大小合わせて526社の働き方改革を支援している、株式会社クロスリバーの越川氏。今回は、各社の「成績上位5%社員」の働き方を分析し、その共通点を抽出する。
上位5%の人たちは何を考えているのか
連載の第一回でも述べた通り、私は「週休3日、週30時間」というワークスタイルを実践しています。その狙いは単に「週休3日を実現すること」でも「労働時間を短くすること」ではありません。従来と同じ働き方で労働時間を短縮したのでは、ただ成果が落ちてしまうだけです。これでは意味がありません。
時間と場所に縛られない働き方をしながら、より高い成果を出すためには、仕事の仕方そのものを見直す必要があります。そして、時間と健康を気にせずに、働きたいだけ働いて成果を残すという古めかしいワークスタイルは、もう許されません。働く時間あたりの成果を上げ、長期的に収入を上げていくことを目指します。
弊社では、これまでに526社に対して「働き方改革の支援」を行ってきましたが、その過程で「それぞれの会社において顕著な成果を出した人が、どのような行動・働き方をしているか」について調査をしてきました。顕著な成果を出した人は、優れた働き方を実践しており、そこに一般化できる要素があるはずだ、と考えたからです。
そこで、各社にご協力いただき、人事評価で上位5%に入っている方々の働き方をリサーチさせていただきました。
各クライアント企業の人事評価で上位5%を獲得する人たちは、もれなく著しい成果を出した各社のエースです。この、「5%社員」の一部の方に対して、デスクに定点カメラを設置したり、ICレコーダーやセンサーを装着してもらったり、クラウドサービスや対面ヒアリングなどを通じて行動を記録します。
それらデータをAIと専門家によって分析してもらい、一日の仕事のなかでどんな行動をしているか、どんな会話をしているか、を抽出しました(ちなみに彼らにはいつもどおりの行動をお願いして、情報を収集しました)。
その結果、顕著な成果を出す人に共通する「働き方」がわかってきました。今回は、この「5%社員」の働き方についてお話したいと思います。
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「レスポンスの速さ」「無駄のなさ」
大きな特徴のひとつめは、「レスポンスの速さと無駄のなさ」でした。とにかく、社内外から送られてくるメールやメッセージに、素早く反応していたのです。
相手を待たせれば待たせるほど、その仕事の進捗は遅くなります。また、相手を待たせると、その分、相手の返信も遅くなります。
皆さんも経験があると思いますが、金曜日の夜、あと一本相手からの電話やメールが来れば仕事が終わるのに、なかなかそのメールが来ないという状況を思い浮かべてください。
「あいつ、何やってんだよ…!」と苛立つでしょうが、よく考えてみると、それは、あなたの最初の返信・反応が遅かったことに原因があるのかもしれません。相手からの依頼や確認に即応していれば、それだけ仕事の進むスピードが速くなり、効率化が進むのです。
「即応」を実践するために、彼らはメールの送り方にも工夫をしていました。
特に注目すべきは、メールの文字数です。私どもが調査した結果では、「5%社員」が送るメールは極めてシンプルなものでした。
これは我々がAIを使って行った分析でも明らかになっているのですが、実際、メールの本文が105文字を越えると一気に既読率(相手に読まれる可能性)が下がります。とりわけ役職が上の人ほど、丁寧さよりも要件が明瞭に伝わるコンパクトさを重視することもわかっています。
いかに、少ない労力で相手を確実に動かすか。「暑い日が続いておりますが」や、「先日の会合では大変いい時間を過ごすことができました」、なんて冗長な表現は、5%社員のメールにはほとんどみられません。社内メールなら、「お疲れ様です」のひと言もない。
ここまで簡略化されると、「ドライだ」」「失礼だ」という人も出て来るかもしれませんが、実は、「そう思われないこと」にこそ、彼ら上位5%の秘密があります。彼らは日ごろから、重要なメールを送る相手(上司や取引先)と密なコミュニケーションを取っており、メールに「お疲れ様です。」のひと言がないぐらいでは、どうこう言われるような関係にはとどまっていないのです。
5%社員のメールは非常にコンパクトでありながら、受け取る側に冷たい印象も与えない。メールの文章が短いと言うことは、打つ時間も短くてすむため、他の仕事に費やす時間に充てられる。相手からの反応も早いので、すべての仕事を迅速に回すことができるのです。
行動ファースト
次の大きな特徴として浮かび上がったのが、彼らは「行動ファースト」である、ということでした。
とてもシンプルですが、生産性を高めるには、止まって考える時間より、「動きながら考える」ことが重要だったのです。
当然のことですが、彼らも判断ミスや失注などの失敗もしていることが分かりました。ただ、早い段階で失敗をしているので、そのリカバリーも早く、次の行動に活かして成功確率を高めていっているのです。面談等でこの点について伺っても、「失敗した後こそがチャンスだ」と答える人が多く、修正力が高いと感じました。
次に特徴的だったのが「接点の多さ」です。顧客のところに訪問する時はもちろんですが、「5%社員」は、社内でも動き回って、自発的に人との接点を作っていました。それも異なる部門、異なる世代の人たちと、Slackなどのチャットツールも使いこなしながら、会議ではなく「会話を増やしている」のです。
人との接点を作ることにより、直接自分の思いを伝え、仲間を増やし、人を巻き込んでいく。複雑な課題であればあるほど、一人の力では解決できないことを理解していて、多様な人たちとタッグを組み、スピード感をもってどんどん課題を見つけ解決していくのです。
仲間が増えるということは、仕事のお願いをできる人が増えるということです。自分ではやらなくていい仕事、誰かに任せればいい仕事は、仲間たちに積極的に振っていく。「動くこと」が仕事の質を高め、仕事の工程を減らすことにつながるのです。
それも一方的にお願いするだけでなく、自分の得意な仕事を率先して引き取る行動も多々見られました。ギブアンドテイクでスマートに関係を構築していく……それが彼らの仕事をもスマートにしていくのです。
待たせない
5%社員の特徴をもうひとつあげましょう。彼らの行動を分析すると、二つ、よく口にする言葉がありました。いわば、仕事を効率的に進める「魔法の言葉」です。
それは、「今いいですか?」と「それはできません」です。
とてもシンプルな言葉ですが、この言葉が言えるか言えないかが、「仕事ができる/できない」の大きな分水嶺だったのです。
仕事の効率があまりよくない人は、「こういう話をしたいんですが、来週の木曜日に、60分時間をくださいませんか」と、長文のメールでこんなお願いをしがちです。
相談相手のその時間が空いているかどうかも分からないのに、これでは調整に時間を要しますし、なにより、本当は60分も必要ないかもしれないのに、時間を取ってもらったという気持ちから、60分フルで時間を費やしてしまう。
仕事ができる人は、相手の時間も気にします。だから、誰かに相談するときには、「今いいですか?」と尋ねて、相手が応じてくれたらその限られた時間で目的を達成しようとしますから、話は要点だけになり、お互いに気持ちがいいのです。
「今いいですか?」は相手の気分を損なわず、お互いの効率を高めるための、魔法の言葉なんです。
もうひとつの「それはできません」も非常に重要です。
5%社員には、仕事ができるがゆえに、多くの仕事や相談が降ってきます。これをすべて受けていては、自分が本当にやるべきことに費やす時間が少なくなってしまいます。「嫌われる勇気」ではないですが、自分が何をやるべきで、何をやるべきでないかを明確にして、「できないことはできない」と断ってしまう。それが自然にできていました。
今後、職場にAIが浸透してくると、人間が何をやり、やらないかを決めることが求められると思うのですが、そんな中で彼らの「やらないこと」を決断する能力は、ものすごく重要なのです。ここは、大いに参考にすべきところです。
内省なくして成長なし
さて、5%社員の最後の特徴をあげましょう。それは、「定期的に自分の行動を振り返っている」ということです。
皆さんは、自分のしたことを振り返っていますか? 私どもが調査したところ、5%社員のうち7割近くが「自分の仕事を振り返り」を2週間に1度は行っていたことが分かりました(ちなみに、社員全体で振り返りをしている人は10%にも届きませんでした)。
振り返りを続けると、必ずなんらかの発見があります。その学びを次の行動に活かしていけば、無駄がなくなり目標を達成しやすくなります。少しずつ行動が進化していきます。たとえ小さな前進でも、それが積み重なることで、やがては大きな差になるのです。この振り返りこそが、彼らを上位5%に入るようなエース級の人材にしているといっても過言ではないでしょう。
読者の中には、既に日常の仕事で精一杯で、振り返りの時間を取る余裕などない、という人もいるかもしれません。
はたしてそうでしょうか。
我々が行った16万人の調査では、働いている時間の中で自分がコントロールできる時間は、少なくとも15%はあることが分かりました。
例えば、先に紹介したメールの文章を105文字以内にすることを始めれば、それだけでも処理時間の10%は削減できるはずです。提出した資料の差し戻しが多ければ、先にフィードバックをもらっておけば修正作業は減るでしょう。席に座るだけの定例会議であったらもう出席しないほうがいい。
ちょっとしたコーヒーを飲みながらでも結構です。2週に一度「ああ、この資料、力を入れて作ったのに使われなかったな」とか、「このグラフ、もうちょっとシンプルでもよかったな」とか、改善すべきポイントを見つけて、すぐに直す。
普段の仕事の無駄を省いて、振り返りの時間を生み出し、昨日より一つ、仕事を効率化する。
自分がコントロール領域のなかで改善していけば、限られた時間の中で成果も評価も収入も上がる。
それが、上位5%の人の働き方が教えてくれる、「本当の働き方改革」なのです。