7月、オーストラリアン紙に投稿したコラムが話題になった。それは、"With Trump at Large, Australia needs a 'Plan B' for Defense1と題されていた。その意味するところは明らかだ。もはや、オーストラリアは米豪同盟に安住しきっていることはできない。米豪同盟を超えて、「プランB」を考える必要があるという主張だった。同盟派のジェニングス所長の主張だっただけにインパクトがあった。 ジェニングスは、こう主張する。国防計画において、自国の安全保障政策の根幹を揺るがすような可能性は、実は封じ込められてしまう傾向にある。よって、米豪同盟が本格的に揺らいだ時、またはアメリカがアジア太平洋地域
第二次トランプ政権が発足して一か月が経過したが、大統領令が頻発されていることが大きな注目を集めている。トランプ政権の発令した大統領令をまとめているCNNのサイトによれば、政権発足ちょうど一か月の2月20日朝8時45分の時点で、トランプは108の大統領令を発令しているという1。トランプ大統領は、自ら最重要課題と位置付けている不法移民問題についても、大統領令を発令している。そこで本論稿では、まず前半で不法移民問題を素材としてアメリカの大統領令の効果とその限界について考察し、後半で不法移民政策に関わる諸課題を検討してみることとしたい。 大統領令を用いた政権運営について、日本では大統領の行動力と決断の速さを称賛する声もあるようだ2。 だが、大統領が大統領令を頻発していることは、必ずしもその政権運営がうまくいっていることを意味するのではない。なぜならば、大統領令が頻発されている状況は、大統領の強さで
トランプ大統領が、中国、メキシコ、カナダを対象とする関税引き上げについて語る時、その理由として挙げるものの一つしてアメリカに不法に輸出される合成麻薬がある。この合成麻薬というのは主にフェンタニルというものである。 以前のコラムでも書いているように、フェンタニルというのはオピオイドの一種である。オピオイドはケシの実から生成される麻薬性鎮痛薬や、化学薬品から作られそれと同様の作用を示す合成鎮痛薬の総称である。ケシから採取されるアヘンから生成されるモルヒネは日本でも広く知られている。半合成オピオイドにはオキシコドン等があり、フェンタニルは合成オピオイドに含まれる。 最初から違法に麻薬性鎮痛剤を入手する者もいるが、最初は処方薬であったものを必要以上に摂取することで常習性が生じる者も少なくない。多量の服用を続けることによって、日常生活にも支障をきたすようになり、中毒死に至るケースも出る。オピオイドの
2025年1月20日に第2次トランプ政権が発足する。トランプ本人が大統領に選出されると思っていなかった2016年の頃とは異なり、今回は大統領選から時間を空けずに閣僚を指名し始めており、省庁再編や規制緩和をはじめとする一部の政策については、政権発足直後から実行に移していくとみられる。国防長官候補ピート・ヘグセスや国家情報長官候補タルシー・ギャバードについては、上院共和党だけでなく、トランプ側近の間でも適性について疑義を呈する向きがあると伝えられている。両名が上院での指名承認の見通しが悪くなって、仮に上院休会中の任命で長官代行職に据えられる場合には、政治色の濃いリストラに乗り出して、安全保障担当官庁で大きな混乱が生じるとも限らない。一方、国家安全保障問題担当大統領補佐官マイク・ウォルツや国務長官候補マルコ・ルビオは、ワシントン界隈では比較的評判がよく、国防副長官には同省の運営に通じた手堅いベテ
最近、「ダイレクト・ライン」でロシアとウクライナの関係についての質問に対して、私は「ロシア人とウクライナ人はひとつの民族であり、一体である」と答えた。これらの言葉は、決して短期的な考えや現在の政治状況に促されたものではない。これは今まで何度も言ってきたことであり、私の信念でもある。だからこそ、私の立場を詳しく述べ、現在の状況に対する私の見解を共有する必要があると考える。 まず、私の考えでは、近年、ロシアとウクライナの間、つまり本質的に同じ歴史的・精神的空間である両者の間に生まれた壁は、私たち共通の大きな不幸であり、悲劇であるということを強調しておきたい。これらは何よりも、様々な時期に犯した我々自身の過ちの結果である。しかし、それはまた、常に我々の団結を弱体化させようとしてきた勢力による意図的な活動の結果でもある。使用されている手法は何世紀も前から知られており、何も新しいものではない。それゆ
トランプは、ロシア・ウクライナ間の停戦合意を実現し、中東紛争も収束させたいと、たびたび訴えてきた。できるだけ早く、ロシアとウクライナ双方による殺し合いを終わらせたいということも毎度強調している。出口が見えないまま、無期限に軍事援助を提供し続けるというバイデンの政策に対する忌避感だけではなく、利害不一致のために大規模な殺戮が続けられることに対する嫌悪感があるように思われるし、ノーベル平和賞を意識した言動の可能性もある。 トランプは、外交の文脈においては「アメリカファースト」という言葉よりも、「力による平和」という言葉を好んで使う。ここでいう「平和」は、第一義的にはアメリカの平和であり、アメリカが圧倒的な軍事力をもつことによって外敵からの武力攻撃を抑止することを意味するが、それはアメリカが関与している現在進行中の欧州と中東の武力紛争を終結させ、アメリカの関与を終わらせることも含んでおり、一国主
2023年6月の民間軍事会社ワグネルによるモスクワ郊外での反乱からおよそ一年後の2024年7月28日、マリ北部でワグネルの残党50名以上が反政府組織の襲撃を受け死亡した[1]。ワグネルは創立者プリゴジンの指揮下でシリア・ウクライナからアフリカへ版図を広げ、軍事支援から情報操作、選挙介入、鉱石採掘、そして飲食産業までと多岐に活動を展開してきた[2]。このハイブリッド戦の代表的な存在は、プリゴジン亡き後アフリカでどのように変革してきたのか。そしてそれは今後のアフリカの情勢にどのような影響を及ぼしていくのか。本稿は2023年後半以降の情報をもとにロシアのアフリカ介入の今後を読み解く。 ワグネルから「アフリカ部隊」へ ロシア政府にとって、ワグネルのような民間軍事会社は、人権侵害など国際法に触れる行為を犯しても公的責任を逃れられる利便性があった。しかしワグネルの活動が拡大し、その扱いをめぐって軍部と
11月5日に行われた2024年米大統領選挙は、予想外に短期間で決着がついた。大統領選挙は接戦状態にあったことから、筆者を含めて多くの識者が、選挙後に混乱が起こる可能性を指摘していた。大統領選挙の結果を決めるとされた接戦7州についてみると、たしかに州ごとの得票率の差は多くの場合は2%未満で接戦だった。だが、7州全てを共和党のドナルド・トランプがとった結果、勝者総取り方式の故に選挙人数で予想外の差がついた。出口調査の結果を見ると、9月、10月に投票先を決めた人は民主党のカマラ・ハリスに投票する比率が高かったものの(9月:54%対42%、10月:47%対40%)、前週に投票先を決めた人は42%対54%、直前の数日に決めた人は41%対47%で、トランプに投票した人が多く、選挙直前の動員の点でトランプ陣営の方が勝っていたのかもしれない1。 ハリスが敗北した理由については様々な仮説が提起されている。そ
(詳細)2016年10月25日開催/動画公開:2016年12月9日 The Honorable Cliff Stearns Former Member of the United States House of Representative (R-FL, 1989-2013) The Honorable Jason Altmire Former Member of the United States House of Representative (D-PA, 2007-2013) Dr. Toshihiro Nakayama (Professor, Keio University)
今年8月に、ここ「アメリカ現状モニター」で公開した拙稿の最後で、「ハリスが政治家として絶対に譲れないものは何なのか。なぜ検事から政治家になったのか。どうして大統領になりたいのか。「哲学」と「物語」が見えないまま、「反トランプ」目的のためだけに神輿に担がれることは、彼女のためにもアメリカの民主主義のためにも、望ましくない。シカゴの民主党大会でその真価が問われる」と書いた1。 しかし、民主党大会で十分にそれは可視化されず、ハリス陣営はその後の本選でも無理に可視化させない戦略をとった。そこからは、ハリスが3つの内的な悩みを抱えながら本選を強いられている姿が見える。①予備選を経ていないこと ②人種属性問題 ③ バイデン政権である。これらは相互に複雑に絡んでいる。 予備選挙のない日本ではアメリカの予備選は「予選」程度に思われることが少なくない。しかし、予備選は単純な勝敗以上の重要性がある。それは政策
筆者にとっては恒例の共和党支持者同窓会が8月に中西部アイオワ州で開かれた。今回も同じく、主流派、キリスト教右派、トランプ支持者のMAGA派、さらにリバタリアンとの会合である(前年の会合についてはこちらを参照)。 今回の最大の話題は、隣接州ミネソタの州知事が民主党副大統領候補に選ばれた件だったが、共和党内のゴシップは一通り包み隠さず共有し合う慣例で、今回もここに書きにくい話ばかりだった。「オバマが痩せているのは麻薬中毒に違いない」という類の滑稽な話から(ケニアのルオ族は痩せ型の遺伝子)、鋭い連邦政府批判まで彼らの議論には幅がある。議論は知的で陰謀論の飲み会ではない。主催者はプリンストン大学卒・イェール大学ロースクール出身の弁護士で、ロースクールではクリントン夫妻と同級生だったが党派は正反対だ。ティム・ウォルズについては「ハリスの父親同様、共産主義者だ」から「中国の代理人だ」まで、飛び出す情報
(前回論考から続く) 前回述べたようカマラ・ハリスの3つ目の悩みは「バイデン政権」の現職の責任者であるということだ。現職は新規の政策案を訴えると相手側に「それなら今、お前の政権でそれを実行すればいいだろ」と攻撃されるのは常だ。現職大統領なら実績を示した上で「さらに時間が要るのでもう1期」と反撃できる。しかし、副大統領は政権で何の力もないのに一蓮托生にされる。TVディベートで有利に運んだはずのハリス陣営が不愉快だったのはトランプの最後の一撃だった。 「彼女は、こうする、ああする、素晴らしいことをすべてするつもりだ、と言っていた。なぜ彼女はそれを実行しないのか?彼女は3年半も政権にいる。国境を修復するのに3年半あった。雇用や、私たちが話したすべてのことを実現するのに3年半あった。なぜ彼女はそれを実行しないのか?彼女は今すぐ退陣すべきだ」 党大会でのヒラリー・クリントンの登壇もハリスには可哀想だ
大統領選挙でハリスが勝利した場合、ティム・ウォルズはジョージ・H・W・ブッシュ副大統領(後に大統領)以来、中国に住んだ経験のある初の副大統領となる。「父ブッシュ」は米中国交正常化前に米中連絡事務所長として北京に赴任し「自転車に乗る大使」の異名もあるが、年齢はすでに50歳で外交的な駐在であった1。 ウォルズは25歳の若き教員として中国に住み中国人の教え子を受け持った。多感な時期の「国益抜き」の一市民の交流であり、人格形成に多大な影響を与えた。中国経験はウォルズの人生を定義する「物語」になった。ネブラスカ州の高校教員に戻ってからも、中国に生徒を送り出すプログラムを夫人と二人で作り上げ引率で中国を頻繁に訪れた。まさに生活に根ざした中国通で、米中双方に中国に絡んだ教え子がいる。 連邦下院議員になってからのウォルズはペローシ下院議長に抜擢されチベット訪問議員団の「案内役」も務めた。その中国経験には、
「物語候補」には熱狂と胡散臭さが同居する。オバマもそうだった。だが、それは「物語候補」の宿命であり、「物語」が前提になっていることの爆発力を毀損するほどの懸念材料ではない、はずである。「はず」というのは、強い「物語」を持つ候補者には、「苦悩」➡︎「成功」への脱皮方程式にモデルの違いが存在するからだ。オバマのケースで上首尾にいったからといって他の政治家でもそうとは限らない。 オバマの場合、「物語」の苦悩の核心は人種をめぐる苦境(根無草の多人種・多文化の悩み)だった。その末に、シカゴでのコミュニティ活動で黒人社会に包まれ、ハワイやインドネシアを捨てて「シカゴ人」になることを決める。また、白人祖父母に育てられ、アジア人や白人と恋愛してきたオバマは、サウスサイドの黒人女性ミシェルとの結婚により「はれてアメリカ黒人になることを選ぶ」。だからオバマの成功への「脱皮」は共感を集めた。 共和党副大統領候補
2024年は世界人口の半分以上が投票すると言われる「選挙イヤー」である。アフリカでも全54カ国のうち約3分の1にあたる19カ国で選挙が予定されている。近年アフリカ諸国では、過激派組織の台頭、クーデターの多発・再発、そしてマリなどの不安定地域から撤退した国連平和維持活動(PKO)や旧宗主国フランスに代わるロシアの進出などが顕著となっている。これらは民主制度の後退とも捉えられる。そうした状況のアフリカで、何が選挙の焦点となり、その結果はどのようなものが予測されるだろうか。そしてそれはアフリカの安定化と世界情勢にどのような影響を与えるだろうか。本稿では今年のアフリカでの選挙の動向と、地域紛争や国際政治との関わりを論ずる。 図1:2024年に選挙が予定されているアフリカ諸国 出典:Joseph Siegle and Candace Cook, “Africa’s 2024 Elections: C
日本とフィリピンは歴史的に緊密かつ友好的な関係を構築してきたが、防衛レベルの関係は近年になって加速度的に強化した[1]。2024年7月8日に行われた第2回日比安全保障閣僚会合(2+2)の結果について、日本の防衛政策にとって特筆できる事項は、部隊間協力円滑化協定(RAA: Reciprocal Access Agreement)への署名に加えて、防衛装備・技術協力、政府安全保障能力強化支援(OSA: Official Security Assistance)の継続と強化について合意したことだった。すでに日本はフィリピンに、2014年に見直された防衛装備移転三原則の初のケースとして、2023年10月にFPS-3ME対空監視レーダー・システム(Air Surveillance Radar System、以下「警戒管制レーダー」)[2]、2024年4月には移動式の警戒管制レーダーであるTPS-P1
長らくアメリカ民主党内でくすぶっていた新しい指導者への待望論は、バイデンという蓋が取れたことで溢れ出し、内部で混乱すると思われていた民主党がハリス支持で結束した。2019年暮れに民主党予備選から早々と撤退したハリスには、副大統領就任後もポジティブなイメージが乏しかったが、いまや党内にある種の熱狂の渦を巻き起こし、ヒトと資金を引き寄せている。民主党が担げる大統領候補の中で一番バイデンの選挙基盤を引き継ぎやすく、その意味で他の候補より勝算が相対的に高いと目されるハリスに民主党幹部や有力支持者らが相次いで支持を表明し、民主党の指名を獲得した。 勢いを得たハリスがティム・ウォルズを副大統領に指名し、トランプと渡り合えるのではないかという期待が高まって、一部の接戦州では巻き返しも伝えられているが、本選挙で勝てるかどうかは引き続き予断を許さない。ハリスが本選挙まで現在の熱狂を沸点で維持できるかどうかは
昨日までハリスの悪口しか言ってなかった民主党関係者が鮮やかなまでに一転して、ハリスが最高の大統領候補だと言い出したことは諸外国に戸惑いを与えている。ハリスがバイデンの手前、有能さを隠していたのか、ハリスの魅力に突然民主党とリベラル・メディアが目覚めたのか。一糸乱れぬ「切り替え」は唖然とするほどのものだ。だが、カマラ・ハリスへのバイデンからの大統領候補「禅譲劇」、いわばハリス一本化とハリス盛り上げ(ハリスをめぐる否定的言説のタブー化)は以下の3つの理由により成立している。 バイデンを最後まで支え続けた左派の民主党ハイジャック継続の計算 打倒トランプの接着剤効果(特に暗殺未遂による神格化とヴァンス指名) 予備選なし本選からの突如スタートによる全党およびメディアでの盛り上げ 先入観を排除しておく必要があるのは、候補者個人の実力と誰が候補者として民主党(あるいは党内イデオロギー的、政策的に多様な各
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