アルツハイマー病の原因、「銅を含む薬」で42%減少

アルツハイマー病の原因、「銅を含む薬」で42%減少
Image: Kent Hasegawa-generated with Flow

記憶や思考、行動に問題が起きる脳の病気、アルツハイマー病。これは認知症の原因の約7割を占めるともいわれます。

治療を目指して実験室でさまざまな研究が試みられているなか、オーストラリアのモナッシュ大学から明るいニュースが届きました。

研究チームが、銅を含む化合物「Cu(ATSM、銅(II)ジアセチルビス(N⁴-メチルチオセミカルバゾン))」(以下、「Cu(ATSM)」)がアルツハイマー病に関わる有毒なタンパク質を減少させ、長期的な空間記憶を改善することを発見たのです。

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研究成果は学術誌『ACS Chemical Neuroscience』に掲載されています。

そもそもアルツハイマー病はどんな状態か

アルツハイマー病は、「アミロイドβ(ベータ)」という有毒なタンパク質が脳に蓄積することで引き起こされます。

健康な脳では、血液脳関門(脳組織と毛細血管の間にある関所のような仕組み)を通じて、このタンパク質を血液中へ排出しています。ところがアルツハイマー病は、その排出を担うポンプが著しく弱まってしまう。言わば、脳の排水口が詰まってしまった状態です。

つまり、問題の本質は「毒が増える」ことより先に、「排水口の機能不全」にある。

今回のモナッシュ大学の研究チームが注目したのも、まさにそこです。機能不全におちいっているほうを修復させるべく、脳の血管を活性化することを試みたのです。

原因タンパク質が42%減少!

そこでマウスモデルに銅化合物のCu(ATSM)を用いると、ポンプの量を24.1%増やすことに成功。56日間の投与で、有毒なアミロイドβが42%減少し、空間学習能力が約44%向上したといいます。

さらに、Cu(ATSM)が血液脳関門の修復に役立つだけでなく、「ミクログリア」と呼ばれる脳自身の免疫細胞を活性化させる可能性にも触れています。脳内の毒性を消費・分解する能力を高めることも期待できるとは、Cu(ATSM)やるじゃん。

「でも、これってまだ動物実験でしょ?」というツッコミは、ごもっとも。実際この研究はまだ前臨床段階です。

ただ、Cu(ATSM)は、すでにパーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)を対象とした臨床試験にまで進んでいる化合物で、安全性の評価もある程度済んでいます。つまり、人間での試験に移行しやすい"準備のできた候補"でもある。

研究チームは今後、タンパク質がどういったルートで脳から排出されるかを詳しく追跡する予定。その上で今回の成果は「生体金属療法を研究する上で、強固な基盤となるもの」とまとめています。

アルツハイマー病を含む認知症は、モナッシュ大学のあるオーストラリアでは最近、「死因の第1位」になったのだそう。世界でも深刻な健康課題ですし、高齢化が進む中で有効な治療法を見つけることの緊急性は増すばかりです。

日本でも当然、喫緊の問題ですから、銅が脳の詰まりを直しちゃう日を、首を長くして待ちたいところ。

今日はこの銅化合物「Cu(ATSM)」、名前だけでも覚えて帰ってください。

Source: Monash University, EurekAlert!

訂正[2026/07/14]化合物の正式名称を修正しました。

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