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2025年AIエージェントの期待外れから学ぶ、2026年本格普及への道筋

2025年AIエージェントの期待外れから学ぶ、2026年本格普及への道筋

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中山 高史
生成AIが創造する「ビジネスの未来像」中山 高史

1. 「AIが仕事を奪う」― その予言は、なぜ外れたのか

「AIエージェントを導入したんですが、結局、誰も使っていないんですよ」

 先日、ある大手製造業のDX推進部長から聞いた言葉です。数千万円をかけて概念実証を実施し、業務の効率化の数字を経営陣に提示。デモも成功し、本番導入が決定し、早速、利用開始。しかし半年経った今、現場での利用率は10%以下。「デモではよかったけど、思ったほど実務では使いたくない」という声が、社内であふれているそうです。

 2025年、大手企業のDX部門と話す機会が多々ありましたが、この手の話は、決して珍しくありません。

 McKinseyが2025年11月に発表した調査によれば、AIエージェントを試している組織は62%に達する一方、全社規模でスケーリングできている企業はわずか7%という結果が出ています。「導入」と「定着」の間には、深い溝があるのです。

 現場で何が起きているのか。それは、AIが行った仕事の「後始末」に追われる徒労感です。

 例えばですが、メール自動返信エージェントを入れた場合、AIが書いたメールは100点の場合もありますが、平均的には70点。そのまま顧客には送れません。結局、人間が語調を直し、文脈を補い、ファクトチェックをする。この「70点を90点以上にする修正作業」が、ゼロから自分で書くよりも、精神的に疲れるのです。

 「これなら自分でやった方が早い」…そうしてAIツールはそっと閉じられました。

 「AIが仕事を奪う」と言われているのに、現実には定着すらしていない。仕事が奪われなかったのは、AIの能力が低かっただけではありません。現場のワークフローにうまく溶け込ませられなかったからです。

 2025年の年明け、僕たちは興奮に包まれていましたよね。

 「今年はAIエージェント元年だ」と。

 ここで言うAIエージェントとは、単なるチャットAIとは異なります。目的を受け取ると、自ら手順を組み立て、メールや予定表、ウェブ検索などを自律的にして、複数の作業を連続してこなす仕組みのことです。

 2025年が終わった今、振り返れば期待はずれと言わざるを得ません

 なぜ、これほど多くの企業が躓いたのでしょうか。答えをすごくシンプルにいいますと、それは「仕事を丸ごとAIに任せようとした」からです。

 本記事の結論を先に述べますね。

 AIエージェントを機能させるには、仕事をタスクに分解し、どのタスクをAIに、どのタスクを人間に任せるか、そのループを設計する必要があります。一般的には、このことを、「Human-in-the-Loop」の設計と呼ばれています。

 2025年に足りなかったのは、AIの知能だけではありません。仕事を「AIと人間の仕事のループ」として設計し直す発想でした。そして2026年、この設計に取り組まない企業は、同じ失敗を繰り返すでしょう。

2. 激動の2025年 ― 技術はある程度揃った、しかし…

 2025年のAI業界は激動でした。11月、GoogleがGemini 3を発表した直後、OpenAI社内では「コードレッド(緊急事態)」が発令されたと報じられています。12月、OpenAIはGPT-5.2を緊急投入。推論能力と共に、自律性は劇的に向上しました。

 2025年の秋から年末にかけて、AIエージェントが使えるようになる「トリガー」となるものが2つ登場しました。

 1つは、「GDPval」という評価指標、もう1つは、マイクロソフトのIgnite2025で発表された、「Entra Agent ID」および「Agent365」です。

GDPvalとは

 OpenAIが昨年秋にリリースした「GDPval」は、これまでのベンチマークとは一線を画します。米国のGDPを支える主要9セクター(金融、医療、製造など)から選定された44の専門職種を対象に、計1,320もの具体的な実務タスクをAIに実行させます。

 これらは単なるクイズではありません。完了までに数時間を要するような複雑なタスクも含まれ、その成果物が「そのまま仕事で使えるか」を、平均実務経験14年の専門家によるブラインドテストで評価されます。すなわち、ベテランのビジネスマンが作成したものとAIが作成したものを比較し、専門家がどちらが優れているかを判定するのです。

 GPT-5.2 Thinkingは70.9%の確率で、人と同等かそれ以上の評価を叩き出しました。その上、専門家と比較して仕事のスピードは11倍以上、コストは人件費の1%未満という驚異的な数字です。

 今後は、GDPvalの評価指標の高いAIモデルを選べば、ビジネスがある程度任せるとの安心感が出てきますし、他社のAIモデルも、この指標のスコアを上げるべくモデルを開発してくると思われます。数学オリンピックで優勝しても、東大の入試が解けても、ビジネスができるわけではないですからね。ようやく、「仕事ができるか否か」の指標が出てきたことは大きな前進となります。

マイクロソフトが提示した「エージェント管理の3種の神器」

 もう1つは、MicrosoftがIgnite 2025で発表した、企業がAIエージェントを「飼いならす」ための管理基盤です。これまで企業が二の足を踏んでいた最大の理由は「野良エージェントが勝手に動き回って、機密情報を漏らすリスク」でした。これを封じ込めるために提示されたのが、主に以下の3つの機能です。

1. Entra Agent ID:AIに「社員証」を持たせる

 これまでID管理(Entra ID)は「人間」が対象でしたが、ついに「AIエージェント」にも固有のIDが発行されるようになりました。

 「誰が作ったエージェントか」だけでなく、「エージェントそのもの」を認証します。これにより、たとえば「経理部のエージェントA」は会計システムには入れるが、人事データベースにはアクセスできない、といった細かい権限設定が可能になります。もしエージェントが暴走しても、管理画面からそのエージェントのIDを停止(BAN)すれば即座に止まる。この「キルスイッチ」の実装が、情シス部門に安心感を与えました。

2. Agent 365:エージェント版の「人事部」

 組織内で稼働する数千のAIエージェントを一元管理するコンソールです。

 どの部署で、どんなエージェントが、どれくらいの頻度で使われているかを可視化します。さらに重要なのは「野良エージェントの検知」です。社員が勝手に作った承認されていないエージェントをあぶり出し、ポリシー違反があれば自動的に隔離します。人間でいうところの人事評価と労務管理を、AIに対して行うシステムと言えます。

3. Work IQ:文脈を理解する「空気読み」エンジン

 これが最も現場にインパクトを与えます。Microsoft Graphの進化版で、エージェントに「仕事の文脈」を注入する機能です。

 従来のエージェントは、単にファイルを検索するだけでした。しかしWork IQは、「このプロジェクトのキーマンは誰か」「過去にどんな経緯でトラブルになったか」「今の優先順位は何か」といった、明文化されていない相関関係や文脈を理解してエージェントに渡します。第3章で述べる「丸投げの失敗」の最大の原因である「文脈欠如」を、システム側で補完しようとする野心的な試みです。

 この3つが揃ったことで、AIエージェントは単なる「便利ツール」から、企業が統制可能な「インフラ」へと昇格しました。

 2025年の秋以降、こうした、企業でAIエージェントを使う環境は充実してきましたので、2026年はAIエージェントが使えるようになるかといえば、そう簡単ではありません。僕たち使う側の問題の方が大きいからです。

3. 「丸投げ」という失敗と幻想

 2025年、多くの企業がAIエージェントに期待したのは「仕事の丸投げ」でした。

 「提案資料を作っておいて」「顧客対応を自動化して」「レポートを毎週生成して」。経営者やDX推進者は、こうした指示を出せばAIが勝手に動いてくれると期待しました。

 しかし、この期待は幻想でした。仕事には「言語化されていない文脈」が大量に含まれているからです。

 たとえば、顧客への提案資料を作るとき、「この部長は慎重派だからリスクの話から入るべき」「競合B社の名前は出してはいけない」といった情報が必要になります。これらは議事録には書かれていません。担当者の頭の中にだけある。

 AIは、この「察し」ができません。だから、仕事を丸ごと任せても、使える成果物は出てこない。結局「わかってないなぁ」と言いながら人が修正する羽目になります。

 これが2025年の真実でした

 理屈では分かっていても、現場で具体的に何が起きていたのか。

「AIならこれくらい出来るだろう」という期待が、いかに脆く崩れ去るか。当時、僕たちが実際にツールを使い倒して直面したエラーは、想像以上に生々しいものでした。

 その他、失敗のメカニズムを深く理解したい方は、以前記事に書きましたので、こちらの記事をご参照ください。

4. 成功した領域、失敗した領域

 悲観的な話ばかりではありません。2025年、確かに革命が起きた領域もあります。

1. NotebookLM 

GoogleのNotebookLMは、資料作成のあり方を根本から変えました。膨大な資料を読み込ませて「この内容を5分で説明するスライドを作って」と頼めば、驚くほど的確な成果物が返ってくる。

2. コーディング(プログラム開発)

コーディング領域も同様です。Claude Opus 4.5はソフトウェア開発能力を測るSWE-bench Verifiedで80.9%を達成し、業界トップに立ちました。もう人はいちからコードを書くことはありません。基本AIに書いてもらうようになってきています。

3. Deep Research

そして何より、「Deep Research」機能の登場は、ホワイトカラーの時間を最も奪っていた「検索」の概念を覆しました。AIエージェントが自律的に何百ものWebサイトを巡回し、信頼性を検証し、数時間かかるような市場調査や競合分析をわずか数分でレポートにまとめ上げる。検索して、タブを開き、読み込み、広告を避け、必要な情報をコピペする……あの一連の苦行は、もはや過去のものとなりました。

 なぜ、これらの領域では成功したのでしょうか。

 答えは明確です。「察し=暗黙知=空気を読む力」などが要らないからです。

 NotebookLMに渡す資料は、すべて文書化されています。コーディングには仕様書とテストがあり、正解が定義されている。Deep Researchも公開されたWeb情報を集約するという目的が明確です。「部長は慎重派」「B社はNG」といった暗黙の情報が介在しない。システムのコーディングは動くか動かないか、だけですよね。

 だからAIは力を発揮できたのです。

 成功と失敗の分かれ目は明確でした。情報が明示的に渡されているかどうか。そして、人間の判断が適切なタイミングで介在しているかどうか。

 ここに、2026年への突破口があります。

5. Human-in-the-Loop設計とは何か

 2025年の失敗から学ぶべき教訓は、シンプルです。

 仕事を丸ごとAIに任せるのは、少なくとも2025年時点では不可能に近いし、2026年、AIモデルの自律性が高まっても厳しいのはかわらないと思います。

 しかし、仕事をタスクに分解し、AIと人間が交互に処理する「業務のループ」を設計すれば、劇的な効率化が可能になる。

 つまり、「Human-in-the-Loop(人間参加型)」を設計することです。

 「Human-in-the-Loop」とは、元来、機械学習やAI開発の分野で使われる専門用語です。AIシステムのトレーニングや運用のプロセスの中に、人間の判断やフィードバックを組み込む仕組みのことを指します。AIだけでは完結させず、必ず人間が「輪(Loop)」の中に入って制御や修正を行うという意味です。これをビジネスの現場に置き換えて、業務フローそのものに適用しようというのがここでの提案です。

ここで、言葉の定義を明確にしておきます。本記事で言う「仕事」とは、成果物を出すまでの一連の活動のこと。「タスク」とは、その活動を構成する個々の作業のことです。

 「提案資料の作成」は仕事です。「業界動向を調べる」「ドラフトを作成する」「内容をチェックする」は、それぞれタスクです。

 従来の発想は「仕事をAIに任せる」でした。これは、仕事という大きな塊をそのままAIに渡すイメージです。

 しかし、仕事には「AIが得意なタスク」と「人間の判断が必要なタスク」が混在しています。塊のまま渡すと、AIは人間の判断が必要な部分でつまずき、全体が使い物にならなくなる。

 2026年の、AIエージェントを使う上での新しい発想は「仕事をタスクに分解し、ループを設計する」です。

 まず、仕事を構成するタスクを洗い出す。次に、各タスクが「AIに任せられるか」「人間の判断が必要か」を判定する。そして、AIと人間が交互に処理するループを設計する。

このとき、重要な判断基準が5つあります。

1. 取り返しがつくか

社内向けの議事録ドラフトは、間違っていても修正できる:AIに任せてよい

2. お金が動くか 

発注や支払いに関わる判断は、失敗したら責任問題になる:人間が確認すべき

3. 社外に出るか

顧客へのメール送信は、AIがドラフトを作り、人間が確認して送付:人間が送るべき

4.  権限が必要か

承認や決裁が必要な行動は、人間がループに入る:人間が承認すべき

5. 「察し」が必要か

暗黙知や常識、状況に応じて柔軟に対応することが必要:人間がすべき

6. ループ設計の威力 ― 提案資料で検証する

 「でも、人間がループに入るなら、結局、人間の仕事は減らないんじゃないですか?」そう思う方もいるでしょう。しかし、現場ではむしろ逆のことが起きています。ループを設計することで、人間の仕事は劇的に減るのです。

 なぜなら、仕事の中で「時間がかかるが判断が要らない部分」と「時間はかからないが判断が必要な部分」は、明確に分かれているからです。

 具体例で検証してみましょう。「提案資料の作成」という仕事を、タスクに分解します。

 従来、この仕事はベテラン営業マンが6時間程度で完結させていました。しかし、その内訳を分析すると、興味深いことが分かります。

タスク①:情報収集・整理(2時間)

ウェブで業界動向を調べ、競合情報を集め、要点を整理する。これは「時間がかかるが判断が要らない」作業です。→ AIに任せる

タスク②:方針決定(30分)

「部長は慎重派だからリスクの話から入る」「B社の名前は出さない」「コスト削減より運用負荷軽減を前面に」。こうした方針は、顧客との関係性を知る人間にしか決められません。→ 人間が判断する

タスク③:ドラフト作成(2時間)

方針に基づいてパワーポイントを作成する。方針さえ決まっていれば、「時間がかかるが判断が要らない」作業です。→ AIに任せる

タスク④:チェック・微調整(1時間)

「この表現は部長に刺さらない」「ここはもっと具体的な数字が要る」。読み手の反応を想像しながら細部を調整する。→ 人間が判断する

タスク⑤:最終フォーマット(30分)

修正指示を反映し、見た目を整える。→ AIに任せる

 この分解から見えてくるのは、人間の判断が必要な部分は「方針決定」と「チェック・微調整」だけで、合計1時間半だということです。残りの4時間半はAIに任せられる

さらに重要なのは、これが「ループ」になっていることです。

人間(方針を決定し、AIに伝える)

 → AI(業界情報を収集し、ドラフトを作成する)

  → 人間(ドラフトをチェックし、修正指示を出す)

   → AI(修正を反映し、最終版を仕上げる)

    → 人間(最終確認して、提案に使用する)

 このループを設計することで、人間の作業時間は6時間から1時間半に圧縮されます。75%の削減です。 完了までの所要時間はAIの処理待ちを含めて約2時間半。しかも、AIが作業している間、人間は別の仕事ができます

 人間が適切なタイミングで「察し」を注入し、軌道修正しているから、成果物の品質も担保される。「デモでは動くけど実務では使えない」という問題が、ここで解消されます。

7. 小さく始める ― 自社版GDPvalのすすめ

 「理屈は分かった。でも、どの仕事から始めればいいのか分からない」

 そう感じる方も多いでしょう。そこで提案があります。

 まずは、「自社版GDPval」を作ってみてください。これは、以前から僕が提唱している「現場主導のAI評価メソッド」を、最新の環境に合わせてシンプルにしたものです。

 GDPvalとは、OpenAIが策定したベンチマークで、AIの成果物が「そのまま使えるかどうか」を専門家が評価する仕組みです。ただ、これをそのまま真似する必要はありません。米国流の仕事のやり方ですので、そもそも日本の仕事の仕方にはマッチしていないことも多々あります。

 自社版はもっとシンプルで、泥臭いもので構いません。

 やり方は以下の3ステップです。

  1. まず、自社の業務から10個のタスクを選びます。定型的なものと非定型的なもの、両方を含めてください。
  2. 次に、それぞれのタスクをAIに実行させ、1週間ほど試してみます。
  3. そして、「現場のエース」に評価してもらいます。基準はたった一つ。「修正なしで使えるか(Yes/No)」です。

 「修正なしで使える」なら合格。「少しでも修正が必要」なら、それは「人間がループに入るべきポイント」です。

 なお、この評価手法の具体的な運用フォーマットや、さらに細かい「現場視点での評価軸」の作り方については、以前執筆した以下の記事ですでに詳しく解説しています。本記事と合わせて、実践のマニュアルとして使ってください。

 この作業を通じて、自社における「AIの守備範囲」が見えてきます。どのタスクはAIに任せられるか。どのタスクは人間の判断が必要か。どこにループを設けるべきか…

 OpenAIが示す「速度は11倍、コストは1%」という数字は、彼らの定義した仕事において、最も条件が良いケースの結果です。自社の業務がその条件に当てはまるかどうかは、やってみなければ分かりません。

 「小さく始めて、自社の実態を把握する」。これが2026年の第一歩です。

8. ループ設計の3ステップ

 自社の「AIの守備範囲」が見えてきたら、本格的にループ設計を進めましょう。ここでは3つのステップを提案します。

ステップ1:仕事を「タスク」に分解する

 まず、あなたの仕事を棚卸ししてみてください。1つの「仕事」を、5〜10個の「タスク」に分解します。

 「分解なんて面倒だ」と思いましたか? そこで裏技です。この分解作業自体を、AIにやらせてしまえばいいのです

 「提案資料の作成業務を、作業レベルのタスクに分解して」とAIに投げてみてください。AIが出してきたリストを人間が調整する方が、ゼロから書き出すより遥かに楽です。設計という作業すら、AIと共に行う。これが2026年の流儀です。

 分解のポイントは、動詞で記述すること。「業界動向を調べる」「提案の方針を決める」「ドラフトを作成する」など、アクションが見える形にします。

ステップ2:各タスクを「AI向き」「人間向き」に仕分ける

 次に、各タスクを仕分けます。あなたの仕事の中で、どれがAIに任せられて、どれが人間の判断を必要とするでしょうか。

 ここでの判断基準は、第5章で紹介した5つのポイントを再び適用します。 おさらいになりますが、以下のいずれかに該当する場合は「人間向き」のタスクであり、ループの中に必ず人間のチェックポイントを設けるべきです。

 ・取り返しがつかないか

 ・金が動くか

 ・社外に出るか

 ・権限が必要か

 ・察しが必要か

 逆に、これらすべてが「いいえ」であれば、そのタスクはAIに任せきって問題は、ほぼありません。

ステップ3:ループを設計する

 最後に、AIと人間が交互に処理するループを設計します。

 ここで重要なのは、一方通行ではなく「ループ」にすることです。AIがドラフトを作る → 人間がチェックする → AIが修正する → 人間が最終確認する。このように、AIと人間が何度も行き来することで、成果物の品質が上がっていきます。

 ループを紙に書き出してみてください。人間とAIが交互に登場する流れ図ができれば、設計は完了です。あとは実行しながら、ループを調整していくだけです。

9. 2025年を繰り返すな

 ここで、1つだけ警告を発しておきます。

 すでに「2026年こそAIエージェント元年だ」という声が聞こえ始めています。GPT-5.2やGemini 3の性能向上を見て、「今度こそ丸投げできる」と期待している人がいる。

 断言します。モデルの性能がいくら上がっても、「丸投げ」は機能しません。

 なぜなら、問題の本質は技術ではないからです。「部長は慎重派」「B社はNG」という情報は、GPT-6になっても、GPT-7になっても、おそらくAIには見えません。誰かが言語化してAIに渡さない限り、です。

 だから、2026年に必要なのは、極論すると、より賢いAIモデルを待つことではありません。仕事をタスクに分解し、AIと人間のループを設計する。この地道な作業を省略する企業は、2026年も同じ壁にぶつかるでしょう。

10. 2026年は「設計元年」になる

 最後に、冒頭で紹介したDX推進部長の話に戻りましょう。

 「AIエージェントを導入したんですが、結局、誰も使っていないんですよ」

 この会社は「失敗した」のでしょうか。僕はそうは思いません。タスクの分解とループの設計が不足していただけです。

 この会社がやるべきことは明確です。まず、現場の仕事をタスクに分解する。次に、各タスクが「AI向き」か「人間向き」かを判定する。そして、AIと人間が交互に処理するループを設計する。

 「デモでは動くけど、実務では使えない」のは当然です。デモは「定義されたタスク」で行われ、実務は「定義されていない仕事」で溢れているのですから。仕事を「タスク」に分解し、「ループ」を設計する。この一手間を加えることで、AIエージェントは初めて実務で機能するようになります。

結びに ― 仕事のどの部分を、AIと分かち合えるか

 2025年は「失敗の年」ではありません。「学びの年」でした。

 僕たちはAIの限界を学んだのではありません。仕事の本質を学んだのです。

 仕事とは、タスクの寄せ集めではない。人間同士の関係性の中で、暗黙の了解が生まれ、判断が行われる営みです。だから、仕事を丸ごとAIに任せることはできない。

 しかし、仕事を「タスク」に分解し、AIと人間が交互に処理する「ループ」を設計すれば、話は変わります。情報が明示的に渡され、人間の判断が適切に介在する領域では、AIは驚異的な力を発揮するのです。

 「AIが仕事を奪うのか?」という問いは、正確には違います。正しい問いは「仕事のどの部分を、AIと分かち合えるのか?」です。

 そして、その答えを見つけるためには、自分の仕事を棚卸しし、タスクに分解し、どこにAIを入れ、どこに人間の判断を残すか、その業務ループを設計する必要があります。

 2026年は、エージェント元年ではありません。「業務ループの設計」の元年になります。

 Human-in-the-Loopの設計。この地道な作業に真摯に向き合う企業だけが、AIの本当の価値を手にするでしょう。

 2026年が始まりました。

 自分の部署の業務を「タスク」に分解し、「業務ループ」を設計するところから、始めてみませんか。モデルの自律性も進化しますが、何よりも、業務ループを設計すること、それがAIエージェント利用の鍵になります。


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コメント


注目のコメント

  • 中山 高史
    日本ビジネスシステムズ株式会社 AIトランスフォーメーション事業本部 執行役員

    この記事は、「AIエージェントを入れたのに現場で使われない」という相談を何度も受けたことから書きました。

    2025年は、AIの「考える力」や「自分で手順を組み立てる力」が伸び、企業向けの管理の仕組みも整い始めた年でした。

    たとえば「仕事として使えるか」を測る新しいものさしが現れ、エージェントにも社員証のようなIDを与えて、問題が起きたら止められる仕組みも出てきた。

    それでも定着しなかった理由は、AIの能力不足というより、仕事の渡し方が雑だったからだと僕は見ています。

    現場では、成果物が平均70点で返り、人が90点に引き上げる修正に追われます。ゼロから書くより時間は短くても、文脈の穴を埋める作業が精神的に重い。結果として「これなら自分でやった方が早い」が勝ち、導入が止まる。ここに「導入」と「定着」の溝があります。

    一方で、2025年に確実に変化が起きた領域もあります。

    資料を渡せば要約や構成を返すツール、やることと判定基準が文書で決まっている開発支援、公開情報を集める調査支援。これらは共通して、必要な情報が最初から明示され、評価の軸が比較的はっきりしています。

    逆に、提案や稟議、顧客対応のように「部長は慎重派」「この競合名は出さない」といった“言葉にしていない前提”が支配する仕事は、丸ごと任せるほど失敗しやすい。

    だから僕が提案したいのは、仕事を小さな作業に分け、AIと人が交互に処理する流れを設計することです。

    ここで言う「人間参加型」とは、AIが作った下書きを人が方針と確認で制御し、必要な文脈を注入してから次のAI作業へ返す、という循環を指します。

    取り返しがつくか、お金が動くか、社外に出るか、権限が要るか、察しが要るか。こうした観点で「人が入る場所」を先に決めると、エージェントは急に実務に馴染みます。

    読み終えたら、まず一つの業務を選び、作業に分解してみてください。次に一週間試し、現場のエースに「修正なしで使えるか」だけで判定する。合格しない箇所こそ、人が入るべきポイントです。

    2026年は、エージェント元年ではなく「設計元年」になる。僕はそう確信しています。


  • 山内 怜史
    株式会社Sun Asterisk AIストラテジスト | Biz x Tech x Creative | シニアビジネスデザイナー

    2025年のAI動向を技術進化と企業導入の両面から適格に評価・分析された良記事です。
    2025年の1年間の振り返り記事としても大変情報価値の高い内容です。

    同じAI×ビジネスの専門家として補足コメントします。


    ■AIエージェントについて
    AIエージェントの定義が人によって違うので「自律的にタスクを遂行するAI」と定義します。
    OpenAI共同創設者のAndrej Karpathy氏は昨年10月のインタビューで、「the decade of agents(エージェントの10年)」と表現し、現在のAIエージェントが認知的に不十分でマルチモーダル性や継続学習が欠如しているため、信頼できる実用レベルに達するまで約10年必要とコメントしています。
    Andrej氏ははOpenAI共同創設者で、スタンフォードPhD取得後、OpenAIでGPT-4を率い、TeslaでAutopilotを指揮。現在Eureka LabsでAI教育を推進している最先端のAI研究者です。

    2025年初頭は「AIエージェント元年」と騒がれましたが、彼の発言により「AIエージェント」の実現が先送りになるというのが現状の見立てです。

    ■人とAIの関係性
    現在の生成AI(LLM)は動作原理上、確率論的に最も意味が近い文字を紡ぎ出すマシンである為、良い/悪い、正しい/間違っている、という判断基準や感情を持ちません。
    知的な回答をするのでユーザーインターフェース上、そう見えているだけです。
    ハルシネーションという現象も100%防ぐことが原理上出来ないということです。

    従って、著者の主張通り「AIに任せる」という思想は危険です。
    AIの動作原理を正しく理解した上で、以下の考え方でAIと向き合うのが最も合理的な関係性であり、使い方だと考えます。

    「10:80:10の法則」

    まず人は仮説を立て、仮説に基づき"問い"を立てます。
    "問い"の鋭さや解像度が人の価値の源泉です。
    →10%の部分

    立てた"問い"は生成AI(LLM)に投げます。
    正しいプロンプト設計をすればアウトプットは8割方、要件に沿った成果物が出来上がります。
    →80%の部分

    生成AI(LLM)のアウトプットを批判的思考で評価して人が修正する。
    →10%の部分。


  • 武井 涼子
    一般社団法人奏楽会代表理事/オペラ歌手/ヤンマーホールディングス株式会社社外取締役/ローランド株式会社社外取締役

    マーケティングのツールもそうでしたが、ある程度誰でも使えるようになるには10年くらいはかかるんじゃないですかね…


  • 比屋根 一雄
    三菱総合研究所 研究理事 AI技術顧問

    AIエージェントを採用するためには、明確な業務定義が必要ということですね。賢いけれど右も左も分からない新人みたいなものです。

    新人なら自分で学んで業務に慣れてくれますが、AIエージェントは毎回きちんと指示を出さないと仕事ができません。

    だから業務定義に加えて各企業毎にオンボーディングとOJT、実務経験からの学習が必要です。ただ、今のChatGPTにはそんな機能はありませんので、外側に作ってあげる必要があります。

    もっとも1〜2年後には「継続学習」が搭載されるはずので、各企業毎の適応方法が定式化されるでしょう。その進化に備えるためにも、今のうちからしっかり業務定義しておくことには大きな意義があります。

    AIエージェント時代の企業競争力は、「どれだけ賢いAIを買ったかではなく、「どれだけ再利用可能な育成資産を持っているか」で決まるからです。


  • 小澤 健祐
    おざけん / AICX協会 代表理事 / 「生成AI導入の教科書」著者 / 生成AI活用普及協会 協議員

    2025年のAIエージェント「期待外れ」の分析は、AI導入支援の現場感覚と完全に一致します。

    多くの企業が2025年に「AIエージェントで業務を自動化する」と意気込みましたが、実際にはPoC止まりが大半でした。原因は明確で、①既存システムとの連携の複雑さ、②エラー時のリカバリー設計の甘さ、③人間の承認フローとの不整合の3点です。

    しかし2026年に入り、Claude CodeやGPT-5.4のcomputer use機能により状況が一変しています。AIが直接PCを操作できるようになったことで、従来のAPI連携では不可能だった「レガシーシステムとの接続」が実現しつつある。これは企業のAIエージェント導入における最大のボトルネックが解消されることを意味します。2025年の失敗は「技術の未成熟」ではなく「インフラの不足」だったと、今なら断言できます。


  • 佐藤 卓
    オジサン法律受験生

    いま、まったくAIに縁がない仕事をしていて、最近のAIの進化のニュースを見るにつけ浦島太郎になることを恐れて頭の体操だけはしている状況です。
    現場のいまと課題、対策がわかりやすく書かれていて一気読みしました。

    余談のようですが、会社が生産性を高めようとすると、現場はもっと自分の仕事が増えてしまいかねない状況だと拒否反応を覚えたりもしそうです。仮に自分の仕事が増えてもその分の報酬がもらえればいいものの、その保証がないなかでは現状維持に向かいかねない、とかいう目に見えない従業者心理もあったりはしないか。


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