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〈SEIKO〉とポパイが一緒に作った “オレンジボーイ”制作秘話。

SEIKO

2026年7月22日

illustration:Shinji Abe
text:Ku Ishikawa
Photo : Hiroki Oe (model), Kaoru Yamada
styling : Eriko Asakura
grooming: HORI
Edit : Koji Toyoda (model)

ブルーのチェックシャツを羽織り、手元には赤いギンガムチェックの包装紙。そこにオレンジの文字盤の一本を合わせても自然に収まるのは、ダイバーズウォッチ由来の道具感があるからだ。

〈SEIKO〉と一緒に時計をつくるなら、どんな一本がポパイらしいだろう。ヒントになったのは、ダイバーズウォッチの系譜にある「フォース」の顔つきと、ファンに“オレンジボーイ”と呼ばれてきた文字盤の色。そしてこだわったのは、38mmという小径だった。腕元にあるだけで、毎日の服に少しだけ古い時間と冒険の匂いが加わる。そんな一本を考えるうえで、まず知っておきたいのが、若者のための機械式時計として生まれた〈セイコー 5スポーツ〉のことだ。

60年代、〈セイコー 5スポーツ〉はポップな感性全開だった!

上/〈セイコー 5スポーツ〉を代表するモデルが1968年にローンチした通称「ファースト」。スポーティなブラックダイヤルがアイコン。
中/ヨットレースやセーリングレースなどのマリンスポーツを意識したデザインの、通称「レガッタタイマー」。
下/通称「スシロール」。略字が軍艦巻きの断面に見えるかららしい。愛称のつけ方も面白いね。

今回のモデルの土台となったのが、〈セイコー 5スポーツ〉というブランド。1968年に誕生した、若者のための機械式時計ブランドだった。自動巻き、防水、耐久性に優れたケースとバンド。いま見ても頼もしいスペックを備えながら、その表情はずいぶん自由だった。

当時の若者のあいだで流行していたワッペンに着想を得たロゴ。マリンスポーツやモータースポーツの気分を取り入れたケースやベゼル。時計は小さな工業製品だけれど、そこには時代の遊び心がかなり詰まっていた。真面目な性能と、少し浮かれたデザイン。その両方が同じ腕元にある感じが、〈セイコー 5スポーツ〉らしさだったのだ。

2019年に〈Seiko 5 Sports〉として全世界展開のブランドへリブランディングされたとき、掲げられたスローガンは“Show Your Style”。信頼性とコストパフォーマンスを備えた機械式時計を、いまの若者の趣味やファッションに合わせて選べるようにすること。つまり〈5スポーツ〉は昔も今も、若者に機械式腕時計を知ってもらうための入り口であり続けている。

今回の別注がただの復刻に見えないのは、その姿勢まで引き継いでいるから。ダイバーズウォッチの本格的なデザインを、街で使いやすくカジュアルダウンし、10気圧防水のスポーツウォッチとして仕立てる。焼けたようなルミの色、当時のモデルに寄せたベゼルの目盛り、汗をかいても洗えるシリコンストラップ。細部はマニアックなのに、使い方はとても軽い。Tシャツでも、スウェットでも、古着のシャツでも、腕元に一点だけオレンジがあると、服が少しだけ活動的に見える。

フォースと、SKXと、オレンジボーイ。

1978年に発売されたSKXの元となるデザイン。 

1982年から展開される「フォースダイバー」の12時位置にある略字が今回のモデルにも継承されている。 

エントリー向けのダイバーズモデルとして、1996年に誕生し、約22年にわたって愛されたロングセラー「SKX」。

今回のコラボレーションモデル。変遷を知ると、文字盤やインデックスのデザインの奥深さに気づくはず。

腕時計の世界には、正式な品番とは別に、いつのまにか定着していく愛称がある。〈SEIKO〉のダイバーズウォッチにも、そんな名前がいくつもある。なかでも今回の出発点にあるのがSKXだ。もともとのデザインを辿ると1978年のモデルまで遡ることができ、1996年から2018年までの約22年間は、エントリーダイバーズとして多くの人に親しまれてきた。現在の〈Seiko 5 Sports〉にも、そのデザインのDNAは受け継がれている。

そのSKXの周辺には、ファースト、セカンド、サード、フォースといった、ファンたちが親しみを込めて呼ぶ系譜がある。時計に詳しくない人からすると少し謎めいて聞こえるけれど、ざっくり言えば、それぞれ文字盤の顔つきが違う。今回のモデルで重要なのは、その中の「フォース」と呼ばれるレイアウトだ。

見るべきポイントは、12時位置にある略字、つまり時間を読むためのインデックスの形。一般的な時計なら三角や四角のマークで済ませるところを、ダイバーズウォッチでは海の中でも瞬時に時間が読めるよう、位置ごとに形を変えて視認性を高めている。フォースの顔つきは、その12時位置の略字が左右にパカッと割れたように見えるのが特徴。機能のために生まれた形なのに、どこか道具っぽく、同時に少しチャーミングでもある。

今回ポパイが〈SEIKO〉と一緒に作ったのは、そのフォースのレイアウトを38mmのボーイズサイズに落とし込み、さらに「オレンジボーイ」の色を重ねた一本。オレンジボーイとは、ブラックボーイ、ネイビーボーイと並んでファンに親しまれてきた、オレンジ文字盤のダイバーズウォッチの愛称のことだ。つまりこれは、時計好きが反応する系譜の面白さと、時計に詳しくない人でも直感的にいい感じと思える色とサイズ感を、同じ文字盤の上で成立させたモデルである。

開高健さんの手元で光ったオレンジ。

著書『オーパ、オーパ!!』で、釣り上げたイトウを掲げる開高さん。その左手にはオレンジボーイが。この絵の様子は文庫本だと「モンゴル・中国篇 スリランカ篇」で読めます。

開高さんの『オーパ!』シリーズは、1970年代から1980年代にかけて、世界各地を旅した壮大な釣り紀行。同行した写真家・高橋昇さんの素晴らしい写真と、開口さんの知性・情熱・ユーモアが詰まった、ロマン溢れる名著です。

この色を選ぶにあたって、もうひとつ大きな手がかりになったのが、開高健さんだった。氏の私物だった〈SEIKO〉のダイバーズウォッチはまさにオレンジボーイ。オーバーオールの袖口から覗くオレンジの文字盤は、いわゆる高級時計のきらびやかさとはまったく違う魅力を放っていた。釣りに行く人の道具であり、書く人の腕元にある相棒であり、少し乱暴に扱われてもへこたれないプロダクト。開高健さんの時計そのものが今回のフォース顔だったわけではないし、デザイン全体がそこだけに引っ張られたわけでもない。それでも、オレンジを選ぶ理由としては十分すぎるほど強かった。

現行のフォース顔にはない38mmのミッドサイズを選んだのも、今のシティボーイのための腕時計として自然なチョイスだった。大きすぎず、服の邪魔をしない。そして時計マニアにとっては、希少な系譜を汲む一本だ。というのも、フォースレイアウトの38mm径で、オレンジ文字盤の現行品は存在せず、過去を遡っても、1982年からのほんのわずかな期間に海外限定で発売されていたモデルのみだという。けれど、そんな背景は正直知らなくてもいい。はじめての機械式時計として、毎日の服に合わせて付き合える一本であることのほうが大事だ。

街を歩き、電車に乗り、自転車を漕ぎ、週末に海や川へ出かける。そんな日常の腕元に、少しだけ古い時間と、少しだけ冒険の匂いがある。今回僕らがセイコーと作った一本は、つまりそういう時計なのだ。

フォースは1980年代初頭に登場したレイアウトであり、1976年に創刊したポパイが見てきた70〜80年代の若者文化とも、自然に時間が重なる。

裏蓋にはポパイ創刊号由来のグラフィックを線画で。

4時位置の竜頭には、昔のセイコーのSマークを思わせるように、控えめなPを凸で表現。

インフォメーション

POPEYE ONLINE STORE Pop-Up! #11

SEIKO 5 SPORTS × POPEYE SKX “Orange Boy” edition

オープン期間:
2026年7月22日(水) 12:00 〜 8月4日(火) 23:59:59

URL:
store.popeyemagazine.jp

POPEYE ONLINE STOREの先行予約は100本限定。
他、SEIKOのオンラインストアなどでも販売。
合計500本限定。

今回の#11では、Basic Collectionの展開もあります。
時計は先行予約販売、その他の商品はすべて受注生産販売です。サイトでご注文・ご購入いただいてから、お届けまでにお時間を頂きます。毎度のお願いになりますが、ご了承ください。商品の発送時期については、POPEYE ONLINE STOREのページにてご確認ください。そのほか、購入の際の注意事項などをよくご確認の上、お買い物をお楽しみください。

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8月4日までオープン!