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一遍聖絵

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一遍上人絵伝から転送)
「一遍聖絵」第7巻 四条釈迦堂

一遍聖絵(いっぺんひじりえ)または、一遍上人絵伝(いっぺんしょうにんえでん) は、伊予国(現在の愛媛県)に生まれ浄土宗を修めたのち、新しく独自の宗旨である時宗を興した開祖一遍(遊行上人)を描いた絵巻。全12巻で構成[1]国宝[2]

概要

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一遍の異母弟(一説には実弟または甥)でその弟子ともいわれる聖戒がその報恩のために作成した[1][3]。奥書には、1299年正安元年)一遍の弟子にあたる聖戒が詞書を起草し、法眼の地位にあった画僧円伊が絵を描いたとある。

「一遍聖絵」は「六条縁起」または単に「聖絵」ともいう[3]。絵巻では一遍の旅が描かれ、南は九州大隅正八幡宮から北は奥州江刺郡(岩手県北上市)にまで及び、聖戒はその作中で一遍に同行したり旅先から書状を受け取っている[3]

「一遍聖絵」は別名「六条縁起」と言われるように、他阿真教の「遊行派」に対して、自らの系統である「六条派」(時宗十二派の一つ。本寺は六条歓喜光寺)が一遍の正統的継承者であることを示そうとした編集意図も推察される。しかし後の遊行派の教団色が強く、一遍と遊行派開祖他阿真教を神格化する『遊行上人縁起絵』に比べると、教団色はさほど強くなく対照的である[4]

訪問地には熊野大社善光寺四天王寺など各地の寺社を含む[3]。描写の写実性には議論がある点も含まれているが、鎌倉の風景などは同時代に描かれたものとして唯一のものとされる[2]

内容

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全体的に人物を小さく扱い、背景の自然描写に大きな関心が注がれ、四季風景を美しく描いた歌絵は名所図絵的な趣を伝える。

人物や建物の的確な描写には鎌倉時代写実主義的な傾向が強く見られ、山水の描写には中国宋代の影響が指摘される。大和絵の伝統と外来の宋画の力強い表現を加えた作風は独得で、類似の作品が見られることなどから、「円伊派」の存在を推定する説もある。

詞書は、五彩に染めた絹布料紙に、当時の能書家4人の筆で書きつづられる。

踊念仏

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作中には、一遍による踊念仏が描写されている(小田切里の踊り念仏(4巻)、片瀬の浜の踊念仏(6巻)、関寺の踊念仏(7巻)、市屋道場の踊念仏(7巻)、上野の踊り屋の踊念仏(9巻)、淡路の二の宮の踊念仏(11巻))[5] [6]。踊りの舞台として高床の櫓を建て、その中で大勢の僧侶が一遍上人とともに輪になって歌い踊っている様子がうかがえる。

片瀬の浜の地蔵堂の推定跡地(片瀬3丁目まちかど公園)

一遍が踊念仏を行ったとされる片瀬の地蔵堂の推定地は、現在「片瀬3丁目まちかど公園」になっており、「一遍聖絵」第六巻を示したパネルがある。

片瀬3丁目まちかど公園の一遍聖絵の説明 説明パネル
片瀬3丁目まちかど公園の一遍聖絵の説明
説明パネル


現存作品

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通称「歓喜光寺本」と通称「御影堂本」がある[3]

歓喜光寺本
国宝本は神奈川・清浄光寺蔵(京都・歓喜光寺旧蔵)[7]。全12巻48段からなる[2]。国宝指定名称は「絹本著色一遍上人絵伝」。第7巻の絵は後補で、元の第7巻は江戸時代後期に歓喜光寺から流出し、原富太郎(原三溪)らの所蔵を経て、第2次大戦後、現在東京国立博物館が所蔵する。
御影堂本
新善光寺(長浜市)が移転する前の六条「御影堂」が六条道場歓喜光寺に隣り合って位置していた時の縁で、『一遍聖絵』を借り受けて複写し、『一遍聖絵』御影堂本となった。近代に入って流出し、前田侯爵家を経て尊経閣文庫奈良県山林王が所有している。

ギャラリー

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一遍上人絵伝 巻第七(東京国立博物館)全巻

脚注

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  1. ^ a b 相澤正彦「「一遍聖絵」の入洛場面にみる絵画表現をめぐって」『美學美術史論集』第22巻、成城大学大学院文学研究科、2020年3月、59-93頁、ISSN 0913-2465CRID 1050567175305286912 
  2. ^ a b c 常設展示品キャプション集”. 神奈川県立歴史博物館 (2016年5月). 2022年12月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e 石井 悠加「『一遍聖絵』の和歌―旅の実景として―」『四国大学紀要』第58号、四国大学、61-72頁、CRID 1050856130181320448 
  4. ^ 大橋(2001)p.13-
  5. ^ 大島 康徳; 長澤 可也. “国宝「一遍上人絵伝」の踊念仏の踊りシーケンスの検討”. 2024年3月17日閲覧。
  6. ^ 五味文彦『『一遍聖絵』の世界』吉川弘文館、2021年。 
  7. ^ 神奈川県生涯学習情報システム(2011年12月18日確認)

参考文献

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関連図書

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関連項目

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外部リンク

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