食事管理アプリが教えてくれた予想外のこと


画像処理を含むAIを使うタイプも登場して、カロリーや栄養摂取の目標を管理するのに便利な健康ツールがしのぎを削っている。だが、このアプリのせいで不安が増長されることもある。
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Photo-Illustration: WIRED Staff/Getty Images
※雑誌『WIRED』日本版 VOL.59 特集「Future of Health:生きることの未来」の詳細はこちら。

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わたしは、できるだけ適切な食事を取り、健康と体形を保つようにしている。それでも、子ども3人の母親として日々を過ごしていると、今日一日で何を食べたか、ましてどのくらい水を飲んだかを覚えているのはなかなか難しい。

ありがたいことに、最近は食事管理アプリが次々と登場している。コンピューターによる画像処理や人工知能(AI)を利用するタイプも含め、わたしの記憶の抜けを補ってくれたり、健康な身体づくりに向けて背中を押してくれたりする。

そうしたアプリのなかから、BitePalHootLose It!MyFitnessPalなどをダウンロードしてみたところ、自分の日々の食事についてより詳しく理解できるようになった。また、こうしたアプリでどんなことがわかるのか、どのような限界があるのかを把握するために、専門の栄養士にも話を聞いた。

食事管理アプリの大きな利点は、自分が食べているものについて自覚的になり、その結果にきちんと向き合うようになることだ。テキサス州ダラスで登録栄養士の資格をもつメリダン・ザーナーはそう語る。

「わたしたちはみんな忙しい日々を送っています。一度立ち止まって、自分が食べているものについて意識的になってみましょう。すると繊維質が足りていなかったとか、鉄分が不足していたといったことに気づきます。そうしたら、翌日はやり方を変えてみようとか、よい結果が出たからそれを基に調整してみよう、というふうになります」

ザーナーによると、人は自分の食事量を20~50%ほど少なく見積もる傾向があるため、自覚を促すにはこうした指導が有効なのだという。

食事管理アプリがしてくれること

まず、ほとんどのアプリは基本情報を入力することから始まる。現在の身長と体重、食事量の目標などだ。わたしが試したアプリはどれも、達成したい目標に応じて、体重を減らす、維持する、あるいは増やすことができると謳っていた。

なかには、食事の記録などの基本機能にサブスクリプションが必要なアプリもあり、料金は年額35ドル(約6,000円)前後だった。一方で、基本機能は無料で使えるが、栄養管理や詳しいコーチング指導といった追加サービスにはサブスクリプションが必要なアプリもあり、こちらは年額80ドル(約13,000円)ほどかかる。

どのアプリも、身体的な測定値について基本情報を入力する点は同じだ。生活習慣や活動量、食生活の種類(完全菜食主義か肉食中心か)、睡眠の質など、さらに具体的な情報を求めてくるアプリもある。すべて入力が終わると、一日あたりの適切な摂取カロリーが計算される。

計算結果が出てくるのは楽しかったが、基準となる身長と体重が同じなのに、アプリごとに推奨カロリーに幅があるのは予想外だった。そのため、本当に必要な一日あたりの正確なカロリーがわかりにくかった。

「どのアプリも、カロリーとエネルギー消費の推奨値を算出する際には、方程式に基づいて計算する必要があります」とザーナーは説明する。その方程式では、ホルモン量や骨の分量、遺伝的特性といった個人差は十分に反映できない可能性が高いという。

「これも、資格のある登録栄養士に相談するのが望ましい理由のひとつです。実際に安静時の代謝率を調べれば、『あなたに必要な燃焼量の正確な数値』は判断できます。アプリは、その予測方程式に従うこともあれば、従わないこともあるのです」

それからわたしは毎日、食事や間食で食べたものの内容と量を入力していった。各アプリがカロリーを計算し、摂取したタンパク質と繊維質の量、日毎に摂取した総カロリー、目標体重を達成するまでにわたしに残された摂取カロリー量などを知らせてくれる。

スマートフォンのカメラを通じてAIで分析する機能を備えたアプリもあり、食事の写真を撮るだけで料理ごとにカロリーを推定してくれた。便利そうに聞こえるが、アプリごとの差がかなり大きい。

例えば、地中海風サラダボウルひと皿を、あるアプリは約1,000カロリーと計算したが、別のアプリはそれよりずっと高く算出したため、材料を確認して推定値を自分で修正しなければならなかった。

自分の食習慣に気づく

もちろん、重要なのは単純なカロリー値だけではない。食事管理アプリの優れている点のひとつは、十分な栄養が取れているかどうか、一日を通じて必要な水分が取れているかどうかを把握できることだ。

「自分は決まった時間に食事をして、空腹の時間が長く続いていないか。品目の多いバランスのよい食事を取れているか。気分がよくなり、満足感も長く続く食品を取り入れるにはどうすればいいのか、自分自身で気づくことが大切です」。こう話すのは、登録栄養士であり、シカゴの摂食治療センター(Eating Recovery Center in Chicago)に所属する摂食障害の専門家でもあるアディー・レヴィンシュタインだ。

例えば、わたしの食事はタンパク質より炭水化物に偏りがちで、水分摂取量も一日の後半になるほど少なくなる。アプリからリマインダーが届くと、食事にもっと気を配ろう、もっと水分を取ろうと意識するきっかけになった。

データとの付き合い方

食事のデータをスキャンしたり入力したりするのは楽しいが、困るのは、わたしが完璧主義だということだ。カロリーや栄養の目標を毎日必ず達成しようとしてしまい、必要以上に食事にこだわるようになった。ザーナーによると、そうなりやすいのは、白か黒かで考える傾向のある人だという。その性格のために不安が大きくなったり、完璧主義が強くなったりするのだそうだ。

このように思考していると、人は食べたものについて「よい」か「悪い」かの二分法で考えるようになる。これは、自分の食事との向き合い方として不健全だ、とレヴィンシュタインは言う。「[食事管理アプリは]食品をとかく善悪に二分しがちです。実際には、誰にとってもカロリーは必要なものですし、炭水化物もタンパク質も脂肪も、すべての人に必要なものです」

こうした完璧主義の傾向があるため、わたしはおそらく食事量を常に記録し続けるのはやめるだろう。それでも、折に触れて確かめたくなるとすれば、どのアプリより頻繁に使っていたのは「Lose It!」だった。食事量を詳しく分析する機能もあり、日々のワークアウトを記録するのも簡単で、食品パッケージに付いているバーコードもスキャンできるので、カロリー計算は特に正確だと感じた。

これからは、もっと水分を取るようにして、炭水化物とタンパク質のバランスも考えるようにするつもりだ。ヘルシーに見える料理でも、少量でもバターやオイル、マヨネーズを使えば、カロリーがかなり増えることも忘れないようにしよう。種類を問わずカロリー計算はクセになりやすく、大切なのはバランスだということも、肝に銘じておこう。

「現実の生活では、栄養をあまり厳密に考えないようにするべきです。カロリー摂取過剰の日があっても、カロリー不足の日があっても大丈夫。それで失敗ということにはなりません。オール・オア・ナッシングではないのです」とザーナーは話している。

食事管理アプリは、バランスの取れたヘルシーな食事を保つというパズルの1ピースにすぎない。ザーナーは続ける。「よいスナップショット、つまり一時記録になります。それを活用し、そこから学び、検討の土台にしながら、健康を保つためのさまざまな手段のひとつ、くらいに捉えておくことです」

(Originally published on wired.com, translated by Akira Takahashi/LIBER, edited by Nobuko Igari)

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