【独自第2弾】「性的嗜好」や「異性関係」の項目も 陸自部隊による情報収集 日本人大学教授ら対象

熊本日日新聞 2026年7月24日 09:30
熊本日日新聞が入手した個人BSD報告書。飲酒や喫煙といった「嗜好」のほかに「性的嗜好」や「異性関係」の項目もあった(記載内容はぼかしています)
熊本日日新聞が入手した個人BSD報告書。飲酒や喫煙といった「嗜好」のほかに「性的嗜好」や「異性関係」の項目もあった(記載内容はぼかしています)

 陸上自衛隊中央情報隊(東京・埼玉、朝霞駐屯地)の対外情報部門「現地情報隊」が、日本人の大学教授ら市民を対象に「愛国心」など思想信条の情報を組織的に調査・収集しているとみられる問題で、調査項目に性的嗜好[しこう]や異性関係、身体的特徴といった極めて私的な情報が含まれていたことが23日、元隊員らへの取材で分かった。これらの情報は本人の同意なく集められ、報告書は公文書として扱われていないという。

 元隊員によると、現地情報隊は大学教授やNPO法人関係者らに接触。「個人BSD(ベーシックソースデータ)報告書」と呼ばれる文書を作成し、部隊内で保管していた。この報告書には、対象者の顔写真や学歴、職歴、家庭環境といった基本情報のほか、異性との交際関係、資産や負債などの金銭状況、日頃の金銭感覚、賞罰、犯罪歴を記載する項目があった。

 さらに、NPO法人代表の男性の報告書には、肌や瞳、髪の色、身長や体重などの記載があった。別の女性の報告書には「ぽっちゃり」などと体形の特徴が書かれていた。

 収集された個人情報には性的嗜好も含まれていた。元隊員は「性的嗜好に限らず酒やたばこ、女好きなどを利用して接触する機会をつくることができる。女性隊員もいるため、それを利用して接触することもある。情報を得る手段の線引きはない。実際にお金に困っている人には交通費などの名目でお金を渡すこともある。予算は情報活動費として公にはされていない」と証言した。

 報告書は現地情報隊の拠点がある朝霞駐屯地で保管されているが、いずれも公文書としての登録や管理はなされていないという。報告書を知る人は自衛隊内でも一部にとどまり、防衛相ら文民には知らされていないとされる。

 自衛隊による情報収集活動を巡っては、イラク派遣反対運動に参加した東北6県の市民が情報保全隊に監視されたとして、2007年10月に国を提訴。仙台高裁は16年2月、一部行為についてプライバシーを侵害し違法であると判断した。「個人がみだりに自らの情報を取得され、第三者に公表されない自由は、人格権として法的保護に値する」と判示した。

 この訴訟で市民側の弁護団事務局長を務めた小野寺義象弁護士は「判決で司法が違法と明確に断罪し、国も上告を断念して損害賠償金を支払っているにもかかわらず、現在も反省することなく、本人の同意のない個人情報の組織的収集が行われているとすれば看過できない。国は早急にその実態を明らかにするべきだ」と指摘した。

 防衛省は「事実確認に時間はかかるが、何らかの対応は行いたい」としている。(植木泰士、小山智史、迫田真帆)

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