いわくつきの超一等地「六本木TSKビル跡地」を住友不動産が格安116億円でついに取得!

六本木ヒルズとミッドタウンの間に位置する超一等地で、ようやく再開発が始まりそうだ

不動産業界関係者なら誰でも知っている都内屈指の有名物件が、最後の法廷闘争を終え、いよいよ再開発へ向けて本格始動することになった。

六本木の有名物件めぐる訴訟が意外に早く和解決着

広域暴力団「東声会」を率いた町井久之氏が、実業家への夢を託して築き上げた六本木TSKビル――。

2002年に町井氏は死去。以降、地下鉄六本木駅から徒歩数分の場所にあるこのビルは、町井氏が残した複雑な権利関係を解きほぐし、一団の土地に仕上げて“果実”を得ようと、不動産ブローカー、地上げ屋、事件屋、仕事師といった名うてのプロが集まり、腕を競った。

その結果、都内の不動産会社「双海通商」が、系列の都市アーバン開発を使って土地をまとめ、解体して更地にし、2011年10月、大手の住友不動産に売却した。

しかし、すぐに異議が唱えられた。

米国を中心に、日本、香港、インド、フランスなどに投資する1兆円ファンド「マラソン・アセット・マネジメント(マラソン社)」が、「真の所有権者は我々(同社と傘下ファンドのコモン・ウェル・マネジメント・インク)だ」として、住友不動産に対し、所有権移転登記抹消を請求する訴訟を起こした。

外資系ファンドが、日本有数の大手法律事務所を使って法廷闘争を仕掛けてきた。決着までに長期戦が予想され、後述するように、所有権移転の際どさもあって、マラソン社優位の決着も予想された。

そこに至るまでの過程と争点を、私は本コラムで〈住友不動産が米ファンドを返り討ちに!?  バブルの“怨念”渦巻く「六本木TSKビル跡地」をめぐる攻防劇〉(12年6月28日配信)と題してお伝えした。

だが、住友不動産と双海通商VSマラソン社の攻防は、昨年末までに和解で決着。計画を新たに作成、再始動することになった。

住友不動産は、これまでの経緯と今後について、次のように答えた。

「守秘義務もあり、詳細は申し上げられませんが、和解で決着したのは事実です。また、マンション建設計画は白紙に戻し、看板(『建築計画のお知らせ』)も撤去、新たな事業計画を策定中です」(広報部)

そこで、どうような形で決着が図られたかを、関係者への取材を通じて辿って行きたい。

ミニバブル時は「坪5000万円でもおかしくない」

六本木TSKビルは、ビルといっても一棟の建物ではない。円形の中庭を低層のマンションと商業ビルが取り囲み、それぞれが渡り廊下で結ばれる複雑な形状をしていた。

町井氏の“威光”なのか、建物の登記さえなされていない複雑な物件を、双海通商がまとめることができたのは、なぜか。

同社代表の浅井健二氏の兄の哲彦氏が、日本空手松濤連盟の道場主で、警視庁で師範を務めるなど警察当局にパイプがあったこと、健二氏や都市アーバン開発代表などが道場仲間で結束力があったこと、そして彼らの資金源が破綻前のリーマン・ブラザーズで資金力が万全であったこと、などが背景にある。

このリーマンの債権を引き継いだのがマラソン社である。従って、同社の認識では、双海通商と都市アーバン開発は、ダミー会社だった。

ダミー会社の“努力”によって、複雑な権利関係は調整され、競売による所有権移転や合筆によって、08年4月までに、現地は1140坪の一団の土地となった。

-AD-

マラソン社の名は、所有権を示す甲区にも、負債状況などを示す乙区にも登場しないが、マラソン社は必要書類と印鑑類などを法律事務所の預かりとすることによって、権利を保全している“つもり”だった。

しかし、都市アーバン開発=双海通商は、81億円で住友不動産に売却した。坪単価は710万円。

リーマンショック前のミニバブルの際、「坪5000万円でもおかしくない」といわれ、その価値を信じてリーマンから債権を引き継いだマラソン社としては、驚天動地の出来事だった。

住友不動産は超一等地1300坪を116億円で獲得

だから、訴訟を起こした。

①    所有権を示す書類を保有していたのはマラソン社が委託した法律事務所。

②    都市アーバン開発の代表は、ダミーの役割を認識し、その旨を誓う書類にサインをした。

③    都市アーバン開発は銀行口座や代表印を新たに作り、必要書類は紛失を理由に再生した。

こうしたマラソン社の主張を聞けば、資金源がマラソン社であったという事実も含め、マラソン社に理があるように思える。

また住友不動産は、この一団の土地の実質的な権利者がマラソン社であるのを事前に知っていたのに加え、六本木通りに面した入り口部分約120坪は、TSKビルに関わらない部分としてマラソン社が保有していることも承知しており、「善意の第三者」というには無理があった。

しかし、都市アーバン開発は、マラソン社が権利関係の法的な保全をしていないことを理由に売却を実行。住友不動産は、マラソン社とトラブルになるのを承知で購入した。

両社とも外資との訴訟リスクを怖れなかった。それは、モラル面での問題はあっても法的な瑕疵はないという確信からで、「和解による決着」はそれを証明した。

地上34階建てのマンション建設計画は白紙に

関係者によれば、都市アーバン開発は事実上の所有権をマラソン社に譲り、少なくない金額の和解金を取得。

マラソン社は住友不動産が裁判所に供託していた81億円を入手したうえで、出入り口となる重要部分約120坪を約35億円で、住友不動産に売却したという。坪3500万円と高く、ここで“調整”が図られた。

一連の決着で、12年5月に設置された「地上34階建ての共同住宅を建設する」という看板は撤去され、より高度利用の高層オフィスビルが建設されることになろう。

双海通商は苦節12年の“果実”を手にし、住友不動産は116億円と格安の価格で一等地1300坪を取得した。

魑魅魍魎が群がったバブルの物語が、ようやく終わったのである。

\現代ビジネスの記事を見つけやすく/
Google検索で優先表示

関連タグ

おすすめ記事