この国はいったいどうなってしまうのか未婚率と離婚率が急上昇 2030年みーんな一人暮らし日本から家族が消えてなくなる

 絆の時代と言われるが、ほんとうだろうか。現実に目を凝らすと、一人ひとりがバラバラになっていく日本社会の実相が浮かび上がってきた。ただ、一人だけで生き抜くには、この世界は過酷すぎる。

妻とは別れ、友人もいない

〈パナソニック 通期で7650億円の赤字見通し リストラ拡大で年度中に1万人規模の人員削減〉

〈シャープ 過去最悪の赤字決算見通し 62年ぶりの人員削減5000人〉

〈NEC 2000人の早期退職募集〉

 大手電機メーカーを中心に、経営不振に苦しむ各社でリストラの暴風雨が吹き荒れている。

 今年度に上場企業が募集した希望・早期退職者は、すでに昨年度の倍を超える数に膨れ上がっている。

 各企業が自衛のため、正社員から非正規へと雇用を切り替えている。

 その余波で起きていること---それが「家族の崩壊」だ。

 中央大学の山田昌弘教授は日本経済新聞(11月7日付朝刊)に『「標準家族」の維持は困難』と題して寄稿し、バブルが崩壊した'90年以降に「家族崩壊」が始まったと指摘した。生涯未婚率や離婚の急増によって、'70年以降生まれの世代は配偶者と子供を持ち、経済的に安定した「標準家庭」を維持できない人が増大するという。

 みずほ情報総研主席研究員の藤森克彦氏も、本誌の取材にこう論評する。

「結婚しないまま中年を迎え、一人暮らしをしている男性が急増しています。

 実際、50代、60代の男性の単身世帯数の推移を見ると、'85年~'05年の20年間で4~5倍に増加しています。このままいけば2030年に50代、60代男性のおおむね4人に1人が一人暮らしとなるとみられています。これから『単身急増社会』が本格化していくのです」

 単身世帯が増えているのには、次のような理由がある。

●非正規雇用で収入が不安定なため、結婚できない
●パラサイトシングルで、親の収入にすがって生きているので自立できない
●大黒柱である父親が失職したことによって、家庭が崩壊する

 いずれのケースにも共通するのは、経済基盤の弱さだ。

 それでは「家族の崩壊」の実例を見てみよう。決して、他人事とは思えないはずだ。

 勤めていた工作機器メーカーが、大口取引先である自動車メーカーから取引停止を宣告されたことを受け、売り上げが激減。真っ先にリストラの槍玉に挙げられクビを切られるまでは、ごく平凡なサラリーマン家庭だった。

 都心の職場から電車で揺られて1時間15分。35歳のときに5000万円弱で買った「我が家(郊外の3LDKのマンション)」に帰ると、高校生の長男と中学生の長女の「おかえり!」の声が聞こえてくる。一日で最もホッとする瞬間だ。

 台所からは妻の声が聞こえる。妻とは職場恋愛だった。20代後半で転勤が決定したのをきっかけに結婚し、妻は長男を出産すると会社を辞めた。

 互いの両親は要介護ではないが、それでも妻は事あるごとに様子を見に行ってくれている。専業主婦としてよく働いてくれていると思う。

 年に1回は家族で温泉や海水浴に行く。定年退職した後は、愛車『プリウス』で妻と二人で日本全国を旅するのが夢だ。

 なんら不自由のない幸せな生活---それがリストラ退職によって暗転した。

 なんとかなるだろうと思っていた再就職はうまくいかない。それでも割増退職金があったし、貯金もある。生活はなんとかなると思っていたが、妻は「耐えられない」「将来が不安だ」と言い出し、離婚を迫ってきた。

 話し合いを重ねても、妻の気持ちは変わらず、結局離婚が成立。マンションから追い出され、資産も根こそぎ持っていかれた。その日以来、子供とも会えていない。

 いまは都内のワンルームアパートで一人暮らしだ。派遣労働で生活は苦しく、1日1食、牛丼で済ます日もある。会社員時代の知人はクモの子を散らすように離れていったから、心を許して話せる相手もいない。

 まさか自分が50歳を超えて、こんな生活に陥るとは。狭い部屋で一人、昔の家族写真を見返すと、涙が止まらない---。

結婚しても安心はできない

 この人物のように一度は結婚したものの、中年以降に離婚し、「一人暮らし」を余儀なくされている男性が増えている。

 実はかつて年間10万件にも満たなかった離婚件数はいまでは25万件ほどにまで増えており、日本はすでに3組に1組が離婚する「離婚大国」になっている。

「しかも、これから再び急カーブを描いて離婚件数が増加する恐れがある」

 そう指摘するのは都内の離婚に詳しい弁護士だ。

「なぜなら、昨年の東日本大震災を受けて夫のだらしなさ、頼りがいのなさや将来不安に気付き、幻滅した妻が第二の人生を求める〝震災離婚〟が増えている。

 さらに今後は、〝不況離婚〟が爆発的に増える可能性も高い。製造業のリストラや給料カット、さらにはデフレ経済下でサービス業もボーナスカットを行っており、家計が好転する気配はない。そうした中で、生活苦にあえぐ妻が夫に見切りをつけて出て行くケースがすでにたくさん出てきている」

 生涯一度も結婚せず、未婚のままという人もいる。上のグラフは生涯未婚率(=50歳の時点で未婚の人の割合)の推移を表したものだが、いかに結婚しない中年男性が増えているかがよくわかる。

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 20年前は「約20人に1人」、10年前は「約10人に1人」と倍々ゲームで増え続け、直近では「約5人に1人」。さらに2030年には「約3人に1人」に達する勢いである。

 前出・藤森氏が背景をこう指摘する。

「未婚の中高年男性が増えているのは、女性が経済力を高めたため、男性に頼らなくても一人で生きていける女性が増えていることが大きいと思います。また正規労働に就けない男性が、経済的に苦しく結婚できないケースも増えています」

 上の表は類型別の世帯数割合の推移を示したものだが、衝撃的な現実を映し出している。

 かつて日本で「標準的」な家族の形だと考えられていた「夫婦と子供の世帯」がものすごい勢いで激減している。代わりに急増しているのが「単身(一人暮らし)世帯」で、2006年から「夫婦と子供の世帯」の数を「単身」の数が超えている。

 要するにこのチャートは、日本がすでに「一人暮らし大国」になっていることを表しているのだ。

 言うまでもなく、その背景にあるのが見てきたような「未婚」「離婚」中年の急増なのである。

「NHKの料理番組を見ると、かつては4人前のレシピが紹介されていたが、2年ほど前から1~2人前になっています。要するに、すでに家族は『2人以下』というのが常識になってきている。実際、東京都の平均世帯人員は最新の統計でついに2人を切って、1・99人になりました。

 かつてメインだった『夫婦と子供』という家族は〝少数派〟でしかなく、一人暮らしが日本人の中心的な〝家族形態〟になりつつあるのです」(ニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内昭雄氏)

自殺が急増する

 働く夫と専業主婦の妻、それに子供が1~2人というのが今までの日本の「標準家族」だったが、不況の煽りを受けて家族を養える男性が激減。結果として、日本から家族が消えてなくなり、みーんな一人暮らしになりつつあるのだ。

 家族が消える---。そうなると、日本はいったいどんな国になってしまうのか。

 まず考えられるのが「社会的に孤立する高齢者」の急増だ。

「政府の統計によると、高齢者単身世帯のうち、家族と過ごす時間を一切持たない人は8割強、家族以外の人と過ごす時間を一切持たない人も最低5割程度はいると考えられます。

 つまり、中高年の一人暮らしは、いざと言うときのリスクが高い。万が一、重い病気にかかったり、要介護状態になったとき、同居する家族や近くに住む家族がいれば助けてもらえるが、そうでないと手遅れになるリスクが高まります」(前出・藤森克彦氏)

 中高年の「自殺」も増えるだろう。

「全国の自殺者数約3万3000人のうち、60歳以上が約1万2000人と全体の3割強を占めています。その動機を見ると、社会的孤立などからくる精神的な健康問題が高齢者の自殺の大きな要因になっていることがよくわかる。

 さらに夫婦世帯より、独身世帯のほうが自殺者は多い。特に熟年離婚した場合、より一層社会的孤立感が高まる傾向にあります」(前出・土堤内氏)

誰も助けてくれない

 もちろん「貧困」も深刻化する。

 見てきたように、一人暮らしになる高齢者はもともと非正規労働者など収入が不安定だったり、低収入だったりするケースが多い。

 こうした人たちがひとたび病気になったりすれば、職を失い、一気に「生活保護受給者」へ転落してしまう。家族がいれば妻に働いてもらうなどできることを考えれば、一人暮らし世帯の〝転落リスク〟は非常に高いといえる。

「リーマン・ショック後に話題になった年越し派遣村に集まっていたのも、ほとんどが一人暮らしの人たちでした。これから高齢者単身世帯が急増すれば、おのずと派遣村のような・セーフティーネット・が必要になってくる。

 都内のあちこちの公園などで、炊き出しが行われる風景が当たり前になってくるかもしれません」(貧困問題を長く取材する全国紙記者)

 そして何より大きな問題は、日本の「社会保障」が崩壊する可能性があるということだ。厚生労働省元幹部が言う。

「たとえば、高齢者の介護はいままで家族が支えてきたが、未婚高齢者が増えればそれができなくなり、介護にかかる財政負担が膨れ上がることは目に見えている。さらに単身高齢者は生活保護受給者が多く、これがまた財政を圧迫する。

 家族が消えるということは、いままで家族が支えていたものを国が肩代わりしなければいけないということなんです。しかし、ただでさえ毎年1兆円ずつ社会保障費が増えていく日本では、とてもじゃないが財政は持たない。年金の受給額を減らすとか、高齢者の医療負担を増やすなどの措置が必要になってくるだろう」

 家族が崩壊し、一人暮らしばかりが増えれば、日本経済全体の失速も始まるだろう。

「マイカーを所有する必要もないし、家を購入する人も減る。家族のためにプレゼントを買ったり、レジャーに行ったりすることもなくなるので、サービス産業も打撃を受ける。

 日本人は子供にかける教育費が大きいが、単身者が増えるとこれも大きく削られる。塾産業は多くが消えてなくなるだろう」(経営コンサルタント)

 そもそも、日本の高度成長を支えたのは、理想の家族を追い求めたお父さんたちの頑張りだった。いい家に住まわせてやりたい、いい家具を揃えてやりたい、いい車に乗せてやりたい、いい場所に旅行に連れて行ってやりたい・・・・・・家族がいたからこそ、お父さんたちは仕事に汗を流し、お母さんはそれを支えた。

 しかし、そんな時代はもう来ない。これからは一人で、自分のために生きるのが精一杯な人があふれる社会になる。

「もう結婚はあきらめたが、孤独死は怖い。カネを貯めて、施設に入りたい」(60代派遣社員)

「肉体労働でいつ身体を壊すか心配だ。要介護になったら誰も助けてくれない」(50代サービス業)

 家族の笑い声が街から消え、代わりに一人暮らしの苦痛の声が響く。日本はいま、そんな国に大きく変わろうとしている。

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