「貨物船だけど実は“空母”です」実際どう運用した? 民間人の船員が運航した英空母

「商船を改造した空母」は、第2次大戦中のイギリスにもありました。穀物運搬船や石油タンカーが生まれ変わった「MACシップ」は搭載機数が少なく、しかも運航するのは民間人の船員。はたして大西洋のドイツ軍に対抗できたのでしょうか。

各国に存在した「商船改造空母」

 商船改造空母といえば旧日本海軍の隼鷹型や大鷹型を思い浮かべる人も多いでしょう。これらは、あらかじめ空母に転用を想定して建造した、外洋航路の貨客船を改造したものです。一から建造する正規空母に比べて工期が短いメリットがあり、日本ではその多くが日米開戦前後に就役しています。軽空母に相当するこれらの商船改造空母は、機動部隊の一翼を担うほかに、船団護衛、航空機の輸送など多方面に使われました。
 
 第2次世界大戦中は、アメリカやイギリスでも商船改造空母が運用されています。特に大西洋の戦いは連合国の輸送船団に対するドイツ軍の通商破壊戦で、イギリス海軍は独自の商船改造空母を生み出しました。そのなかでも、今回ご紹介する「MACシップ」は、船団護衛で重要な役割を担いました。

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元はオランダのタンカーだったMACシップ「マコマ」(画像:オランダ国防省)。

 第2次世界大戦初期にヨーロッパの大半はドイツに占領されました。孤軍奮闘を強いられたイギリスは、まだ参戦していないアメリカから海上輸される軍需物資に支えられていました。その輸送船団を狙って、ドイツ海軍は戦艦や装甲艦、潜水艦や航空機で通商破壊戦を行い、イギリスは窮地に立たされます。

 そうした状況下、対潜哨戒など航空機による索敵が必要とされるようになり、護衛空母の建造が進められたものの時間がかかるうえに数が足りません。そこで苦肉の策として考えられたのが「CAMシップ」でした。

 これは輸送船の艦首に設置したカタパルトからハリケーン戦闘機を発射して索敵や迎撃をするという苦肉の策でした。当時ドイツ軍は水上艦艇や潜水艦に加えて、航続距離が2000kmを超える4発エンジンのフォッケウルフFw200哨戒爆撃機を船団攻撃に投入していました。それに対抗するために、こうした艦載機が必要だったのです。

 ところが、CAMシップには致命的な欠陥がありました。飛行甲板がないため、いったん発進したハリケーンは母艦に着艦できません。出撃を終えた帰りは航続距離の許す限り母艦近くまで戻ると着水し、パイロットは救助を待つしかありませんでした。

 さすがに、これではまずいと思ったのか、イギリス海軍は次なる手を考えます。それが「MACシップ」(MACはMerchant Aircraft Carrierの略)です。

【これじゃダメだ…】“カタパルトだけ”のCAMシップと、飛行甲板のついたMACシップ(写真)

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コメント

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1件のコメント

  1. オーダシティ(HMS Audacity)はMACシップではなく護衛空母(Escort carrier)で,商船船員ではなく正規の海軍軍人により運用された(だから艦名にHMS.がつく)。英海軍はオーダシティ以後も商船改造の護衛空母(MACシップとは構造が違う)を就役させているし,そもそも世界初の全通甲板空母(実用空母)であるアーガス(HMS Argus)も,イタリアの客船コンテ・ロッソ (Conte Rosso) を改造したもの。このライターは英国の商船改造空母をすべてMACシップだと勘違いしているのではないだろうか。