最近、「自然死」とか「平穏死」という言葉をよく耳にする。以下、合わせて自然死とするが、自然死とは、平たく言えば、ほとんど医療を行わない死である。もちろん、見放したり、ほったらかしにするのではない。治療はせず、温かく見守りながら看取るのである。 私は外務省の医務官を務めたあと老人医療の世界に入り、在宅医療のクリニックに勤務して、多くの患者を家で看取ってきた。その経験から、自然死には大いに共鳴している。 死は恐ろしくて苦しいから、何とか治療をしてほしいというのが一般の感覚かもしれないが、今は医療が進みすぎたため、治療が死を逆に悲惨なものに変える危険が高まった。だから、何もしないで見守るのがよいのである。 私事で恐縮だが、私の父はかねてから自然死を望んでおり、その言葉の通り死を目前にして、治療らしいことは何もしなかった。家族も父の死を受け入れ、穏やかに見守りながらそのときを待った。ところが、世の

