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【実は冬もおすすめ!】鍾乳洞で巡る日本の地底世界 関東エリアも充実の冒険スポット8選

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2025.12.29

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秋芳洞の「百枚皿」=photo by Sylvia_Adams / iStock / Getty Images Plus

秋芳洞の「百枚皿」=photo by Sylvia_Adams / iStock / Getty Images Plus

    地上の喧騒(けんそう)を離れ、ひんやりとした空気に包まれる鍾乳洞。まるで別世界に迷い込んだかのような非日常体験ができるこの場所は、夏は涼しく、冬は過度に冷え込まないという快適な環境で、季節を問わず楽しめる観光スポットとして人気です。この記事では、一度は見ておきたい日本国内の絶景洞窟から、都心から日帰りもしくは1泊2日で出かけられる関東の名所まで、神秘に満ちた地底世界の魅力をたっぷりとご紹介します。

    鍾乳洞とは 悠久の時が育んだ神秘的な地下世界

    鍾乳洞とは、石灰岩に雨水などが長い年月をかけて浸透し、溶かされてできた洞窟のこと。

    内部には鍾乳石や、タケノコのような形をした石筍(せきじゅん)など独特の岩石が見られ、その神秘的な景観が訪れる人々を魅了します。

    形成には数万年から数十万年という途方もない時間がかかるとされ、ときには古代人類が住居として利用した形跡として、土器や動物の骨などが見つかることもあります。

    沖永良部島の洞窟=photo by exs / iStock / Getty Images Plus
    沖永良部島の洞窟=photo by exs / iStock / Getty Images Plus

    鍾乳洞の魅力の一つは、その安定した環境です。多くの洞窟で内部は年間を通して10~15度前後と一定の温度に保たれており、真夏の猛暑日には涼を求める避暑地として、冬には風がほとんど吹かず寒さをしのぎやすい、快適な観光スポットとして楽しめます。外気温に左右されない環境で、一年中いつ訪れても神秘的な景観に出会えます。

    日本を代表する鍾乳洞 まずは押さえたい絶景の地底世界

    龍泉洞(岩手県)

    龍泉洞の地底湖=photo by gyro / iStock / Getty Images Plus
    龍泉洞の地底湖=photo by gyro / iStock / Getty Images Plus

    岩手県岩泉町にある龍泉洞(りゅうせんどう)は、洞内に生息するコウモリとともに、国の天然記念物に指定されています。

    最大の魅力は、透明度抜群の地底湖が青く輝く神秘的な光景。第三地底湖は水深98メートルにも達し、吸い込まれそうなほど美しいドラゴンブルーの色彩を見せてくれます。洞内で公開されている部分は約700メートル、確認されている長さは約4キロメートルで、現在もその全容を把握すべく調査が続けられています。

    周辺には龍泉洞の入洞券で見学できる龍泉新洞科学館や、龍泉洞の地底湖から流れる地下水が湧き出る清水川、グランピングが楽しめる岩泉CYMBALS(シンバルス)など、岩泉の自然を楽しめるスポットも点在。アクセスは、JR盛岡駅からバスで約2時間です。

    【基本情報】
    営業時間:10月〜4月 8:30~17:00、5月〜9月 8:30〜18:00
    料金:大人(高校生以上)1,100円、小中学生550円
    冒険難易度:★☆☆(足場は整備されており、歩きやすい。第三地底湖から先の階段は約270段あり、非常に狭く折り返せないため、足腰に自信がない方は注意)
    公式サイト:https://www.iwate-ryusendo.jp/

    あぶくま洞(福島県)

    あぶくま洞=写真:朝日新聞社
    あぶくま洞=写真:朝日新聞社

    福島県田村市にあるあぶくま洞は、約8,000万年という悠久の時を経て形成された鍾乳洞。公開されている部分は約600メートル、全長は4,200メートル以上あり、その洞内には多種多様な興味深い鍾乳石が存在します。

    見学ルートは2種類。一般コースでは、洞内最大のホール「滝根御殿(たきねごてん)」や、個性的な鍾乳石が観察できる「竜宮殿」、色が移り変わる調光システムで幻想的にライトアップされている「月の世界」など、あぶくま洞の見どころを満喫できます。さらに冒険気分を味わいたい方は、より狭く険しい道を進む探検コースもおすすめ。アクセスは、JR磐越東線(ばんえつとうせん)の神俣駅からタクシーで約10分です。

    【基本情報】
    営業時間:
    4月1日~6月30日 8:30~17:00
    7月1日~9月30日 8:30~17:30
    10月1日~11月30日 8:30~17:00
    12月1日~3月12日 8:30~16:30
    3月13日~3月31日 8:30~17:00
    料金:大人(高校生以上)1,200円、中学生800円、小学生600円、探検コースは+300円
    冒険難易度:★★☆(階段の上り下りが多く、全部で約300段。探検コースに進む場合はさらに足場が悪く、天井も低くなるため注意)
    公式サイト:https://abukumado.com/

    秋芳洞(山口県)

    秋芳洞の「黄金柱」=photo by ziggy_mars / iStock Editorial / Getty Images Plus
    秋芳洞の「黄金柱」=photo by ziggy_mars / iStock Editorial / Getty Images Plus

    山口県美祢(みね)市の秋吉台国定公園内にある秋芳洞(あきよしどう)は、日本屈指の大鍾乳洞として知られています。公開されている観光コースは約1キロメートルに及び、総延長は11.2キロ以上。温度は年間を通じて約17度と安定しており、夏も冬も快適に見学できます。

    最大の見どころは、百枚皿(ひゃくまいざら)と呼ばれる、棚田を思わせるような階段状の石灰華段丘(せっかいかだんきゅう)。通常の入洞料に加え、追加料金でよりハードな行程を進める秋芳洞冒険コースもあるため、体力に自信のある方は挑戦してみるのもおすすめ。JR新山口駅からバスで約40分というアクセスのよさも魅力です。

    【基本情報】
    営業時間:3月~11月 8:30~17:30 閉洞18:30、12月~2月 8:30~16:30 閉洞17:30
    料金:大人(高校生以上)1,600円、中学生1,300円、小学生850円
    冒険難易度:★☆☆(難易度の高いコースもあるが、通常の入洞料で見学する観光コースは足場が整備されており、歩きやすい)
    公式サイト:https://karusuto.com/spot/akiyoshido/

    龍河洞(高知県)

    龍河洞の「西本洞コース」沿いを流れる地下水=株式会社龍河洞みらい提供
    龍河洞の「西本洞コース」沿いを流れる地下水=株式会社龍河洞みらい提供

    高知県香美(かみ)市にある龍河洞(りゅうがどう)は、1億7,500万年をかけて形成された、日本でも屈指の長い歴史を持つ鍾乳洞です。地質学的な価値に加え、洞内からは弥生時代の生活跡が発見されており、古代人の痕跡を見られる貴重な場所となっています。「日本三大鍾乳洞」の一つともされています。

    見学ルートは観光コース、冒険コース、西本洞コースの3種類。狭い岩の間を這(は)って進む冒険コースは要予約。ヘッドライトの光を頼りに地下水の流れを感じる西本洞コースは期間限定となっているため、事前に確認し、体力や目的に応じて選ぶのがおすすめです。

    洞内の見どころは、「神の壺(つぼ)」と呼ばれる弥生時代の土器と鍾乳石が一体化した珍しい遺物。アクセスは、岡山からJR土讃線特急で土佐山田駅(約2時間15分)、そこからバスで約20分です。

    【基本情報】
    営業時間:2月~10月 8:30~17:00(最終入洞時間)、11月~1月 8:30~16:30(同)
    「観光コース」料金:大人(高校生以上)1,500円、中学生800円、小学生600円
    「冒険コース」は1人+2,000円(管理料含む)
    「西本洞コース(4/29~9/30限定)」は1人+1,500円(同)
    ※いずれも2026年1月からの新料金

    冒険難易度:★★☆(冒険コースは這って進む行程があるため、さらに難易度が高い。観光コースも、狭く折り返せない場所あり)
    公式サイト:https://ryugadou.or.jp/

    ※つなぎ服や長靴などの有料レンタルもあります

    関東の神秘 個性が光る鍾乳洞探検

    日原鍾乳洞(東京都奥多摩町)

    ライトアップされた日原鍾乳洞=写真:朝日新聞社
    ライトアップされた日原鍾乳洞=写真:朝日新聞社

    東京都奥多摩町にある日原(にっぱら)鍾乳洞は、都心から日帰りで出かけられる貴重な秘境です。奥多摩の大自然に囲まれた山間部にあり、道中からすでに非日常的な雰囲気が漂います。

    洞内は「さいの河原」「死出(しで)の山」「三途(さんず)の川」など異世界のような名称で呼ばれるスポットが満載で、幻想的な雰囲気でライトアップされています。周辺には奥多摩湖や日原渓谷など自然を満喫できる名所も豊富で、鍾乳洞探検と合わせて1日たっぷり楽しめます。

    アクセスは、JR青梅線の奥多摩駅からバスに乗り終点の日原鍾乳洞で下車、徒歩約5分です。

    【基本情報】
    営業時間:4月~11月 9:00~17:00、12月~3月 9:00~16:30
    料金:大人(高校生以上)900円、中学生700円、小学生600円
    冒険難易度:★★☆(非常に狭く、足元や頭上に注意が必要な箇所あり。滑りやすく、急な上り階段を含むルートも。両手を空けた状態で歩くと安全)
    公式サイト:http://www.nippara.com/nippara/syounyuudou/syounyuudou.html

    不二洞(群馬県上野村)

    群馬県上野村にある不二洞は、いまだ全容が明らかになっておらず、「迷宮」のような鍾乳洞です。公開されている部分は約600メートル、把握できている全長は約2.2キロメートルにも及び、関東最大級の規模を誇ります。

    洞内は、鉱物が地下水と反応しさまざまな色彩を見せる「五色(ごしき)の雲」、七度なでて願いをかけるとかなうと言われている石柱「閻魔(えんま)の金剛杖」、仏像のように石筍が立ち並ぶ「五百羅漢(ごひゃくらかん)」など、仏教にちなんだ名前で呼ばれるスポットが数多くあります。

    鍾乳洞を出ると、周辺には巨大つり橋の上野スカイブリッジ、グランピングが楽しめるまほーばの森など、自然を満喫できるスポットも豊富。アクセスは、JR高崎線で新町駅まで行き、バスを乗り継いで「上野村役場入口」を目指します。都心から片道4時間ほどで、不二洞にたどりつきます。

    【基本情報】
    営業時間:9:00〜16:30(冬季12月から3月中旬まで9:30〜15:00)
    料金:大人800円、小学生500円
    冒険難易度:★★★(入り口までの坂道や洞内の高低差などが急なため、体力に自信がある方におすすめ)
    公式サイト:https://tenkukairou.com/fujidou/

    橋立鍾乳洞(埼玉県秩父市)※冬季は閉鎖

    武甲山の西側にある橋立鍾乳洞=写真:朝日新聞社
    武甲山の西側にある橋立鍾乳洞=写真:朝日新聞社

    埼玉県秩父市にある橋立(はしだて)鍾乳洞は、国内でも珍しい縦穴型の鍾乳洞。洞内の長さは約140メートルと比較的コンパクトですが、内部は鍾乳石や石筍、石柱などが多く見られます。なお、内部は撮影禁止となっているため、その神秘的な光景は目に焼き付けて持ち帰ることになります。冬季は閉鎖となりますのでご注意下さい。

    鍾乳洞と合わせて見学したいのが、直立した大岩壁の下に食い込むように建てられている橋立堂。観音堂には本尊・馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)が安置されており、秩父札所28番としても知られています。アクセスは、秩父鉄道の浦山口(うらやまぐち)駅から徒歩約15分。秩父観光の一つとして組み込むのもおすすめです。

    【基本情報】
    営業期間:3月〜12月上旬まで(冬季は閉鎖)
    営業時間:8:30〜16:30(入場は16:10まで) 
    料金:大人200円、子供100円
    冒険難易度:★★☆(狭い場所やアップダウンが激しい場所があるため、体力に自信がある方におすすめ)
    公式サイト:https://www.chichibuji.gr.jp/spot/spot-syousai80/ (秩父観光協会)

    大岳鍾乳洞(東京都あきる野市)

    大岳鍾乳洞の出入り口。右に曲がって一周すると左の出口に戻ってくる=写真:朝日新聞社
    大岳鍾乳洞の出入り口。右に曲がって一周すると左の出口に戻ってくる=写真:朝日新聞社

    東京都あきる野市にある大岳(おおたけ)鍾乳洞は、東京都天然記念物に指定されています。全長は約300メートルで、洞内には「石筍殿」「ビーナス殿」などと呼ばれるスポットがあり、幻想的な世界を垣間見ることができます。

    ルートは通常コースとチャレンジコースがあり、どちらもヘルメットをレンタルして、探検家気分で進みます。チャレンジコースは天井が低く、中腰の姿勢が続くことも。体力を要するスポットですが、そのぶん冒険好きにはたまらない達成感があります。アクセスは、JR武蔵五日市駅からバスに乗り、大岳鍾乳洞入り口で下車。都心から片道2時間ほどでたどりつきます。

    【基本情報】
    営業時間:9:00~16:00(季節や天候等により変更あり)
    定休日:木曜日(祝日の場合は営業)
    料金:大人(高校生以上)700円、小中学生500円
    冒険難易度:★★☆(ヘルメットをレンタルできるが、天井が低い場所があるため頭上に注意。大きな荷物は預けておくのがおすすめ)
    公式サイト:https://ootakecave.com/page1.html(大岳キャンプ場)

    鍾乳洞探検を楽しむための服装や注意点

    服装の選び方

    鍾乳洞探検の基本は、動きやすく汚れてもいい服装です。洞内は狭い場所や岩肌に触れる場面も多いため、引っかかりにくい素材の服を選びましょう。ジーンズや運動着など、伸縮性があって丈夫な素材がおすすめです。

    また、外との気温差にも注意が必要です。夏場は外が暑くても洞内は涼しく、逆に冬場は洞内の方が暖かく感じることがあります。羽織るものや薄手のジャケットを用意しておくと、温度調節がしやすく快適に過ごせます。

    靴選びも重要なポイントです。洞内は足場がぬれて滑りやすい場所もあるため、グリップ力のあるスニーカーやトレッキングシューズが推奨されます。汚れてもいい靴を選ぶことも大切です。

    大きな荷物は持ち込めない場合がほとんどです。入り口付近にロッカーが用意されていることがあるため、必要最小限の荷物で入洞してください。替えの靴下やタオルがあると、万が一足元がぬれた場合も快適に過ごせます。

    鍾乳洞を巡る際の注意点

    鍾乳洞内は高低差や狭い場所、滑りやすい場所が多いため、体調に不安があるときは無理をせず、別の機会に訪れることをおすすめします。足腰に負担がかかる場面も多く、特に天井が低い場所では中腰の姿勢で進まなければならないこともあります。

    また、洞内の石や生き物を持ち出す行為は厳禁です。鍾乳洞は長い年月をかけて形成された貴重な自然遺産であり、一つひとつの石や生態系を守ることが、次世代に美しい景観を残すことにつながります。鍾乳石を折ったり、傷を付けたりする行為も禁止です。

    日本各地に点在する鍾乳洞は、それぞれが独自の魅力を持っています。太古の地球が生み出した神秘の世界を、ぜひ自分の目で確かめてみてください。

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