「水平社宣言」の版間の差分
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{{quotation|<span style="display: block;">{{Ruby|全󠄁國|ぜんこく}}に散在する吾が特殊部落民よ{{Ruby|團結|だんけつ}}せよ。</span> |
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⚫ | <p style="text-indent: 1em;">長い間{{Ruby|虐󠄁|いじ}}められて{{Ruby|來|き}}た兄弟よ、{{Ruby|過󠄁去|かこ}}{{Ruby|半󠄁世紀︀間|はんせいきかん}}に{{Ruby|種々|くさぐさ}}なる方法と、多くの人々とによつてなされた{{Ruby|吾等|われら}}の{{Ruby|爲|た}}めの{{Ruby|運󠄁動|うんどう}}が、{{Ruby|何等|なんら}}の有難︀い効果を{{Ruby|齎|もた}}らさなかつた{{Ruby|事實|じじつ}}は、{{Ruby|夫等|それら}}のすべてが吾々によつて、又他の人々によつて{{Ruby|每|つね}}に人間を{{Ruby|冐瀆󠄂|ぼうとく}}されてゐた罰であつたのだ。そしてこれ{{Ruby|等|ら}}の人間を{{Ruby|勦|いたは}}るかの{{Ruby|如|ごと}}き運󠄁動は、かへつて多くの兄弟を墮落させた事を想へば、{{Ruby|此際|このさい}}{{Ruby|吾等|われら}}の中より人間を{{Ruby|尊󠄁敬|そんけい}}する事によつて自ら解放せんとする者の{{Ruby|集團運󠄁動|しゅうだんうんどう}}を{{Ruby|起󠄃|おこ}}せるは、{{Ruby|寧︀|むし}}ろ必然である。</p> |
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全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。<br> |
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⚫ | <p style="text-indent: 1em;">兄弟よ、 吾々の{{Ruby|祖︀先|そせん}}は自由、{{Ruby|平󠄁等|びょうどう}}の{{Ruby|渴仰者︀|かつこうしゃ}}であり、{{Ruby|實行者︀|じっこうしゃ}}であった。{{Ruby|陋劣|ろうれつ}}なる階級政策の{{Ruby|犧牲者︀|ぎせいしゃ}}であり男らしき{{Ruby|產業的殉敎者︀|さんぎょうてきじゅんきょうしゃ}}であつたのだ。ケモノの皮剝ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剝取られ、ケモノの心臟を裂く{{Ruby|代價|だいか}}として、{{Ruby|暖󠄁|あたたか}}い人間の{{Ruby|心臟|しんぞう}}を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の{{Ruby|惡夢|あくむ}}のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、{{Ruby|涸|か}}れずにあつた。そうだ、そして吾々は、この血を{{Ruby|享|う}}けて人間が{{Ruby|神︀|かみ}}にかわらうとする時代にあうたのだ。{{Ruby|犧牲者︀|ぎせいしゃ}}がその{{Ruby|烙印|らくいん}}を{{Ruby|投げ返󠄁|なげかえ}}す時が來たのだ。{{Ruby|殉敎者︀|じゅんきょうしゃ}}が、その{{Ruby|荆冠|けいかん}}を{{Ruby|祝︀福︀|しゅくふく}}される時が{{Ruby|來|き}}たのだ。</p> |
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⚫ | <p style="text-indent: 1em;">吾々は、かならず卑屈なる言葉と{{Ruby|怯懦|きょうだ}}なる{{Ruby|行爲|こうい}}によつて、{{Ruby|祖︀先|そせん}}を辱しめ、人間を{{Ruby|冐瀆󠄂|ぼうとく}}してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、{{Ruby|何|ど}}んなに冷たいか、人間を{{Ruby|勦|いた}}はる事が{{Ruby|何|な}}んであるかをよく知つてゐる吾々は、心から人生の熱<ref name="注">原文の字体は[[File:熱 - U+71B1 variant character.svg|frameless|30px]]である。</ref>と光を{{Ruby|願求禮讃|がんぐらいさん}}するものである。</p> |
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<p style="text-indent: 1em;">{{Ruby|水平󠄁社|すいへいしゃ}}は、かくして生れた。</p> |
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<p style="text-indent: 1em;">人の世に熱<ref name="注">原文の字体は[[File:熱 - U+71B1 variant character.svg|frameless|30px]]である。</ref>あれ、{{Ruby|人間|じんかん}}に光あれ。</p> |
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水平社は、かくして生れた。<br> |
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人の世に熱あれ、{{Ruby|人間|じんかん}}に光あれ。<br> |
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大正十一年三月|1922年3月3日、京都市・岡崎公会堂にて宣言}} |
大正十一年三月|1922年3月3日、京都市・岡崎公会堂にて宣言}} |
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2022年3月3日 (木) 16:42時点における版
水平社宣言(すいへいしゃせんげん)は、全国水平社創立大会で採択された宣言文[1]。全国水平社創立宣言とも呼ばれる[2]。
1922年、全国水平社創立大会が開かれ、水平社宣言は西光万吉が起草し平野小剣が添削し[3]、駒井喜作が読み上げた[4]。
本文
1922年3月3日、京都市・岡崎公会堂にて宣言
特徴
- 米騒動後の同情融和思想の本質が人間の冒涜であることを、両義的字句の「勦(いたわる。 旧かな遣い : いたはる)」を二ヶ所用いて表現した。同時に「勦」の送り仮名に「抜け字」(脱字)を用いて「る」とし、もう一つには「はる」と表示した。これは起草者西光万吉が人権宣言の未完を通じて、人権確立の困難性を示唆しようとしたものである。なお、西光は美術家でもあり、当時の外来の芸術思潮として受容された「ドイツ表現主義」の影響を受けて、内面からの表現を重視した。反差別に対して集団運動の必然性を説き、根元的な人間の尊厳を高唱した。
余話
- 米国、ロシア、英国、フランス等においては、『日本で初めての本来民衆による解放運動が起こった』との旨で、トップニュースで伝えられたという。
- 締めの一文である『人の世に熱あれ、人間に光あれ』は、人権標語などにたびたび用いられ、広く認知されている。
- 水平社創立、水平社宣言発表までを描いたドラマ「3月3日の風」がある。
- 締めくくりの言葉にある「人間」を(じんかん)と読むのは仏教由来である。「人に個別に光があたるんじゃなくて、人と人の間の万物すべてに光があたることで、人も物も平等になるという意味」とのこと。初出は『部落解放』1995年390号(解放出版社・1995年6月10日発行)にある永六輔のインタビュー記事「ぼくが出会った西光さん」である。記事では、浄土真宗の家に生まれた永が西光に「『人間』は『にんげん』と読むんじゃなくて、『じんかん』と読むんじゃないんですか」と質問し、西光は「いいんです、『にんげん』で。でも、ほんとうは『じんかん』なんです」と回答している。
- 一方、全国水平社が発行した『水平』第一巻創立大会号(水平出版部・1922年7月発行)の「全國水平社創立大會記」では、水平社宣言が振り仮名つきで掲載されており、本文では「人間(にんげん)」と読んでいる。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 馬原鉄男『新版 水平運動の歴史』部落問題研究所、1992年4月。ISBN 4-8298-2039-X。
- 朝治武『差別と反逆 平野小剣の生涯』筑摩書房、2013年1月。ISBN 978-4-480-88529-6。