管理職経験者は重宝される
前回の記事で、私は「現代のおじさん(50代もしくは40代後半のビジネスパーソン)」が抱えている3つのリスクについてご紹介しました。
「そんなこと分かってるけど、アラフィフからいまさら何ができるというのか」「そんなネガティブなことは考えたくない」と思う人もいるでしょう。
でも、安心してください。
すべての人が危機に瀕しているわけではありません。
マラソンで言えば、30キロ地点を越えてもゴールめがけて涼しい顔をして走っている人もいるのです。
では、このままいくと危機に瀕してしまうのは、どんな人なのでしょうか?
それは、課長以上の管理職として5年間以上勤めた経験がない人です。
課長以上の管理職経験は、転職する際に大きなポイントとなります。つまり、勤めている会社から早期退職を突きつけられたときに、逃げ道があるのです。
40代や50代の転職は厳しいという声はよく聞きますが、正確にいえば「役職が課長未満の人」は厳しいということです。
なぜ、課長以上の管理職経験者は転職市場で重宝されるのでしょうか。
みなさんは、こんな都市伝説を聞いたことはありませんか?
転職活動で面接官から「あなたは何ができるのですか?」と聞かれ、「部長ならできます」と答えた50代の管理職経験者の男性がいたという話です。笑い話として語られていますが、じつはこれ、あながちばかげた話でもないのです。
中小企業は管理者教育が十分ではないため、管理職候補が不足していることが多いのです。日本に上陸して日が浅い外資系企業や、スタートアップ、ベンチャー企業もまた、同様に管理職が不足しています。
つまり課長以上の管理職経験がある人には、意外と転職の門戸が開かれているのです。
実際、私が務めていた中堅印刷会社でも、様々な部署に40代以上の中途採用者が管理職として入社してきました。こうした求人はハローワークや転職サイトなどで公にはされておらず、知り合いを介したリファーラル採用によって行われています。
面接にさえたどり着けない?
一方、管理職経験がないおじさん社員の転職活動は厳しいものがあります。書類選考で落とされ、面接にさえたどり着けないことも多いでしょう。いまの会社以外に活路を見出すのが難しく、好転のきっかけを得られないのです。
現代は昇進の年齢が遅れる傾向があるとはいえ、大半の会社では早ければ30代後半、遅くとも40代の前半には課長まで昇進します。つまり40代後半になって課長以上の役職に就いていない、もしくは就いたとしても維持できなかったという人たちは、今後の好転が難しいのです。
「管理職になれなかったのは運が悪かっただけだ」「管理職になったあいつよりも俺のほうが実務はできた」「営業力なら課長よりも俺のほうが上だ」「俺は上司ではなく、顧客を第一に考えてきた」と反論する人もいるでしょう。
たしかに協調性や会社への忠誠心を昇進のポイントとする会社もあるため、実務能力がそれほどない管理職もいるでしょう。しかし、転職市場において「役職名」が一定の効果を発揮するのは、揺るぎようのない事実なのです。
「課長ではないけど係長ではあるから、頑張れば今後、課長を目指せるはず」という人もいるかもしれませんが、正直、微妙なところです。
まだまだ年功序列の意識が残っている日系企業のなかには、勤続年数さえ長ければ温情で係長までは昇進させてくれる企業もあります。
しかし課長への昇進となると、試験を受ける必要があるなど一定の基準がある場合が多く、社内政治で誰でもなれるわけではないでしょう。
よって、40代後半以上で、課長以上の役職に就いていない方は、会社にしがみつくのとは別の生存戦略を考える必要があります。
管理職だけが持っているスキル
「他の人ができない専門的な能力を持っていれば、会社はいつまでも必要としてくれる」と考える人もいます。たしかに雑誌やウェブ記事でも、50代以上のサバイバル術として紹介されているのをよく目にします。
ですが、会社にとって必要な専門能力は、時代とともに変わっていきます。たとえば30年ほど前までは、手書きの文章をパソコンなどで清書するオペレータという仕事があり、入力速度が速い人は重宝されていました。しかし、ほとんどの人が当たり前にパソコンを使う現代では、入力速度が武器になることはないでしょう。
むしろ専門スキルを持っていても、自分だけが担当している業務を周囲に見せずブラックボックス化して抱え込んでいると、経営者から厄介な社員だと思われるリスクもあります。
DX化により、専門知識や能力を持った人ですら必要なくなるおそれもあります。
もはや特定の能力だけでは、自身の存在価値は担保できないのです。
一方で、管理職に就いている社員は、それなりに持っている能力があります。
昨今は会社で働く人も多様性に富むようになってきています。パート社員や派遣社員、外国人労働者、定年退職後に嘱託で働き続ける高齢社員、これら多様なスタッフを管理する能力は、誰にでもあるものではないでしょう。
また、セクハラやパワハラなどのリスクがあれば、その地位を保つことはできません。管理職であることは、そういった事実がなかったことの証明にもなります(ワンマン社長が私物化している中小企業や、過酷なノルマを課すブラック企業は別かもしれませんが……)。
「駄目な自分」を受け入れよ
だからこそ、管理職経験がある人は「少なくともこの人を採用しても部下たちに迷惑をかけて社内を混乱させる心配はないな」と、安心してもらえるのです。残念なことに、管理職に就いていない人よりも社外における評価は高くなります。
残酷なことをいえば、サラリーマン人生であなたは負けてしまったのです。
「直属の上司との相性が悪かった」「配属された部署が時流にのらなかった」などの運に左右された要素もたしかにあったのかもしれません。
ですが、入学試験やスポーツの試合は結果だけが残るように、会社員としての評価も同じです。「あいつより普段は俺のほうが成績はよかった」「練習では俺のほうが上手かった」と言っても真に受ける人はいないでしょう。
私も、50歳近くになっても管理職にはなれませんでした(実務も誇るほどのものはありませんでしたが)。現実に目を向けるのはつらいかもしれませんが、自分のいまの立ち位置を受け入れることが、第一歩となります。
ただ、これで終わりというわけではありません。
人生100年時代、前半戦は負けてしまったとしても、まだ後半戦があります。
思い出してください。マラソンでも30キロ地点からが勝負といわれています。
後半戦で挽回すればいいのです。
その方法として、転職や社内での出世が難しい方におすすめしたいのが、「資格」を取り、その資格で仕事をすることです。
私も50歳で資格を取って社労士となったことで、サラリーマン時代から年収は上がり、仕事の充実感も得られるようになるなど、新しい人生を切り開けました。
これは決して簡単な道ではなく、資格取得後も営業などの努力は必要です。それでも、資格試験は学歴、役職、年齢、そしてこれまでのキャリアやスキルも関係なく、誰しもに平等に開かれた門戸です。いまの環境の延長上に幸せな未来が描けない人のための、敗者復活戦なのです。