ダイヤモンド半導体、電子回路で動作確認 佐賀大学
佐賀大学の嘉数誠教授は人工ダイヤモンドを使った半導体デバイスを組み込んだ電子回路を作製した。190時間以上動作しても劣化は見られず、電流のオンとオフを切り替える速さは10ナノ(ナノは10億分の1)秒を切ることを確認した。大電流を制御するパワー半導体として、電気自動車(EV)や次世代高速通信規格「6G」向けに適用できるとみて実用化を目指す。

嘉数教授は2022年、ダイヤモンド基板に二酸化窒素のガスを吹きつけ、酸化アルミニウムの膜で保護することで半導体デバイスを作製する手法を開発した。出力電力は1センチ角あたり875メガ(メガは100万)ワットと、ダイヤモンド半導体として世界水準の性能を出した。パワー半導体として期待される窒化ガリウムの約2090メガワットに次ぐ数値を出した。
ただ、電子回路に組み込んだ場合、素子が劣化しやすく、長時間の動作は難しく、実用化は難しいとの報告が他の研究機関から出ていた。
そのため、嘉数教授はダイヤモンドの半導体デバイスに金のワイヤを接続する手法を新たに開発し、電子回路を作製した。パワー半導体に求められる電流のオンとオフの切り替えの速さは10ナノ秒を切った。
電子回路を作製したことで、実用化に向けた性能試験もしやすくなった。従来は半導体デバイスに直接短針をあてるなどして性能を計測していた。

ダイヤモンド製の半導体の電力効率は理論上はシリコン製の5万倍とされ、耐久性や放熱性も高い。放射線に長時間さらされても誤作動や劣化がしにくい。人工衛星などの宇宙分野でも活用できるとみている。高速で動作することから、通信基地局などへの適用で有利になる。
実用化を狙うパワー半導体の分野では、窒化ガリウムや炭化ケイ素を使うタイプの開発が進んでいる。嘉数教授は「用途は異なり、競合しない」とみる。
ただ、今回は数ボルトの低電圧による試験で得られた結果になる。パワー半導体に求められる数百ボルトの電圧でも同様の性能が得られるかは現時点で分からない。190時間以上の稼働時間でも劣化しなかったものの、実用レベルではより長時間の数値が求められる。ダイヤモンドの加工コストの課題もある。今後、性能試験を重ねてこうした問題の解決策を探る。
嘉数教授は「実際に機器に組み込むにはモジュール化が必要だ。性能試験や周辺技術の開発で連携できる企業を探している」と話す。5年後までにパワー半導体としてサンプルの提供、10年後までに量産化できる技術にめどを付ける。
(鈴木卓郎)














