2008-08-25

ダメな俺を丸ごと受け止めてくれ症候群

オタク仲間の友人から突然告白されたことがある。正確には突然というわけではなかったのだけど、まさか告白してくるとは思っていなかったので、予想外という意味では突然と言ってもいい。人から告白されたのは当時30過ぎになる人生の中で初めてであった。

まず前提として、彼も私もかなり重度のオタクで、恋愛よりも恋愛シミュレーションうつつを抜かしている人種である。彼は恋愛経験皆無、私も毛の生えた程度といったところだろう。だいたいその年で独身彼氏無しというあたりで察して頂きたい。ただし私には他に好きな人がいて、フラグを立てようと必死になっている真っ最中であった。

不遜に聞こえるかもしれないけれど、彼に好かれているな、というのは分かっていた。清水の舞台から今にも飛び降りそうな文面で食事に誘われたり、熱心にメールを頂いていたりしたからだ。周囲の人々がニヤニヤと世話を焼きたそうにしているのにも気づいていた。ただ、まさか告白されるとは思えない程に、彼の態度はこれから私という30過ぎの女を落とそうとしている人間の態度ではなかったのである。確かに食事に誘ったり、メールをするという意味では積極的だと言えるのだろうが、それは形だけのことで、もっと大切な、自分を好きになって貰おうという姿勢に欠けているように思えた。

そもそも彼とはゲームアニメの話ばかりしていて、彼がどのような生活をしているのか、何を考えているのかは知らなかった。私自身、好きな人はいるものの見込みは少なく、彼を好きになれるものならいっそその方が幸せかもしれないと思い始めていた。繰り返すが30過ぎているのだ、それぐらい打算的になっても許して貰いたい。だから食事の際に少し水を向けてみた。

すると彼は食事の間中、俺はこれまでの人生でこんなダメなことがあって、人と上手く付き合えなくって、オタクで収入も少ない的なことを延々と私に話し出したのである。何なのだこれは。私は彼から「こんな俺どうですか?」とプレゼンテーションを受けている立場ではなかったのだろうか。何故、営業マンから欠陥点ばかりを聞かされなければならないのだろうか。別に取り繕えと言っているわけではない。せめて彼といることで何か楽しいことが起きそうな、安らげそうなプラス面を見せて欲しかった。恋人マイナス面を見せても受け止められるのは、まず先に「好きだ」という感情があってのことだ。ヘタレが好きなのは2次元限定である。以降の彼との食事は、全くもって楽しくなくなってしまった。

これが噂の「ダメな俺を丸ごと受け止めてくれ症候群」なのか。言っておくがそんな男性が好きな女性母親と一部のドM女性しかいない。数度の食事を重ねて、彼は私の「一生懸命なところが好き」(主に乙女ゲー方面に)と言ってくれたのだが、きっとそれが総てではないのだろう。交友範囲の中で唯一の女で、オタク趣味を認めてくれて、母親の代わりでもしてくれそうなのが私だったからじゃないのか。そんな捻くれた見方をしなければならない程に悲しかった。私自身、きっと無理だろうと思いつつも、好きな人に営業をかけている時期だったので余計に悲しかった。

好きな人から好きになって貰うために、努力や気遣いが必要だということを私は知っている。「彼とは素の自分で付き合える」「彼といると楽」と言っている友人が、その関係を維持するために「下手くそ」だと言えなかったり、自分が疲れていても彼の愚痴を聞いたりしていることを知っている。それは彼を想えばこそだろう。思い返してみれば、結婚40年目になる両親ですらそうだ。「努力と気遣いが必要な恋愛関係は本当の恋人同士ではない」と言える人は幸せだ、そんな対人関係を築けているということなのだから。

おそらく彼と私が付き合ったところで、心が豊かになるような生活はおくれなかっただろう。努力する気がない人に対して努力をし続けられるような母性は、私にはなかった。ゲームの話が出来るのは楽しいかもしれないが、恋人から得るものがそんなものだけというのは寂しすぎる。結局、好きな人がいると言ってお断りしたのだが、純情な○○青年の想いをすげなく断った身の程知らず、という評判だけが回り回って好きな人にまで届いたようで、その後、好きな人を口説き落とすまでさらに1年に及ぶ努力をしなければならなかったことを追記しておく。

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