大学縛る「23区規制」、地方創生の効果は限定的…有効な施策はあるか
内閣官房の政策誘導焦点
内閣官房で都内の大学を縛る「23区規制」の検討が進んでいる。同規制は23区内の定員増加を禁じ、東京一極集中を是正することが目的だ。ただ東京圏への人口流入は止まらず、政策効果は限定的だ。これは高度デジタル人材などの例外が用意され、定員が増えたためだ。定員抑制よりも、経営体力のある大学への政策誘導として機能している。人口が減少する中で地方に人口を残すには、東京以外の大都市圏にも規制を広げるなど、より強い規制が必要になるが成立しないとされる。果たして有効な施策を打ち出せるか。(編集委員・小寺貴之)
「東京から何か取っていったら物事が解決するんだという、宗教といってもいいと思う。そろそろ現実を見たら良いのではないか」と、小池百合子東京都知事は有識者会議の議論にクギを刺す。23区規制は東京一極集中の是正を目的として2018年に導入された。地方大学の振興のために地方公共団体へ配る交付金と併せて制度設計され、これが“全体最適”と説明された。
ただ法制定前に機関決定していた定員増は対象外とし、23年度には高度デジタル人材の例外を設けた。このため、定員は法施行時の18年度の11万9640人から24年度は12万3690人へと増えている。内閣官房の児玉大輔参事官は「定員の増加ペースは抑制され、一定の効果はあった」と説明する。
有識者会議では法施行の成果と課題が分析されたが、有識者の評価は定まっていない。23区の学生数は19年度が47万7000人で、24年度は50万5000人と5年間で5・8%増えた。法施行前は13年度の45万9000人から18年度に47万5000人と同3・4%増だった。学生数の増加ペースは伸びている。
課題は地方の活性化が進んでいない点だ。もともと地方高校から大学に進学した者のうち、23区の大学に進学する割合は6・6%と少なかった。リクルートの調査では地元進学者が増え、南関東や関西、東海の大都市圏では地元進学が87%を占めた。
また、今後15年で大学進学者は3割減ると推計されている。東京に限らず、大阪、名古屋などの周辺地域から学生を集める大都市の大学を規制しないと地方大学は苦しくなる。だが、児玉参事官は「規制を広げる案は知事会で反対され成り立たないだろう」とみる。23区規制は対東京で46道府県がまとまり成立した経緯がある。
ここで、23区規制の例外規定を使った政策誘導効果が注目される。文部科学省は文系学部の理系転換を進めている。理系学部は文系よりも運営コストが高く、大学経営の負担になる。通常は補助金を配って転換を促すが、23区規制は投資体力のある東京の大学を規制を緩めるだけで誘導できる。
22年の有識者会議では「規制を続けるのであれば、効果を減衰させるような例外はできる限りなくす。それが困難であれば規制を継続しないことが合理的」と強く主張されたが、高度デジタル人材の例外は追加された。
ただ、デジタル人材はAI(人工知能)の進歩で需要が続くかどうか見通せない。AIがコードを生成するようになり、エンジニアは企画や構想、設計などの、より上位の仕事にシフトするよう求められている。ある私大の学長は「設計やデザインは実践が重要。概念だけ学んでも身に付かない」と指摘する。
座学だけでは獲得が難しく、研究を通して学んできた。文系から転換した大学で十分な研究予算を確保できるかが課題になる。地方と大学、若者、誰のための規制か説明が求められる。