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労働者はAI革命をどうやって生き延びるか?

産業革命においてラッダイト運動が起こったように、いまやAIの驚異的な進歩によって仕事が奪われる恐怖のなかで、わたしたちは「生活を守るための戦い」をどのように始めたらいいのだろうか。
課題はAIがどこに向かうかを理解することだけでなく、制御する可能性をすべて失う前にその方向性を定めることだ。
課題はAIがどこに向かうかを理解することだけでなく、制御する可能性をすべて失う前にその方向性を定めることだ。ILLUSTRATION: JACK SMYTH/SOURCE PHOTOGRAPH: GETTY

1812年4月12日の早朝、大勢の男たちがローフォールズ工場へと迫っていた。ウェスト・ヨークシャーのスペン川沿いにある4階建ての石造りの建物だ。この一帯はブロンテ姉妹ゆかりの土地で、荒涼とした湿原、険しい谷、窪地に点在する小さな町を特徴とする風景が広がっている。数時間前に湿原に集結した男たちは、マスケット銃、棒、手斧、重い鍛冶屋のハンマーなどで武装していた。

工場に着くと、先頭の者たちが窓を破って侵入し、一部は暗い工場内に向けて発砲した。しかし、工場主のウィリアム・カートライトには備えがあった。

それまでの12カ月間、イングランド中部と北部の繊維工場を襲撃の波が襲っていた。騒乱はノッティンガムシャーで始まった。靴下編み工たちが雇い主の工場に押し入り、最新の編み機を破壊したのだ。

編み機のせいで賃金が下がり貧困に陥った、というのが彼らの言い分だった。同じような襲撃が繊維製造業の中心地であったランカシャーに拡がり、さらに工場主が羊毛布の起毛および最終的な裁断、要するに古くから行なわれてきた「仕上げ」の工程で機械化を推し進めていたヨークシャーにも波及した。

何世紀にもわたって、この技術を実践する職人は「剪毛工」あるいは「裁断工」などと呼ばれ、職人内でも聖職者のような存在とみなされながら、チーゼルの果穂で起毛し、手持ちの鋏で布を仕上げる儀式的な作業を、父から息子へと受け継いできた。そこに機械がやってきた。冷たい金属ローラーをもつ起毛機と、ひとりの男がクランクを回すだけで済む裁断機だ。まるで手回しオルガン奏者がそれまでの生活の終わりを告げる葬送行進曲を奏でるかのようだった。

産業資本主義への抵抗

カートライトは従業員とカンバーランド民兵隊の武装予備兵とともに工場で夜を明かしていた。当時、騒乱の中心地には数多くの軍事部隊が派遣されていて、カンバーランド民兵隊もそのひとつだった。襲撃が始まると、予備兵が発砲し、カートライトの部下たちが屋根から岩を投げ落とした。強固な抵抗に驚いた群衆はすぐに散り散りになったが、重傷を負ったふたりの若者を残していった。どちらも48時間以内に死亡した。検視官は「正当防衛による殺人」との評定を下した。

翌13年1月、ヨーク城で14人の裁断工が暴動と機械破壊の罪で裁判にかけられた。それまでにすでに、議会は新たに機械破壊法を制定し、これを死刑に値する犯罪と定めていた。裁判所は一部の被告を無罪放免としたが、5人を有罪と認定した。ほかの裁判でも9人が有罪判決を受けた。

1月16日、ヨークシャーの処刑人が死刑を宣告された14人全員を絞首刑に処した。ある目撃者は「処刑された者のうち誰ひとりとして、自分がどんな犯罪を理由に死ぬことになったのか、正しく理解していなかったようだ」と記録している。

「ラッダイト」という用語の起源は明らかではない。一部の記録には、1779年に編み機を破壊したとされるネッド・ラッドという繊維工に由来すると記載されている。戦場で命を落とした9世紀のアングロサクソン君主、ルデカ王の伝承に由来するという説もある。

起源がどうであれ、多くの機械破壊者は「ラッド将軍」を自分たちの指導者とみなした。ローフォールズ襲撃の数週間後、別の工場を所有するウィリアム・ホースフォールが射殺された。ホースフォール暗殺後に送られた手紙は、「ローフォールズ包囲戦で倒れた2名の勇敢な若者の死に対する報復」を讃えていたが、その冒頭は「ラッド将軍の命令により」で始まっていた。

ナポレオンと戦争中だった英国政府は、ラッダイトを1790年代のフランス革命期に革命を主導したジャコバン派の思想に染まった暴徒集団と断じ、残忍な弾圧で応じた。しかし、この反応は根本的な誤解から生じていた。

ラッダイト運動は革命などには興味がなく、熟練労働者の生活を脅かす産業資本主義に抵抗する防御反応だった。ラッダイトは技術をやみくもに否定したのではなく、その行動には明確な論理──本質的に保守的な論理──があった。

1867年まで、英国ではごく一部の国民しか選挙権をもっていなかった、つまりラッダイトには自分たちを代表する政治家がいなかったため、暴力的な抗議が唯一の選択肢だと結論づけたのだ。「工場を燃やしたり人の財産に放火したりすることが正しくないのはわかっているが、飢えが本当はやりたくないことをやるように強いる」と、あるヨークシャーの裁断工が書いている。「衣類や家財を質に入れるなど、生きるためにあらゆる努力を試みた。だからいま、最後の闘争の瀬戸際にいるのだ」

現代版ラッダイトとAI

人工知能(AI)に対する警戒が世界に広がるにつれて、ラッダイトへの関心も高まっている。英国のポッドキャスト「The Ned Ludd Radio Hour」は自らを「テック懐疑主義、冷笑主義、不条理主義の週刊投稿」と説明している。

社会理論家ジェイサン・サドウスキーが共同ホストを務めるポッドキャスト「This Machine Kills」も、同様のテーマを扱っている。サドウスキーは新著『The Mechanic and the Luddite(機械工とラッダイト)』[未邦訳]のなかで、AIを始めとしたデジタル技術が労働者の管理・統制ならびに利益主導システムの強化を引き起こしているにもかかわらず、デジタル技術を偶像化する態度がその事実を覆い隠すことに繋がっていると論じている。「ラッダイトは技術、つまり未来がわたしたち人間のために働くことを望んでいる」と彼は『Guardian』に語った。

テクノロジージャーナリストのブライアン・マーチャントも『Blood in the Machine: The Origins of the Rebellion Against Big Tech(機械のなかの血:ビッグテックへの反乱の起源)』(2023年)[未邦訳]で同様の主張を展開している。元祖ラッダイトの鮮やかな描写と、アマゾンやウーバーなどといった現代のテック巨大企業への告発を組み合わせて、マーチャントは現在の自動化の波を労働と権力を巡る何世紀にもわたる闘争の一部として描き出す。

「働く人々は、AI、ロボット工学、ソフトウェア自動化など、新たなかたちの労働節約技術を見つけて自分たちを置き換えようとしている起業家、テック独占企業、ベンチャーキャピタル企業をにらみつけている」とマーチャントは書いている。「働く人々は再び、機械に仕事を奪われる窮地に立っている」

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最近では、かつては自動化の影響を受けないとされてきたホワイトカラーも含め、大量の職が失われると予想する調査結果が公表されたこともあり、雇用に対するAIの影響に関する警鐘がますます大きく鳴らされるようになった。

広く引用されているマッキンゼーのレポート(2024年更新)は、生成AIなどの技術が「現状における従業員の労働時間の最大70%を占める業務を自動化する可能性がある」と推定している。以前のゴールドマン・サックスの分析は、生成AIの影響で全世界3億人のフルタイム雇用に相当する仕事が危険に晒される恐れがあると予測した。

すでに急激な減少が見られる職業のひとつがコンピュータープログラミングで、これはAIが特に得意とする分野だ。米国政府のデータによると、過去2年間でプログラミング職の4分の1以上が失われた。

一時期、経済に対するAIの影響は一般的に楽観視されていた。過去、経済学者は蒸気機関や電化などの主要な技術革新を生産性の向上とみなし、長期的に生活水準を改善するものと理解してきた。『ザ・セカンド・マシン・エイジ』で、MITの経済学者エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーは、AIとロボット工学が蒸気機関に似た役割を果たすと論じている。「デジタル技術が社会と経済にとって蒸気機関と同じくらい重要で変革的になるための主要な構成要素はすでに整っている」

当時、生成AIはまだ初期段階にあった。しかし、OpenAIがChatGPTを一般公開してから約6カ月後の23年5月に発表された論文で、ブリニョルフソン、同僚のマーティン・ベイリーとアントン・コリネクの3人は、そのうちのひとりがチャットボットを使って研究を加速させた様子を描写した。いくつかの単純な英語のプロンプトを入力すると、「システムは適切な経済モデルを提案し、モデルを実行するコードを書き、その作品のタイトル候補を作成できた。朝の終わりまでに、彼は自らの研究対象で1週間分の進歩を達成していた」

経済学者の生産性向上がより広い世界に大きな影響を与えるとは限らないが、著者らは機械工学、材料科学、化学、ロボット工学を含む複数の分野でメリットが得られる可能性があると強調した。「認知労働者の効率性が高まれば、技術の進歩が加速し、それによって生産性の向上ペースが──永続的に──速まる」と書いている。

彼らの論文に含まれていたチャートは、楽観的なシナリオの下でAIが20年以内に労働生産性とGDPを倍増させる可能性を示していた。

執筆陣は「パイが大きくなったからといって、必ずしも全員が平等に恩恵を受けられるわけではないし、場合によってはまったく恩恵を受けられない人もいるだろう」と認め、AIによる自動化の可能性について論じた研究をいくつか引用している。

それでもなお、以前の技術改革から得た教訓をもとに、失業した労働者も最終的には新たな雇用を見つけるだろうと示唆した。「雇用破壊は常に雇用創出によって相殺されてきた」

しかし最近、一部の著名な経済学者がより暗い見解を示しつつある。MITの経済学者でノーベル賞受賞者のダロン・アセモグルは12月の「MIT News」で、AIの使用が「自動化用途に偏り、労働者に専門知識と情報を提供する用途にはあまり使われていない」と語った。

その直後の記事では、AIが意思決定と生産性を改善する可能性があると認めたが、「絶え間なく業務と雇用を排除し、情報を過度に集中化して人による探究と経験的学習を阻害し、少数の企業による大衆生活の支配を可能にし、巨大な不平等と地位格差をもつ二層社会を創出する」なら、AIは有害になると警告した。そのようなシナリオでは、AIは「わたしたちが知る民主主義と人間文明さえも破壊するかもしれない」とアセモグルは注意を促した。「わたしは、人類は実際にその方向に進んでいると恐れている」

最も劇的だった綿製品製造業

ラッダイトは本質的な真実を理解していた。工場というシステムが彼らの職人経済と生活を脅かしているという真実を。この変化に最も劇的なかたちで晒されたのは綿製品製造業であり、その最たる例としてマンチェスターのアンコーツ地区にあったマレー工場を挙げることができる。そこは8階建ての建物で、蒸気機関と1,200人を超える労働者を擁する巨大な工場だった。当時の新しい経済を象徴するこの複合施設をひと目見ようと、たくさんの訪問者が押し寄せた。

綿製品の製造はふたつの段階で構成される。繊維を糸に紡ぐ段階と、糸を布に織る段階だ。リチャード・アークライトやジェームズ・ハーグリーブスなどの発明家がさまざまな装置で紡績を機械化していったが、織り作業は複雑すぎて当時まだ自動化できていなかった。

この技術的な不均衡が実際には手織り機で作業する織工への需要を増加させ、職人の数は1780年から1812年のあいだに英国で37,000人から20万8,000人に増えた。1800年ごろまで、職人の多くは自宅で働き、収入もどんどん増えていった。

だが、それは一時的な猶予に過ぎなかった。1785年、エドマンド・カートライトが力織機(機械動力式の織機)の特許を取得した。当初は使いにくかったが、1800年代初頭に入ってランカシャーの一部の工場主が蒸気動力式の織機を採用し始めた。この発展と並行してナポレオン戦争中には世界的に繊維の需要が落ち込んだこともあり、織工たちの生活は崩壊した。1804年から10年にかけて、職工の収入は40%以上も激減した。

織工たちは最初、労働組合を禁止する抑圧的な法律にもかかわらず、平和的に反応した。最低賃金を求める13万の署名を集めて議会に請願したのだが、08年、下院はこれをきっぱりと拒否した。ランカシャーのあちこちでストライキと暴動が相次いだ。当局が大量逮捕で応じたことを受けて、織工たちは秘密委員会を結成し、密かに誓いを立てた。

12年3月、労働者が力織機を導入したストックポートの工場に火をつけたとき、暴動は激化した。翌月、群衆がミドルトンの工場を襲撃した際、3人の死者と複数の負傷者が出た。翌日も工場にやってきたものの侵入には失敗した労働者たちは、工場主の家を燃やした。軍との対立で少なくとも7人が死亡した。

冒頭で登場するヨークシャーのローフォールズ工場は、機械化が最も早かった工場のひとつだった。1810年の様子。

冒頭で登場するヨークシャーのローフォールズ工場は、機械化が最も早かった工場のひとつだった。1810年の様子。

Hulton Archive/Getty Images

これら一連のラッダイト抗議運動は、戦時の経済不況と生活費の高騰によって拡まっていた一般的な不満と合流し、多くの労働者が飢餓の瀬戸際に追いやられた。12年春と夏に、イングランド北部で食糧暴動が発生した。

工場主らは脅迫状を受け取り、そのうちのひとつは「General Justice(正義将軍)」と名乗る者からのもので、ストックポートの事業主に「あなたにいかなる危害も加えるつもりはないが、われわれは断固として裁断機と蒸気動力織機の両方を破壊するつもりである」と警告を発していた。

英国の支配階級が結束し、国家暴力の行使も辞さない態度を示したことで、ラッダイト運動は次第に勢いを失っていった。15年までに機械の破壊はほとんどなくなっていたが、職人たちは依然として悲惨な状況に置かれていた。最も苦しんだのは手織り機の職人で、賃金は一時期回復したものの、その後は永久に崩壊した。30年までに、00年の水準と比べて約80%も下がっていた。

ある証人が議会で、織物の村で飢えた家族を訪問したときの様子をこう語っている。「そこで暖炉の片側にいた非常に年老いた男性は明らかに死にかけていて、反対側にいた18歳ぐらいの若い男性は膝に子どもを抱いていた。その子の母親は亡くなって埋葬されたばかりだった」。20年から45年のあいだに、多くが貧困に陥り、織工の数は24万人から60,000人に激減した。

ラッダイトは何に抵抗したか

短命で終わったとはいえ、ラッダイト運動はのちに「社会問題」と呼ばれることになる問題を提起したため、歴史的には計り知れないほどの意義をもつ。価値を創造するのは労働者であるにもかかわらず、その労働者が市場の気まぐれと資本主義の特権階級に従属し続けるのだ。この経済システムの正当性をどう担保すればいいのか。この根本的な問題は、19世紀に工業化を経験したすべての国で政治の中心課題となった。

歴史家のエドワード・P・トムソンが60年前に『イングランド労働者階級の形成』で指摘したように、ラッダイトは単に新しい機械に反対していたのではない。「新しい機械、工場システム、あるいは無制限の競争、賃金の引き下げ、ライバルの締め出し、職人技術の劣化などを通じて、商売の慣習を破壊する資本家の自由」に抗議していたのだ。

ラッダイトは、公正、品質、相互義務という長年の原則を放棄した体制の道徳的・政治的権威を拒否した。英国は封建制と重商主義的資本主義の下で厳格な階級構造を保ち、貴族階級をその頂点に、商人と専門職(医師、牧師、弁護士など)を中間に、そして大多数を「下層階級」に置いていた。

だが、この社会階層に伴うかたちで労働市場規制──公式なものと非公式なものの両方──も敷かれ、そのおかげで階級間である程度の互恵性が保たれていた。熟練職には見習い制度課程を経た者だけが就くことができ、経済的に困窮したときには地方当局により、失業者とその家族が食糧、金銭、衣類のかたちで施設に収容されることなく受給できる「屋外救済」が提供されていた。

対照的に、産業資本主義は雇用主の権利を強調し、賃金規制であれ、雇用・解雇慣行であれ、政府による介入を疑いの目で見る自由市場イデオロギーをもたらした。トムソンが観察したように、ラッダイトは「自由放任を自由ではなく『汚い押しつけ』とみなした」。そして「ひとりまたは少数の人間による行為が大勢の仲間に明らかな害をもたらしてもかまわない」という考えを拒否した。

「チューリングの罠」

技術楽観主義者でさえ、AIはかつてラッダイトが指摘したのと同じような問題を提起すると認めている。

エリック・ブリニョルフソンは、2022年に『Daedalus』に掲載された論文内で、現在のおもな課題は人間の労働者を置き換えるのではなく、人間の努力を拡張する方向にAI開発を導くことだと主張した。そして、「AIが人間の能力を拡張し、人々が以前はできなかったことを可能にするとき、人と機械のあいだに補完関係が成立する」と書いた。「補完性は、人間が価値創造に不可欠であり続け、労働市場と政治的意思決定において交渉力を保持することを意味する」

ここまでは純粋な希望的観測だ。だが、AIが人間のスキルを完全に自動化した場合には、「機械は人間の労働のより優れた代替物になる」とブリニョルフソンは警告した。その一方で、「労働者は経済的・政治的交渉力を失い、AI技術を支配する者にますます依存するようになるだろう」。この環境では、AIを所有し開発するテック巨大企業が巨額の富と権力を集める一方で、ほとんどの労働者は取り残され、影響力をなくし、状況改善への道筋さえ見失う。

ブリニョルフソンはこのディストピア的な結末を、コンピューティングの先駆者アラン・チューリングにちなんで「チューリングの罠」と名付けた。

では、AIが人間のために働き、その逆にならない可能性を高めるには、どうすればいいのだろうか? ブリニョルフソンは『Daedalus』の論文で、税制の変更を通じて、企業にとって労働を置き換えるのではなく拡張する技術により多く投資することにうまみが生じるようにすべきだと提案した。

問題は、人間を雇うと給与税がかかる一方で、資本収入は通常、労働収入よりも低い税率で課税されるため、結果として機械への投資を促すことになっている点だ。この不均衡を是正すれば、企業を労働者に優しい未来に向けて動かすことができると、ブリニョルフソンは論じた。

だが、それだけでAIも同じ方向に導けるだろうか? ダロン・アセモグルはより包括的なアプローチの必要性を主張している。

加えて、こちらもMITに所属するデイヴィッド・オーターも同じような主張を展開している。ちなみに、オーターは「チャイナショック」こと、中国からの安価な輸入品の大量流入が米国の製造業雇用を崩壊させた様子をチャート化してみせた経済学者のひとりだ。最近、そのオーターは社会や経済がAIから被る影響について考えることが増えた。

わたしと話したとき、オーターは中国からの輸入品の波は壊滅的だったが、同時に限定的でもあったと指摘した。繊維や家具などの特定の産業は大きな打撃を受けたが、サービス部門の多くは無事だった。一方、AIは労働力のほぼすべての分野に浸透すると考えられる。「すばらしい機会が生じると思いますが」、オーターは言った。「同時に大きなリスクもあると思います」

オーターの考えでは、AIが科学研究を促進し、生産性を高めることで、新たな機会が生まれる。最大の危険──この点では、オーターはブリニョルフソンとアセモグルに同意する──は、AIが日常業務だけでなく高度に熟練した仕事も引き継ぎ、人間の専門知識の価値を侵食し、機械ができないことだけを人に任せることだ。そうなれば、AIシステムの所有者が報酬の大部分を受け取り、人類の大部分がほんのわずかな利益を分け合う経済が成立してしまう恐れがある。

人間の専門知識を拡張する

だが、オーターは完全に悲観的なわけではない。「多くのAIシステムが洗練されたツールとして機能し、人間の仕事を手伝う期間がしばらくは続くでしょう」とオーターは言う。「わたしたちはそんな世界をデザインする必要があります」

しかるに、課題はAIがどこに向かうかを理解することだけでなく、選択肢が狭まる前にその方向性を定めることにある。AIが社会に生産的な役割を果たす可能性がある分野の例として、オーターは現在米国で最大の雇用部門である医療を挙げた。

適切に設計されたAIシステムがナースプラクティショナー(一部医療行為を行なう資格をもつ看護師)をサポートすれば、ナースプラクティショナーはこれまでよりも広い範囲で診断や治療を行なうことができ、国の医師不足を緩和し、医療費を下げるだろう。

教育や法律など、ほかの分野でも同様の機会が生まれるとも、オーターは主張した。「現在の経済が抱える問題は、最も価値のある仕事の多くが高度に教育された専門家による意思決定に依存していることで、専門家が必ずしも生産性の向上には貢献していない点にあります」とオーターは指摘する。

「結果として、誰もが、教育、ヘルスケア、法的サービス、デザイン仕事などに多額の費用を支払っています。そうしたサービスを提供する側のわたしたちにとってはすばらしいことなのでしょう。わたしたちも多くを支払いますが、同時に多くを稼げるのですから。でも、大半の人々はそうしたサービスを消費する一方なのです。その人たちに勝ち目はありません」

人間の専門知識を置き換えるのではなく拡張するようにAIが設計されれば、中程度のスキルが必要とされる仕事が増え、広範囲で経済的な利益を生み出し、不平等を減らすことができるとオーターは語る。しかし、AIがこの目標を念頭に置いて開発されていないことには懸念を募らせている。

AI開発者は、緊急医療センターなどといった現実的な環境で人間の労働者をサポートするシステムを設計するのではなく、狭く定義されたデータセットに対するパフォーマンスの最適化に焦点を当てている。「機械がデータセットで優れたパフォーマンスを示すという事実が現実世界で何を意味するのかについては、ほとんど教えてくれません」とオーターは言う。「データセットは医師の診察室にやってきて、調子が悪いなどとは言いません」

オーターは2023年の研究を引き合いに出し、ある高度な教育を受けた放射線科医が、正確性に劣るAIツールを過度に信頼したため、不正確な診断を行なった例を挙げた。そして、「ツール自体は非常によくできているのですが、医師がそれを使うと診断精度が下がるのです」と説明する。

「手遅れだとは思いません」

では、解決策は何か? 政府が介入して、AIシステムを現実世界の条件で検証し、それが社会にもたらす影響を慎重に評価することだ。そしてその範囲を拡げ、最終的には高い学位をもたない労働者が価値の高い意思決定業務を担えるようにするのだ。「しかし、そうした考え方を実践するには、何をもって成功とみなすかという評価基準をまず決めなければなりません」とオーターは主張する。「実現は可能だと思いますが、簡単ではありません」

連邦政府がAI開発に影響を与えるもうひとつの方法は、政府自身が大口の買い手になることだ。医療分野だけでも、メディケア、メディケイド、国立衛生研究所を通じて、分野全体の支出に占める公的資金の割合がおよそ40%にもなっている。トランプ政権が現在実証しているとおり、教育分野もまた、政府資金が重要な影響力を行使できる場所だ。

オーターの理想では、政府機関は研究助成金とAI調達を製品開発と実世界でのより厳しい検証に結びつけることで、影響力を行使できる。ただ、このアプローチは高いハードルに直面している。ほとんどの産業において、AI開発は完全に民間主導であり、利益が最大の原動力となっているため、政府の指示はしばしば干渉とみなされるのだ。

オーターはそのような困難があることを認めている。インターネットは主にペンタゴンの研究部門である国防高等研究計画局(DARPA)によって開発され、オープンプロトコルをサポートすることでその発展が促された。AIでは、「以前の技術よりも使える手段が少ない」とオーターは言う。それでも、慎重ではあるが楽観的な態度は崩さない。「できることはたくさんあります。手遅れだとは思いません」

AIサーバーが打ち壊しに遭う日

1812年2月27日、24歳の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが貴族院に立ち、初の演説を行なった。レバント地方への大旅行から戻ったばかりで、母の家があるノッティンガムシャーに帰ってきていた。そこでは地元の靴下編み工が賃金低下と失業に抗議して、機械を破壊していた。そうした襲撃は「暴挙」だと、バイロン卿は集まった貴族たちに語ったが、新しい編み機によって引き起こされた「前例のない苦しい状況」によって駆り立てられたものだとも付け加えた。絶望だけが、靴下編み工のような「誠実で勤勉な人々」を暴力に駆り立てる、と。

バイロンはまた、議会が当時検討していた機械破壊法とそれに含まれる死刑案を嘲笑した。「この法案をどうやって施行するつもりなのでしょう?」と問いかけ、こう続けた。「そこらじゅうの畑に絞首台を置き、案山子のように人を吊すのですか? それとも……大量処刑でもしますか? 国に戒厳令を敷くのですか? 人口を減らし、国土を荒廃させるのでしょうか?」

議会はバイロン卿の警告を無視し、弾圧で応じた。英国の政治体制が工業化による混乱の深刻さを正しく認識したのは、数十年が過ぎてからだった。だが最終的には──労働時間と児童労働を制限する一連の工場法を可決し、公教育を拡大し、労働組合を合法化し、20世紀初頭までに健康保険と失業保険を含む社会的セーフティネットを構築した。

AIはバイロン卿時代の繊維機械よりもはるかに速いペースで進歩している。そのため、いまの政治家が対応に費やせる時間ははるかに少なくなるだろう。自動運転システムの本格導入だけで、米国では推定350万人のトラック運転手、200万人のタクシー運転手、お抱え運転手、ライドシェア運転手の職が脅かされている。

非営利研究グループ「Epoch AI」のエゲ・エルディルとマシュー・バーネットが最近発表した論文で、AIによるそのような置き換え──「広範囲にわたる自動化の爆発的増加」──が急速な経済成長や人間の寿命延長などといった変革をもたらすと想定することもできるが、そうした効果が現れるよりもずっと前に、民衆の激しい反発を引き起こす可能性があると警告した。

わたしたちは、ラッダイト運動に似た抗議活動を目にすることになるだろうか? ただし、今回は編み機ではなくサーバーファームが標的になる。米国の政治体制は、それにどう対応するのだろう?

政治にできることは何か?

23年10月、バイデン大統領は安全の確保、「責任あるイノベーション」の促進、職業訓練の拡大という広範な目標を定めたAI関連大統領令を発行したが、具体的な政策措置についてはほとんど言及しなかった。

いま、AI規制は労働者の擁護者であり自動化の専門家でもあると自認する大統領の手の内にある。ドナルド・トランプは24年12月のソーシャルメディア投稿で「わたしは自動化を研究し、それについて知るべきことはほぼすべて知っている」と宣言し、国内の港で自動化に抵抗している組合港湾労働者の肩をもった。「節約される金額は、それが米国の労働者、この場合はわれらが港湾労働者が被る苦痛、傷、損害にまったく見合わない」。

トランプの財務長官であるスコット・ベッセントは、政権の優先事項は何よりも雇用の安定と賃金の上昇だと述べている。「アメリカンドリームは『食べるものがないなら、フラットスクリーンでも食わせておけ』ということではない」と、最近ベッセントが語っている。それは「安っぽい飾りにどうこうされるもの」ではなく、仕事の尊厳、安定した雇用の約束、家を購入する能力に支えられている、と。

このような、経済ナショナリズムと産業時代の社会契約のレトリックに根ざした労働者重視のビジョンは、もうひとつの主要な親トランプ陣営であるテクノリバタリアン加速主義とは正反対に位置している。「選挙で選ばれていない共同大統領」などと評されるイーロン・マスクは、AIがほとんどの仕事を排除し、社会はそれを補償するためにUBIことユニバーサル・ベーシック・インカム(普遍的基礎所得)を採用しなければならなくなるだろうと宣言している。

マスクの会社「xAI」は独自のAIモデル「Grok」の開発に数十億ドルを投じており、マスクはトランプの政府効率化省の事実上の責任者として、連邦機関に「AIファースト」戦略を推している[原稿執筆当時。イーロン・マスクは2025年5月末特別政府職員を退任した]。

けれども、マスクが予測するようにAIが仕事を不要にしてしまうなら、ベッセントのビジョンは経済的基盤そのものが崩壊するだろう。大規模なUBIに資金を提供するためには税収が必要で、その税はいったいどこから来るのか。おそらく、AI技術を所有し、事実上多くの政治家──トランプも含めて──を支配しているマスクのようなAIの巨人から徴収するしかないだろう。

言い換えれば、AIをベースとする資本主義は、その政治的正当性を維持するために、資本に対して非常に高いレベルの課税を行なわなければならず、それは事実上、AIモデルが生み出す金銭収益を社会化することを意味する。

おそらくこれが、AIの先駆者ジェフリー・ヒントンが最近のインタビューで、AIをすべての人のためのものにするのに必要な経済政策について尋ねられたときに、ひとことで答えた言葉が意味していたことなのだろう。「社会主義」だ。

19世紀後半、社会主義の台頭そして最終的には労働者革命の脅威が圧力となり、ドイツの宰相オットー・フォン・ビスマルクは世界初の包括的な社会保険制度を導入することに決めた。ほかの国々もそれに続き、このモデルを採用した。

もしかすると今回は、困窮した専門職──中間管理職、コンピュータープログラマー、コピーライター、教師、医師、弁護士など──の超党派連合が、AIに対する予防的な、あるいは少なくとも緩和的な対応を強いる勢力になるかもしれない。

だがいまのところは、一貫したAI政策は想像するのも難しい。国家は深く分断し、トランプ政権は包括的アプローチを監督できる立場にある多くの連邦機関を削減しており、証拠に基づく政策立案という概念自体が脅威に晒されている。

「悲しいかな、わたしたちはこの問題にいまよりも1970年代のほうがうまく対処できていたと考えられます」とデイヴィッド・オーターがわたしに言った。「皮肉なことに、わたしは低技術社会だったころよりも今日のほうが、AIを管理する人類の能力が信頼できなくなっています」。オーター自身がその皮肉を楽しんでいるようには見えなかった。「おそらく、いまの時代はAIが登場するには悪いタイミングだったのです」

(Originally published on The New Yorker, translated by Kei Hasegawa/LIBER, edited by Nobuko Igari)

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労働者はAI革命をどうやって生き延びるか?

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